BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ゆり二次・創作短編集【GL・百合】1103 ( No.100 )
- 日時: 2015/11/03 22:01
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: dY22Nade)
『ドキドキ!プリキュア』レジーナ×マナ(まこぴー?)4
「キュアソード!」
ハートとダイヤが、希望を取り戻した表情で叫んだ。
キュアソード——剣崎真琴が変身した姿で、立っていた。
仲間が苦しめられた怒りをしっかりその表情に浮かべ、ジコチューを見据える。
「チッ! なんだまた一匹増えヤガッタカ」
被弾したジコチューは動きを止め、腕や肩からは煙をあげていた。
ソードは倒れるハートとダイヤに目を向けて言う。
「あなたたちが危ない目に合ってるのが気配で分かった。それで変身したら、自然とここに来られたわよ」
まこぴーはおそらく控え室でコンサートの開始を待っていたのだろうが、仲間のピンチを察して、駆けつけてきてくれたのだった。
「お前も叩きつぶしてヤル!」
すぐさまジコチューが襲いかかってきた。
大振りなパンチをソードは簡単によけて、一歩、二歩とさがる。
「オレなんかまこぴーのデビューシングルからズット応援シテタノニ。最近ファン増え過ぎナンダ! ミーハーは駆逐シテヤルッ!」
血走った目でジコチューがぶんぶんと怒りに任せてパンチを打ってくる。
が、ソードは冷静にそれをよけまくる。
ますます怒りをつのらせたジコチューが「なんなんだこいつ!」と、ソードの顔を見た。
そして、動きを止めた。
「あ……あんたは」
ジコチューが初めて、怪物ではない、人間らしい声で言った。
キュアソードの顔を見て、それがまこぴーそっくりであることに気付いたのだ。
もっとも、変身したプリキュアは、どれだけ顔が似ていても正体を見抜かれることはないのだが。
ソードが微笑んで、こう言うから、ジコチューも信じた。
「剣崎真琴です。ずっと前から応援してくれていて、ありがとう」
「ほんとに本物なのか? まこぴー本人なのッ?」
「ええ。渋谷レモンホールでのデビュー記念イベントの時にも来てくれてたひとでしょ」
微笑んだまま、そんなマイナーな情報をすらすら喋るまこぴーに、ジコチューは「うおぉー! 覚えてもらえてる!」と大興奮だった。
「そうそう! 二年前の十月X日、夜の部だよ! オレ、仕事終わってスーツのまま行ったんです」
まこぴーは笑みを湛えたまま、胸に手を当て、ゆっくり喋り出した。
「あの時からわたし、『まこぴー』なんて愛称で呼んでもらえて、元気づけられて……わたし、お客さんみんなの顔を覚えて帰るんだって思いながら歌ってました」
あの日は小さい会場で、お客さんとの距離も近かったし、ひとも三百人くらいしか入っていなかった。
まこぴーにも、そんな時代があったのだ。
「確かに、今は本当に多くのお客さんに来てもらえて、一人一人の顔まで覚えられなくなっちゃったけど……でもデビュー時に支えてくれたファンが居たから今のわたしがあるの。その感謝の気持ちは忘れないつもりで、今日もステージに立ちます」
ソードが、ジコチューに微笑みかける。
その微笑みは、デビューの時と同じだった。
あの記念イベントの日——まだ少ない持ち歌を、緊張気味に歌った後で、お客さん一人一人と握手をしていたまこぴー。
初回盤のジャケットに一枚一枚、サインをしてくれたまこぴー。
あの日の笑顔と同じだった。
ジコチューは全く戦意をなくして、構えた両腕をだらんと下げ、
「分かった。オレが悪かった。あとは好きなようにしてくれ」
そう呟いた。
——ほんとに、暴力なしでジコチューを説得しちゃった。
キュアハートも、レジーナも、驚くばかりだった。
ジコチューが分身を解く。
あれだけ増殖していたジコチューたちが消滅し、本物の一体——今ソードの目の前に居るジコチューだけが残った。
そこへ、
「じんわりシーンはそこまでよぉぉぉぉぉッッッッッッーーーーーーーー!!」
ドッゴッーーーーーーーーン!!
ものすごい打撃音とともに、キュアダイヤモンドの飛び蹴りがジコチューの脇腹あたりにクリティカルヒットした。
ジコチューは軽く七、八メートルは吹っ飛ばされて、ゴツンッ、ゴツンッ、と二回くらい地面に叩きつけられながら距離を伸ばし、ズザザザザーっとまた三メートルくらい地面にこすり付けられて、白い煙をあげながら止まった。
(つづく)