BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【百合】二次創作短編集 ( No.1 )
- 日時: 2013/10/22 19:17
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『ゆるゆり』千夏×あかり(キス)
___解説___
2011年と2012年にアニメ化。なもりの漫画が原作。
あかりと千夏(ちなつ)は「娯楽部」という部活動に所属する中学一年生。
結衣(ゆい)と京子は同じ部の二年生。
原作では千夏は結衣のことが好き、という設定。
***
その日の千夏には良いことと悪いことの二つがあった。
一つは朝。
あかりが、大好きな結衣先輩の昔の写真をくれると約束してくれたこと。
もう一つはついさっき。
娯楽部の部室で、その結衣先輩と京子先輩がキスしているのを見てしまったこと。
京子は千夏の存在に気づくなり、
「千夏ちゃーん。チュッチューー!」
唇をつき出しながら自分に抱きつこうとしてきた。
ところが。
ゴツン。
結衣のこぶしが京子の頭を叩いた。その上、
「バカ! さっそく浮気か!」
結衣先輩が本気で怒っている。
前々から仲の好い二人だったけれど、とうとう結ばれてしまったんだ。
千夏はなんだか失恋でもしたような気分で、早々に部室を出て帰宅してしまった。
「はぁー……」
千夏は自室の机に座ってアンニュイな溜息をついた。
キスってどんなものだろう。
自分はあかりちゃんとしかしたことがない。
夏休みに自分の部屋であかりちゃんと勉強をしていた時に、ついその場の勢いであかりちゃんの唇を奪ってしまった。
べつに、したくてしたわけではなかった。
結衣先輩の代わりにでもなればと思ってしたまでだった。
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴った。
出てみると、そこに居たのはあかりだった。普段着に着替えている。
「ごめんねー千夏ちゃん。三時にうちに来るって言ってたのに、一時間待っても来ないし、遅刻の連絡すらないから、あかりの方から来ちゃった」
そう言ってあかりはペロリと舌を出す。
忘れていた。
先輩たちがキスしていたのを見た瞬間から、あかりちゃんとの約束など完全に忘れていた。
あかりは笑顔のまま言葉を続けた。
「お姉ちゃんがあかりの写真をいっぱい持ってるはずだからアルバムを見させてもらったんだけど、なぜかあかり一人で写ってる写真しかなくてさ。お姉ちゃんが……シージー? っていうのであかりと一緒に写ってるお友達を消しちゃったんだって。だからあかり一人で写ってる写真しかないんだってさ。結衣ちゃんが写ってるの、探すの苦労したよー」
あかりの手には何枚かの写真がにぎられている。
それを千夏に渡そうとするが、
「要らない」
千夏は冷たく言った。
「え?」
「もう、要らないの!」
千夏はあかりの腕をにぎると、玄関から家の中へと入れた。
今は家に誰も居なかった。
ピシャン。
勢いよく戸が閉められると、静かな場所で二人きりになる。
「ちょっと、千夏ちゃん?」
千夏はあかりの腕をにぎったまま、顔を近づけていく。
「私だって、あかりちゃんとならできるんだから!」
「んっ…………」
二人の湿った唇が重なって、温もりが伝わってくると同時に、耳鳴りがするほどの静寂。
あかりが抵抗をやめると同時に、その手から写真がひらひらと落っこちた。
二人が離れた瞬間には、口から銀の糸が零れながらきらめいた——。
「……ち、千夏ちゃん。大丈夫なの? 何かあったの?」
「何もないよ。ただ、あかりちゃんにキスしたくなっただけ」
「……そっか」
あかりは優しく微笑んだ。
「……嫌じゃなかったの?」
「うん。あかりも二回目だから、千夏ちゃんとのキス。慣れてきちゃった」
「そうなの? 二回目なの? 初めての相手は?」
「だから、千夏ちゃんだって言ったじゃん今」
「二回目も私? 三回目は?」
「まだだよ」
「……そうだよね。私もまだ二回だけだよ、キスしたの」
思い出せば、結衣先輩とはしたくてもできないけど、京子先輩には何度迫られても拒み続けてきた。
あかりちゃん以外が相手だったら、こんなことできないのだった。
二回目のキスがあかりなら、ファーストキスももちろんあかりだった。
奪うようにしてしまったあかりちゃんとのファーストキス。
もっとしっかり味わっておくべきだったと、今になってちょっと後悔した。
「あ、結衣先輩の写真が汚れちゃう。拾わなきゃ! あかりちゃん、全部で何枚持ってきたの? あー、下駄箱の下にも入っちゃってるよー。取れないー!」
「あかりも拾うの手伝うよ。でも、さっきは要らないって言わなかった?」
「んなわけないでしょ! やっぱりあかりちゃんじゃダメなんだよ! 簡単にキスまでできちゃうんだもの! 結衣先輩みたいな、高い理想を持ち続けたいの私は!」
「うぅ……なんか悲しいよー」
あかりはトホホと泣きながら写真を拾うのを手伝った。
いつもの二人に戻っても、千夏の胸だけはまだドキドキしていた。