BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 君と僕と、ピンクとグレー。 ( No.14 )
日時: 2013/08/11 13:51
名前: 冬華 ◆tZ.06F0pSY (ID: 3Sm8JE22)
プロフ: 成×菊。


(菊は看護師さん。ちょっと具合悪いねた。)



「……はぁ、」

くらぁ、と。左右の焦点がゆるやかにずれてゆく。

あーやばい、足もつれて転びそうだなぁ。

なんだか他人事のようになってきてしまうのは意識が遠のいているということなのだろうか。


じーわじーわ、山の方でせみが鳴いている。ざわざわと、街は人でいっぱいだった。

今日は成と休みが合って久しぶりのデート、なのはいいんだけど。
実は俺は昨日夜勤で、そんでその前も普通に日勤だったのです。
残業だなんだって結局2日間あんまり眠れてないなんて言ったら成に殺されちゃう。

ゆらゆらり、行く手に映る陽炎に汗が滲む。

「、はぁ」

まさか街がこんなに混んでるとは。……そいえば今日って土曜日じゃん。
曜日感覚すら可笑しくなるほど忙しかったのか、と少し自分で感心してしまう。
しかもまさか30℃越えの真夏日とやらにぶつかってしまうとは……。
倒れそうなのにもかかわらずちょっと笑えちゃう。すごい運だよ、逆に。

がんがんと痛みを主張して止まない頭痛。今日に限って、それが重なるに重なってじっくりじっくり体力を奪っていく。

人ごみをかき分けて先を歩く成。 待って、待ってよ成、追いつけない!
いくら口の中でそう叫んでも成まで届くことはないのに。

「な、りっ……」

瞬間、ぶわっと変な汗が薄く体中を締めつけた。目の前に無数の黒い点が動き回って、気持ち悪い。何度瞬いても虫のようなそのうごめきは消えない。

「ぁ、待っ、なりっ なり…っ」

目の前の黒の度合いが強くなって、身体が斜めに傾いたその時。

さらりとした温もりに受け止められた自分。

「菊、ばか、……大丈夫か」

そっと、かけられる柔らかな言葉に涙が溢れる。ぐらぐら、して、怖いよ、成。

「ぐあい、わるいぃ…」

「うん、ほらおいで、   ょいしょっと…」

ふわっと身体が浮く。ぎゅぅ、って大事そうにだっこされた。

もう、やっぱりずるい。いつもいつも、おうじさまぶっちゃってさ。


なんだかんだいって心地よくて、眠いし、うゆうゆと意識は薄くなっていく。


「なりー……。」

「なぁに、大丈夫、」

「んん……あのね、きのう やきんだったの………。」

「………は?! お前ばかじゃないの?!」

ばかばか、体力ないくせになに考えてんのほんと、ぶつくさぶつくさ、だって。


ほらやっぱり怒られた。 でも今日は確かに俺が悪いかなぁ。

いや、成に会いたかったせいだし。やっぱ成のせいだよ。


だから、つまり、なんだろう。 今はもうちょっとだけ眠りたいかなぁ。