BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 君と僕と、ピンクとグレー。 ( No.20 )
- 日時: 2013/09/08 08:05
- 名前: 冬華 ◆tZ.06F0pSY (ID: 2B8Mhr2b)
- プロフ: (久々の)星空!
( そうやって聞くのって、まるで、あの俳句みたいじゃないか。 )
「……星、」
外では音のない、真っ白な雪が淡々と世界を彩っている。
くぁ、とベットルームからあくびをする音が聞こえたので、俺は本を閉じてリビングからそちらに向かった。
ドアの下に立つと床がぎしりと音を立てる。空はその音で俺の姿を確認してゆっくり笑った。
俺もそれに笑い返してやればいいのに、それができない。何故だか、俺の顔は強張ったままだった。
今度は俺がその存在を確認するようにそっと彼の頬や首筋に触れると、空はくすぐったそうにまた笑ってみせる。
いつも静かに、だいじょうぶだよって、ちっとも大丈夫じゃないのに、笑う。
「……熱、下がんねぇな」
「うん、でもね、へーき、 っ」
いくらかしゃべったところでまた咳が会話を遮ってしまう。これのどこが、へーきなんですかね空さん。
激しくせき込んで身体をちぢこませて、パジャマの胸元とふとんをぎゅうぎゅう握りしめる姿は、どっからどう見てもへーきそうではない。
はぁ、くは、となんとか息を整えて空は俺の方をじっと見つめた。
ひどく真っ直ぐなその瞳にためらってその髪をぱさりとかきあげてみる。
3日ほどシャワーを浴びれてないせいでそのミルクティー色の髪は心なしかたばたばしていた。
やっぱり空は、まだ俺を見つめたままだった。
「……ねぇ、まだ雪 ふってる?」
「あー? 、うん降ってる降ってる」
数歩さがってカーテンの開いているリビングに軽く確認。大粒の雪は相変わらず、ゆったり淡々と降り募っている。
「雪、どれくらい積もった?」
「………、」
その質問は、もう何度目だろうか。数日前から止まない雪。同じく、寝込んでいる空。
病院には行ってない。なんとなく、言わずとも空が嫌がっているのは伝わっているから。
『家に帰れなくなっちゃうかもしれないじゃない』
しれっとそう言ってみせた空は、ただただ強がっているだけのようにも見えた。
そんな理由も一応あって空は入院するのがいちばん嫌いだったから、ひどいときこそ病院に行くのを嫌がるのだ。
「ね、雪— どれくらい?」
「あ、うーんと……結構降ったなぁ膝下くらいかなぁ。」
うげぇ雪かきしなきゃかぁと俺が漏らすと、空は弱々しい表情でくすくす笑った。
「……なぁ空」
「んー?」
「お前さ、もうどれくらい積もったかとか、聞くなよ」
「んーなんで、」
“いくたびも 雪の深さを 尋ねけり” 正岡子規の俳句、空だって知ってるだろ。
彼は結核でなかなか床から起きれなかった。彼は雪のつもりを見ることができないから、多分その先もしばらく起きれないと思ったから、誰かにそう聞いたのだろう。
けど、お前はもうすぐ治るはずなんだからそんなの聞いちゃだめだ。そんなもん、明日起きてからのお楽しみにしろ、少しは俺の気にもなれホントマジで。。
俺がぼそぼそと言うと、空は少し停止してから吹き出して調子のよくない喉でけたけた笑った。
「あははっ、あはぁ、バカじゃないの星、なに不安になってんの、」
うわひでぇ、心配してんのに、、 なんだよ、そんなに笑わんくてもいいだろうが。
ひいひい言いながら咳き込んで、お前のがばかじゃないのって結局その背中をさする羽目になる。
「は、はぁあ、もー星のばかぁ」
「うるせぇなお前だってばかだろ、」
また空がけらけらっと軽やかに笑って はふぅと息を吐いてからよいしょとベットから起き上がった。
そんで腕広げて おいで?俺に首を傾けてみせる。
もちろん、俺だって憎まれ口叩きながらもその数日振りのハグ拒むほどばかじゃないのでちゃっかり温もりはいただきますが。
ぎゅむぅ、って抱きしめると同時に空が口に出すもんだから俺も笑う。
甘やかすのと、慰めるのは違うらしい。空は甘やかすのうまいけど、慰めんのはど下手くそだ。
まぁ、そのど下手くそに懐柔されちゃってんのはだれ?って、それには答えたくないけど。
頭の後ろを下から撫でてやれば、空も猫みたいに体を摺り寄せてくる。
「……あっちぃな」
「んふ、ストーブ消せば?星もこっちの部屋に居ればいいじゃない」
いればいいじゃない?いてくださいの間違いだろ、とか言ってみたり。仕方なくその体から離れ、リビングのストーブを消しに向かう。
いい年の男2人がお互い照れ隠しして、ホント俺達ばかじゃん。俺の考えを読んでか空も楽しそうに笑った。
「ねー星、明日はいっぱい雪積もってるだろうから、一緒に雪遊びしようねー」
穏やかな声。ぎゅう、と俺の心を締め付けるのは紛れもないこの存在だから。
正岡子規も、こうやって言っとけばよかったのになぁ。周りを笑わせてくれる、あったかい言葉。
そう思いながらも口から出るのは、いやいや遊んでる暇ないから、雪かきやばいから、なんでどうでもいい言葉。
「たのしみだねぇ雪遊び!」
先に風治せお前はとか、そんな都合の悪い言葉は彼には聞こえないらしい。
俺も観念して、あぁそうだねとその頭を撫でまわした。
>>2人ともなんか進化を遂げつつある。。w
遅くなりましてすみません、文化祭(9/28)まではこんなもんかと思いますー。