BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 君と僕と、ピンクとグレー。 ( No.9 )
- 日時: 2013/08/11 13:39
- 名前: 冬華 ◆tZ.06F0pSY (ID: 3Sm8JE22)
- プロフ: 星空。
さらさら…みたいな音とかブォ——…って音。
遠いようで近いような街の音がまだちゃんと働かない頭にぼんやりと入ってくる。
ちゅんちゅん、かわいらしいスズメのさえずり。透き通った風が人々に朝を伝えてまわる。
……そして自分にも当然、その朝が伝わって起き上がるわけですが。
「ぁー…。」
ずぅうん、重たい身体。 ホントに、すぐくたばる自分が憎い。
ぐわぁん、て。
起き上がって、なんとかベットから降りて、世界が傾く。
「ぅ、」
どうしても焦点も合わなくて、目の奥の痛みに涙が溜まる。
もう、ちくしょう。 じんわり身体の芯が熱くて、なのに指先は冷たくて。
なんとなく息苦しくて、今発作起こしたらどうしよう、死ぬ・・・までは行かなくても気絶しちゃうの怖いな、なんて縁起の悪い事を考えてしまう。
ずきずき、ずきずき、主張してくる頭痛も嫌い。あぁ、やだなぁひとりなの。
嫌い嫌い、ソレが溢れた大嫌いな世界でただ1つの好き。
そう導いてくれたよね。好き、たった1人の自分の好き。
「っ、星、」
思わず名前を呟いて、当たり前だけど返事は返ってこなくて凹んでしまう。
はぁ、ともう一度溜め息を吐いて再び布団の中にもぐり込み、真っ白な世界に包まれて、また気を失うみたいに眠った。
『 お母さん、空のことだぁいすき。 』
びく、と体が震えて目が覚めた。思わず短く吸い込んでいた息を詰めて、吐き出す。
その吐息が妙に熱くて、目に浮かぶ涙とかも熱くてじんわり。
熱、上がったな。 てか今の、いつの夢?
自分でも少し可笑しくて、くく、て苦笑する。
お母さん、なんであんたは自分をも殺そうとした?
ああやって、こうやって、愛してるって。
ゆったくせに。
あーだめだ、脳みそが鬱モード。
さみしいな。隣にいてくれたらな、星。
あいにく彼は、自分ほど暇じゃないので自分がいてあげられるようにはいてくれない。
彼を求める自分が怖くなって、ぎゅ、て縮こまる。
自分を抱きしめて。無理やり愛して。傷を癒して。
「は、……、ぅ、ぇっ うぇっ、げぇっ」
笑った。笑ったら、泣けてきた。我慢してたら吐きそうになって、もうめちゃくちゃ。
吐けない。胃液ばっかりこみ上げて、余計気持ち悪くって涙がぼろぼろこぼれて。
……そいえば、昨日は丸1日絵を描いてたしかれこれ3日は食べてない……?
そんなのぶっ倒れて当たり前だし吐けなくて当たり前だし、さみしいのも当たり前だ。
星どころか、日の光さえ浴びてないとか自分吸血鬼ですかね。
「げぇっ げほ、げほぇっ ん、っ、……っは、ぁ」
のど、渇いた。 そろそろ水くらいは飲まなきゃ死ぬぞ、てことくらいはさすがの自分も分かってたのでベッドをずるずると這い出る。
がらん、と空っぽの冷蔵庫。 あらら、牛乳が腐っちゃってる。
みねらるうぉーたー。力の入らない手で苦戦しながらキャップをきゅ、そのキャップは手から零れ落ちてしまったけど気にしない。
縋るように両手で持ったボトルに口をつけて、ごっくごっく、音がするほどのどに押し込んだ。
零れ落ちたキャップ。こぼれおちた、小さな自分。
かしゃん、と音を立てて自分の中の僕は消えた。
—————…カツン、コッ、コツン、カッ、カッ、
アパートの階段を上る、近づいてくるその音。お仕事用のパンプス?……いや、男の人捕まえるための武器??
『あんたが、 ……あんたが生まれてきたりするからぁッ!!』
それでまた、僕を踏みつけるの? 僕がぐぇ、なんて音を立てるのにも構わずに?
こつんかつん、徐々に近づいてくるその音。
こないで。ぶたないで。
が、がちょがちょ、がちゃっ!開いた、ドア。
お母さん?
「……っぁ、あぁ…っ っは、はぁっ、はぁ、 ぅ、あぁ」
ごめんなさいごめんなさ、
もうだめだ、次こそ殺される。
ひゅ、と気管が狭まるように呼吸が遮られる。ぜぇ、ぜぇ、と激しく運動した後みたいに鳴るのどを両手で包んで、どうしようもなく苦しくて胸元のパジャマを握り締めて、ガタンッ、テーブルに倒れこむ。
ばくばくばくばく、落ち着かない心臓はただただ加速していく。
嫌だ、熱い、熱いよ火はもう嫌だ———・・!
痛いイタイイタイ、ぎゅうと心臓か肺か、何かがぢくぢくと痛む。
止まらない、痛み 吐き気 涙 記憶 記憶 記憶。
「ぅ、あぁぁっ、ぁあぁぁあぁ! っう、あぁいやだぁ!やめっ、やめ・・・!」
ふらふらと前かがみに動いてぎゅうぎゅう髪の毛を握り締めて、頭皮が痛いような気がした。
苦しい苦しい、立っていられない。
信じられないスピードで記憶が渦巻いて、目の前がちかちか、赤くろ緑に白、火花がぼんやりとうごめく視界。
あの日。
ばしゃ、突然後ろから冷たいものをぶっ掛けられた。
母親も同様に、その水にまみれていて。
かちゃ、と。冷静な顔つきをしてお母さんはコンロの火をつける。
フライパンも鍋もかけずに火を見つめる母親はなんだか弱々しく見えた。
「……お母さん、なに?この水…。」
くすっと寂しそうな顔をして笑ったお母さん。くしゃ、と綺麗なその顔を崩して涙をこぼす。
「お、かぁさ……?」
………ごめんね、と口が動いた気がした。
刹那、火に手を突っ込んだお母さん。僕は叫んだ。
驚異的な速さで火は彼女を襲って、ようやく気付く。
ちがう、この水、水じゃない、油だ……!
助けて!助けて! お願い、お願いだよまだ死にたくない死になくない!
悲鳴を上げる15の少年を助けたのは、隣のおうちのきらきらの少年。
星は、僕に奇跡をもたらした。
「空! 空、そら、そらぁ!? そらってば!だめ、だめだって死ぬなぁ!」
あぁほら、あの時の声まで聞こえてきちゃった。
ごめんね、星。 あの人と同じ言葉、ごめんねって。許されないことくらい、分かっているんだ。
でも、僕はもうダメだから———…。
遠のく意識の中で、最期にあなたの声が聴けたらそれでいい、そう思った。
- Re: 君と僕と、ピンクとグレー。 ( No.10 )
- 日時: 2013/08/11 13:40
- 名前: 冬華 ◆tZ.06F0pSY (ID: 3Sm8JE22)
- プロフ: 続き。
「……あ、」
「はよ。 大丈夫か?」
がらがら、と白い病室のドアが横に引かれて彼の姿がのぞく。
「うん、今日はへーきだよ、」
にこり、笑って見せると星も安心したように微笑した。
まぁ、あれから自分はといえば史上最悪の発作症状を起こし5日近く眠りこけ、病院で目を覚ましてもしばらく熱が引かずいろんな人にお世話になり続けたわけですが。
星は僕が目を覚ますまでずっとずっと、眠ることも出来ずにそばにいてくれていたらしい。
『……お母さんが、帰ってきたかと思った。』
目を覚ました僕がぽつんと呟いた言葉に星はあはは、って疲れた顔で笑って、僕に少しだけ指先を触れて、…泣いた。
星が泣く姿を見るのははじめてか、そうじゃなくても本当に久しぶりで。
『おれ、だって、また…。またっ、お前が死ぬのみるのか、と、おもった……っ』
僕があの、15歳の愛をなくした日に残した背中のヤケドは消えないけれど、ねぇ星、星は自分に底の無いほどの愛をくれるよね??
なんとなく分かった、今回のことで。
自分が発作を起こすのは、愛情が足りないとき。
自分の鼓動は恐らく愛で動いていて、それがなくなってしまったら愛情不足で死んでしまう。
前、元気になってそう星に言ってみたら星はなんだそりゃ?って笑った。
笑ってから今度は あー とか ぅー とかもごもご言って、自分の手を握った。きゅ、ってあまぁく。
ぇーと、その、ほら、空…あのさぁ、ぐちゃぐちゃな前置き。
「一緒に、暮らそう。」
俯いたままのぶっきらぼうな言葉には色んなモノが詰まっていて、それと一緒に自分は息まで詰まってしまって、泣いた。
ぎゅうぎゅう星に抱きついて、大人になりきれない泣き方。
きっと僕らは、10年も15歳だった。あの日を抱えて俯いたままで生きてきたんだ。
「大好き」
そう囁いて、星に抱き上げられる。
ほら、今からでも絶対遅くはないよ。頑張って、大人になろう。
時に任せて大きくなったのは、表面上だけ。だからこそ気付けなかったけど、今なら分かる。
「……愛、して、ね?」
照れ隠しに疑問系。 これ、ちゃぁんとあいしてる、が言えるようになったらきっと今度こそ僕達は立派な大人だね。
うん、って僕を膝に乗せたままで笑う星。
自分 にバイバイ。 僕 に、ようやくこんにちは。