BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ゆり二次・創作短編集【GL・百合】(最終更新12月6日) ( No.103 )
日時: 2015/12/06 23:20
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: dY22Nade)

   『ドキドキ!プリキュア』レジーナ×マナ(まこぴー?)7(終)



「じゃあ、わたし着替えて来るから。もう少し待ってて」


まこぴーが去っていくと、マナがレジーナに聞いた。

「どうするレジーナ。昼間に約束した通り、今日はうちに泊まっていく?」

今日のイベントはコンサートで、主役はまこぴーだったし、六花も居た。

やっぱり二人きりの方がレジーナも喜ぶと思って、誘ってあげたのだけれど。

「……レジーナ?」

返事がない。レジーナは上の空みたいだ。

「じゃあ、今日はやめとく?」

「……行く」



帰りの車内では、あらためて今日の出来事が話された。

コンサートの感想はもちろん、ありすがドタキャンしたことから、ジコチューに遭遇したことまで。

車は夜の都会を走っている。助手席にまこぴー、その真後ろにレジーナ、後ろのシートの真中にマナ、その隣が六花。

「けっきょく、ジコチューに変身してしまったあの男性は、私たちに倒された後、コンサートを見に行ったのかしら」

六花が言った。

「ええ、ちゃんと居たわよ」

まこぴーが答えた。

「マナたちの少し後ろの列だったわね。少し遠い席でも顔はちゃんと見えてたし。楽しんでくれていたと思うわ」

それを聞いて六花は「よく見てるわね。あれだけ大勢のお客さんが居たのに」と驚いてみせるが、まこぴーは当たり前のことのようにしていた。

「この道からだと、六花よりマナたちを先に家まで送ることになりそうね」

まこぴーが前を走る車のテールライトなんかを見ながら言った。

時速50キロほどの速度で運ばれながら、レジーナには今自分がどこに居るのか全然分からない。

「ねえ、マナ」

レジーナがマナの手に軽く触れて聞いた。

「ん?」

「マナの家まで、あとどれくらいなの」

レジーナがそわそわした様子なので、マナは「もしかしてトイレ?」と思ったが、そうではないらしい。

さっきからレジーナはまこぴーの方をちら、ちらと見ているのだ。

といってもまこぴーからすればシートを間に挿んでの真後ろなのでレジーナの視線にも気づいていないようだが。


車はウインカーを出して速度を落とし、細い道に入っていった。

それから何度か曲がっていくうちに、レジーナでも見覚えのある景色になっていく。

やがて車が停まる。ヘッドライトの明かりでマナの家が見えていた。


「さあ着いたよ。今日はお疲れさま」


まこぴーが車を降り、わざわざレジーナ側のドアを開けてくれた。

うながされるままに車を降りるレジーナの動きはやたらぎこちなかった。

続いて降りてきたマナと入れ替わるようにまこぴーは後部座席に乗る。
ここからは六花の隣に座るということだろう。


ドアが閉められると、スーッと窓が開いてまこぴーが顔を出す。

「じゃあまた明日、学校で」

「うん、おやすみ」

マナが手を振ると、まこぴーも「おやすみ」と返す。

レジーナはそんな二人のやりとりを見ながら、肩を緊張させ、両方の拳を胸元できつくにぎりしめていた。

息を深く吸い込んだまま吐くことも忘れてしまったみたいに、じーっとまこぴーを見ている。

マナがそれに気づいた。

レジーナの顔はほんのりと赤くなって、寂しさが、眉間とか、目元とか、口元にまで表れているのだ。

マナは見すかしたように、くすっとほほえんで、


「ほらレジーナ。まこぴーにおやすみって言ってあげたら?」


レジーナの背中を軽く叩いてやった。

まこぴーが「え?」と意外そうな顔をしてレジーナを見る。

そのレジーナがまるで言葉を知らない動物のように寂しそうな目でうったえてくるばかりだから、


「おやすみ」


まこぴーの方から手を振って、ほほえみかけてあげた。


「お……おやすみ」


しゅーっと緊張のガスが抜けていくみたいにレジーナの顔がほころんでいく。

別れ際に手を振ることがそんなに恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしたかと思うと、また下を向いてしまう。


そして車は走り出した。

遠ざかっていく車の中では、早速六花とまこぴーが仲良さそうに話していた。

わざわざ隣同士に座っただけはある。


レジーナが勇気を出してやっと言えた「おやすみ」の一言。


まこぴーにとってそれは、どれほど小さな印象に過ぎないだろう。


ふいに風が吹いて、つっ立ったままでは寒いことに気づく。


「ね、そろそろ家に入ろう」

マナがすぐ隣でささやいた。

レジーナは無言のまま、マナに腕をからめて身体を密着させる。

動物がなついてきたような温かさと、そのひと独特の匂いがする。

「今日のまこぴー、素敵だった?」

「……うん」

マナの目の前でリボンのカチューシャが力なく揺れた。

「まこぴーの姿、今も頭に浮かんでる?」

「うん」

マナはレジーナの頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でてやる。

「助けてくれたことへの“ありがとう”言いたかったね」

マナが言った瞬間、レジーナが腕にぐっと力を入れる。

「いたたた……そんなに強く抱きしめないでよ。レジーナったら、今日はわたしよりまこぴーなんじゃないの」

マナは満たされたような表情で言う。

「わたしが泊まりに誘ってもいつもみたいに喜んでくれないしさ。まこぴーばかり見てるんだもの」

「ごめん」

レジーナがマナの肩に顔をすり寄せるようにして言った。

「ねえ。まこぴーのこと想うと、どんな気分になる?」

「ドキドキ……する。マナに感じるのと同じくらい、ドキドキする……」

レジーナは少し涙声になっていて、こうつぶやくと、ずずっと鼻をすする。

「ウフフ。もしわたしがまこぴーだったら、どうしたい?」

許される瞬間を待っていたかのように、レジーナが顔を上げ、マナの唇にキスをした。

初めは触れるだけのキスだったが、それでは気持ちがおさえられないみたいで、今度は長く口をつけて自分自身の熱と潤いを分け与えようとしてくる。


「じゃあ、今夜は一緒の布団で寝よっか」

マナが提案し、「分かってるよ」という表情をする。

レジーナはただ切なそうにマナを見つめ、アゴを引いてうなずいた。


勉強机や女の子らしい小物なんかで飾られたマナの部屋が、二人のじゃれ合いによって日常性を失っていく。


——今日だけだから。

マナをまこぴーの代わりにするのは、今日だけにするから。



「ごめんねマナ」



むきたてのりんごみたいに真っ白な肌を見せるレジーナが、天井の明かりを背にして、マナに謝る。

柔らかいベッドの上で、身体を重ねた。

もう何度目か分からない、ぎゅっとした抱きつきで。



(おわり)