BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ゆり二次1117 ( No.102 )
日時: 2015/11/17 14:56
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: dY22Nade)

   『ドキドキ!プリキュア』レジーナ×マナ(まこぴー?)6



「アイドルっていうのは、楽しいだけじゃないのよ」



「そ、そうみたいね……どうやら」

ダイヤが自分に言ったのかと思って、答えた。


「かわいいからって、誰でもなれるわけじゃないの」

言いながらソードがギロッとにらみをきかせた、その先には——。

「ひぅッ…………」

すっかり弱気になった、レジーナが居た。


もしかして、あたしに言ってるのだろうか。


「きれいなお客さんだけじゃない。ステージから見えるお客さんの中には、決してきれいでないひとも居る。言葉を選んで表現するなら“異質”に見えるひとね」

ソードはレジーナに目を向けたまま、

「言葉を選ばないでいいのなら、デブオタや、良い歳したおっさんってところね」

冷徹な感じで言った。


——お客さんなんてどうせ、デブオタや、良い歳したおっさんばかり。面白くない。

レジーナがコンサート会場で着席していた時に、思ったことだ。


やっぱりソードはあたしに言ってるんだと、レジーナは気づいて恐怖した。

なぜ心の中で思ったことが読まれているのか分からないが。

そして最初に言葉を選んで表現した意味はあったのだろうか。


「でもそんなお客さんでも大切なの」

ソードの表情がやわらぎ、言い方もゆっくりになる。

「それは売上とか、人気のためのやせ我慢なんかじゃないわ。結局のところ、お客さんを大切にすることが、自分の成長につながる。そういう確信があるからなのよ」

ソードが無言で「分かった?」と目で問いかける。

レジーナは涙目になりながら、こくこくとうなずいた。

「ソード、いくらレジーナが相手でも、凄みを効かせたらかわいそうよ」

ダイヤが間に入った。

「凄んでなんかないわ」

ソードはきちっと姿勢を正して、微笑む。

「そうやって笑って見せても、ジコチューへの仕打ちを見たらそりゃ怖がるわよ。決め技も何も使わないで、物理的なパンチだけで倒してるし」

「あ、ハートも加えてラブリー・フォース・アローで倒した方がきれいだったわね」

ラブリー・フォース・アローはジコチューの邪悪な心を浄化させる、プリキュア四人の合体技である。

見た目にもクリーンで、戦いの終わりにはあれを見たかったところだ。

キュアロゼッタ不在だから使えない、という事情は置いといて。

「そうよ。っていうかあんたがいま殴り倒した相手は大切なお客さんじゃないの」

「それはそうだけどね」

ソードはふーっと一息ついて、言う。

「レジーナにまで、いやらしい目を向けたのがいけなかったわね。あの子はアイドルじゃないもの。関係ないわ」

「…………そっか」

ダイヤは肩の力を抜いたように姿勢を崩して、微笑んだ。


ソードは——まこぴーは、どんなファンでも受け容れる覚悟だけど、他の女の子に危害が及ぶのは許せなかったんだ。

あいつは少女に対して見境も何もないようなヤツだったから。






19時ちょうど——。

コンサートは無事に始まった。

場内が一気に暗くなって、大きな画面にこの日のコンサートのために作られたオープニング映像が流れてお客さんたちが一斉に立ち上がる。

暗くなった観客席には無数のサイリウム——紫や青のそれが灯ってまこぴーの登場を待った。

カウントダウンのような緊張感を保ちながらオープニング映像が終わると、曲のイントロと共に舞台が明るくなった。

そして剣崎真琴が登場した。

イントロのリズムに合わせてお客さんが「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」なんて叫びながら、中には飛び跳ねているひとも居た。

男たちの熱い叫び声にレジーナは先ほどのジコチューを思い出して一瞬は怖かったが、すぐにあの時のような不快さは解消されていった。

お客さんみんなが楽しそうにしていたからだ。

みんな、まこぴーが歌って踊るのに合わせて、かけ声を入れたり、サイリウムを振ったりしている。

大音量の歌と演奏がすべてを呑み込んで、隣に居るマナの気配さえもいつしか消えていた。

ここに居るみんなが、剣崎真琴を見ていた。



そしてコンサートは終了——。



「すっごく良かったよね」

マナが興奮気味に言うのに、六花が「よかった、よかった!」と同調してから、どの曲がとか、あの場面がとか、具体的な感想に入っていく。


マナと六花とレジーナの三人は楽屋裏の狭い通路に立っていた。

もちろん一般客がこんな所まで来られるはずはなく、まこぴーが「帰りは車で送ってもらおうよ」と特別に三人を呼んだのだ。

レジーナはマナに連れられるままここへ来て、さっきからずっと黙っていたが。

「マナ、六花、今日は来てくれてありがとう!」

まこぴーが現れると、びくっとなってマナに寄り添った。

ライヴが終わったばかりのまこぴーはTシャツ姿で、前髪なんかはまだ汗に濡れているけど、表情はとても輝いて見えた。

マナと六花がそろって「おつかれさま!」と言うと、まこぴーは笑顔で応え、それから、

「あなたが見に来てくれるなんて、不思議なこともあるものね」

レジーナを見て言った。

レジーナはマナにぴったりと寄り添ったまま、どうにかまこぴーと視線を合わせ「べ、べつに……」なんて口をとがらせる。

べつに、なんなのだろうか。

「コンサート、少しは楽しんでもらえたかな?」

「そ、そうね……」

レジーナはなぜかほてった表情で、「えと、えっと……」と、言いたいことでもあるように口をもごもごさせていたが、少し間を置いてから、

「ま、まあ……あなたって、すっごい人気者みたいだし。友だちになっておけば、得するかもしれないって思ったわ」

きちんと目も合わさずに、そんなことを言った。


しかしこの時ばかりはまこぴーと六花もレジーナが無邪気であることに気付き、「とりあえず楽しんではくれたみたいね」と、まこぴーが六花に視線を送ると、六花も同意したように微笑んだ。



(つづく)