BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ゆり二次・創作短編集【GL・百合】(1111) ( No.101 )
日時: 2015/11/12 00:33
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: dY22Nade)

   『ドキドキ!プリキュア』レジーナ×マナ(まこぴー?)5



ジコチューは軽く七、八メートルは吹っ飛ばされて、ズザザザザーっと三メートルくらい地面にこすり付けられて、白い煙をあげながら止まった。



ソードからしてみれば、目の前で人間が特急列車に跳ね飛ばされたような感じだった。ダイヤの蹴りがジコチューにヒットした瞬間、その風圧でソードの髪や衣装が舞い上がったのだ。


「ダイヤ、もういいわよ。彼、わたしの話しを聞いて戦うのやめてくれたじゃない」

「ええ。でも『あとは好きにしてくれ』とも言っていたわ」

「うん、まあ、そうだけど……多分こういう意味で言ったんじゃないと思うな……」

ソードが倒れるジコチューに、あわれみの視線を向けた。

「それにそいつ、さっき『まこぴーのジーズポー』とかって、叫んでたのよ」

ダイヤが非難がましく、ジコチューを指さして言った。

「じぃー……スポ?」

ソードが「?」な顔で首をかしげるだけなので、ダイヤは「くッ……意味分かってないか」と悔しそうに歯をくいしばった。


「まごぴィィィィィィ…………」


再び、地鳴りのするような低い声。

ジコチューが、いつの間にか起き上がっていた。

体勢を立て直して、もう一度、

「まっこぴーのジースポーッ!」

ミサイル弾のように真っ直ぐ突っ込んでくる。

ダイヤとソードがよけた。もうそのスピードに慣れて、目に見えているのだ。

「ほら、聞いたでしょ」

ジコチューと距離を取りつつ、ダイヤがソードに言う。

「あいつはああやって、聞いてる方が恥ずかしくなるようなドシモネタを大声で叫ぶクズなのよ!」

「聞いてる方が恥ずかしい……ですか?」

「ソードには分からなくても、意味が分かるひとが聞いたら恥ずかしいのよ。あんな幼稚な言葉!」

「やだ、ダイヤモンド。幼稚園児にはあんな言葉、伝わらないわよ?」

「あんた意味分かってるじゃないの!」

ダイヤがソードの鼻先に指を突きつけながら言った。


「まこPのマンPのG☆スポーーーーーーッ!」


またしてもジコチューが「スーパー頭突き」みたいに突っ込んでくる。

ワンパターン過ぎて、二人とも簡単によけてしまう。

だが今度の狙いはダイヤとソードではなかったらしい。


「……しまった!」


ダイヤが気づいた時には遅かった。

ジコチューの狙いはレジーナだったらしく、不発のタックルで一気に近づくと、「ゲヒヒヒヒ」とキモい笑い声をあげながら、レジーナの前にそびえ立つ。

レジーナがおびえた顔をして、先ほどのシチュエーションの再現になる。

「お前を人質にして、プリキュアを屈服させるコトニシター!」

ジコチューがレジーナの手首を掴もうとする。

「嫌ーーーーーーッ!」

レジーナが悲鳴をあげる。

と、またしても不思議な光があたりを包んだ。


「あなたに届け、マイ・スウィィィィィィーット・ハーーーーーーット!」


レジーナの危機を救ったのは身体の自由を取り戻したキュアハートだった。

ハート形のエネルギー派が発射され、レジーナに手を伸ばすジコチューの腕、肩、側頭部に次々と着弾しては綺麗な光の粒となって弾ける。

ジコチューには確かなダメージを与えたらしく、何やら低い声でうめきながら、ふらついた。

「やるじゃないの、ハート!」

ダイヤがハートを賞賛してから、一気にやっつけようとジコチューに走り寄る。

が、ダイヤはすぐ横を誰かに追い抜かれたことに気付いた。

「ソード!」

キュアソードが、ダイヤ以上の速さで、よろめくジコチューに接近した。

滑り込むようにしてジコチューの目の前までくると、腰を一度下ろして力を溜めてから、思い切り拳を上に振り上げた。


ベキベキッ!


ジコチューの脇腹に拳がめり込むと同時に、何やら重くて鈍い音が響く。

そこはさっき、ダイヤの飛び蹴りがクリティカルヒットしたのと同じ個所だった。

ダメージが蓄積されていたところに、またしても勢いのある攻撃。

これで効いていないはずがない。

レジーナを襲おうとしていたジコチューは、レジーナの至近距離に居て。

レジーナからすればジコチューの苦悶の表情が見えたはずだ。

だがレジーナにとってそれ以上に恐ろしかったのは、一瞬だけ見せたソードの表情だった。

ジコチューの弱った脇腹にダメ押しの一撃を打ち込んだ瞬間のソードの表情は、怒りに眉間のシワが寄っていて。

「………………ひィッ!」

レジーナはただただ、身体を強張らせて粗相だけはしないようにした。


ずしゃ、と崩れるように顔から地面に倒れたジコチューは、ぴくぴくと痙攣しつつ、もはや虫の息だった。


ソードはパンパンと手を叩いて手の埃を落とし、

「アイドルっていうのは、楽しいだけじゃないのよ」

聞こえるように言った。



(つづく)