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Re: 【百合】二次創作短編集(最終更新10月28日) ( No.11 )
日時: 2013/11/09 00:33
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   『ゆゆ式』ゆい×ゆず子×ゆかり


___解説___
三上小又の漫画が原作。2013年4月にアニメ化。
仲の良い三人はインドア気味な高校生活を送ったり、「情報処理部」という部活動に励んだりしている。
原作ではゆい一人を、ゆず子とゆかりの二人で愛でる展開が多い。



   ***



日曜日——。

ゆい、ゆず子、ゆかりの三人は、大きな池や広場のある綺麗な公園にやって来た。

情報処理部はいつもインドアなので、たまには運動をしようということになったのだ。

ゆず子が家からバトミントンのラケットやシャトルを持ってきた。

二つしかないラケットを交替で使いながら、三人は気持ちよく汗を流して——。



「最近さー、おばさんなんかがジョギングしてるの、よく見るよね」

ゆず子が言った。

大きな池を囲むように遊歩道が敷かれていて、そこをジョギング姿のおばさんやおじさんが、走ったり歩いたりしている。

「ジョギング界も高齢化社会?」

ゆかりがポカンとした顔で言うのを、ゆいが訂正するように言う。

「ダイエットとかさ……あれだよ。『有酸素運動』っていうのが、脂肪を燃やすのにいいらしい」

「ふーん。そもそも有酸素運動って何なの? 無酸素バージョンもあるの?」

ゆず子が聞いた。

「バージョンってなんだよ。えっと……あるある。無酸素運動もあるよ」

ゆいが早速、ネットで調べた。

簡単に言えば、有酸素運動とは、ランニングや水泳など、時間をかけた運動である。

「へー。つまり、ゆっくりな呼吸でできるような運動だよね」

と、ゆず子。

「呼吸が『スーハー』でできる運動だね」

「そう。『スーハー』な運動だね」

ゆかりが乗っかると、ゆず子と二人して「スーハー、スーハー」なんて続けている。

「ちょっと、イヤらしい目つきでスーハー言うのやめろよ」

二人の視線を受けながら、ゆいが言った。

「「スーハー、スーハー……」」

「だから、やめろって」

「スーハー……スーハー……オーイェー!」

ゆず子がピーンと背筋を伸ばして親指を突き立てた。


そして一瞬の静寂。


「最後の『オーイェー』はなんだったんだ? 終わったってことか?」

ゆいが首をかしげて聞くが、ゆず子は答えない。

すっと真顔に戻り、話を変えた。

「バトミントンも有酸素運動に入るよね。脂肪、減ったかな?」

そんなすぐに減るはずもないのだが。ゆず子は自分の横っ腹を、指でつまんでみる。

それを見ると、ゆいとゆかりも釣られて、自分のお腹をムニムニしてしまう。

「んー、わたしもゆかりちゃんもスレンダーだから分からないなぁ」

「あ、あたしだって掴めるような肉なんてないぞ」

ゆいがそう言うと、ゆず子は急に悪い子の顔になって、

「それはどうかな!」

ゆいの脇腹を、ぎゅっとつかんだ。

「きゃっ」

突然のくすぐりに、ゆいは小さな悲鳴を上げた。

普段よりずっと高い声が出てしまったゆいは、恥ずかしさに顔を赤くして怒った。

「だ、か、ら! 脇腹が弱いの知ってるだろ!」

怒るゆいがまた可愛いのか、ゆかりがくすくす笑って、

「ゆいちゃんの脇。すぐ下がアバラ骨だもんね」

「その言い方だと、なんか気持ち悪いな」

「ウフフ。ゆいちゃんの、ワ・キ・バ・ラ」

ゆず子が意味もなく、口に手を当てて囁いた。

「やめろ」

「ゆいちゃんの、ワ・キ……」

ゆかりも意味もなく口に手を当てて囁く。イヤらしい目をゆいに向けて。

「……バラ肉」

「焼肉メニューか」


「そうそう。で、無酸素運動は結局どんな運動なの?」

ゆず子がまた唐突に話題を変えた。

「え? またそれ? えっと……無酸素運動は」

ゆいはネットで調べようと、携帯の画面をのぞき込む。

「スーハーしないでする運動じゃないの?」

「それ死ぬよ。……でも似たようなものか。無酸素運動は、時間をかけない運動だな。例えば筋トレとか、短距離ダッシュとか」

「ダッシュ? そうだ今日のわたしたち、ダッシュしてない! しなきゃ!」

ゆいが「は?」と言うのも聞かず、ゆず子は、

「あそこの木までね! レディー……ゴー!」

走り出した。

ゆかりが「あーん、ゆずちゃんフライングー!」と非難しながらも駆け出す。

「おいおい、けっこう距離あるぞ!」

ゆいも結局、走っていた。

フライングしたゆず子に、ゆいが並びかけたところで。

ズシャッ。

砂の上をすべるような綺麗な音。

見ると、ゆかりが派手に転んでいた。

「ゆかり!」
「ゆかりちゃん!」

二人は心配して駆け寄る。

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」

ちょっと走っただけなのに、ゆかりはすっかり息切れしていた。

「ゆかり、大丈夫か?」

「ゼェ……ゼェ……く、くちゅひも……」

「は?」

「く、くちゅひも……ほどけちゃった」

「あー、靴ヒモな」

ゆいは合点が行って、ゆかりのヒモを直してやる。

「あーん、ゆかりちゃん。呂律が怪しくなってるよ」

ゆず子がワクワクしたような顔で、ゆかりの前にしゃがみ込む。

どうやらゆかりは、酸欠によって一時的に呂律が怪しくなっているらしい。

「ゆかりちゃん、『突入』って言ってみて」

ゆかりは息切れしながら、ゆず子の顔を見て。

「と……とちゅにゅう?」

「おーーーーーー! とちゅにゅう!」

ゆず子が喜悦の表情を浮かべた。

ゆいは、ただただ困った顔をしている。

「じゃあ次は、『注入』って言ってみて」

「ちゅうにゅう」

「おーーーーーー! ちゅうにゅう!」 

「いや、合ってるだろそれは」

ゆいがボソッと言った。



帰り際、公園のすぐ前にあるコンビニで、三人は中華まんを買った。

三人とも、上が白のシャツで、下は運動用のハーフパンツの、お揃いだった。

「部活帰りでお腹が空き過ぎて、買い食いが我慢できない生徒みたいだね」

「部活じゃないけどな」

熱々の中華まんを、各々が美味しそうに頬張る。

空が灰色になってきて、公園内の時計を見るともう夕方四時だった。

「ねー、最後に、さっきのゆかりちゃんみたいに呂律が怪しくなるやつ、ゆいちゃんもやってよ」

「えー、やだよ」

「ねえ、やってやって」

「……もう。一回だけな」

「じゃあ何を言わせようかなー」

ゆず子が考え出すと、ゆかりが挙手をした。

「ゆずちゃん、わたし『好きだよ』がいいと思います!」

「えー! このタイミングで? 今? 言わせちゃう?」

ゆず子とゆかりがまた暴走しそうになる。

ゆいが「却下! やっぱりなし!」と言うが、どうやら二人を止められそうにはないようだ。