BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

「ゆり二次」0310UP ( No.123 )
日時: 2017/03/11 00:49
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: 8rukhG7e)

   『ラブライブ!』花陽×? 12



凛ちゃんとにこ先輩の注文した飲物がすっかりなくなって、仕方ないから二人とも最初に出されたお水をちびりちびり飲み始めた頃、

「お客さま」

声をかけてきたのは海未先輩だった。

「そろそろ、一時間になるのですが」

えッ? もう?

このお店では、入って一時間が経つと帰らなければいけない。


「なんか、あっという間な気がするにゃ」

凛ちゃんは物足りなさそうな顔をするけれど、にこ先輩はスマホを開いて時計を見ると「じゃ、仕方ないわね」と冷静だ。

引きとめるわけにもいかず、私はにこ先輩がやや強引に凛ちゃんを席から連れ去っていってしまうのを見るだけだった。


「テーブルの片づけはやっておきますから、カヨはレジへ行ってくれますか」

気づくと、レジには会計待ちのお客さん。

さらに入口付近には、これから入店待ちのお客さん。

いつの間にこんなに。さすが、有名なお店だ。


誰かが帰れば、誰かが入ってくる。仕事はつきない。

凛ちゃんたちが帰ったあとも私はここでお客さんをもてなし続けないといけないんだ。


「お待たせしました。伝票、おあずかりします」

お客さんから渡された注文票には、入店時刻と一緒に、帰る予定の時刻も書かれていて、私はそれをちらっと見た。


まだ14時50分——。

仕事の終わりは6時という約束だから、あと3時間もここに居ないといけないのか。


「412円のおつりです」

今日、何度目になるか分からない、同じ動作の繰り返し……のはずだった。

おつりとレシートを渡されたお客さんが、言いにくそうに申し出た。


312円しか渡してない。100円足りない。

私、おつりを間違えるミスをしてしまいました。


「申しわけございませんッ」

ここに来て、人生で初めての土下座——。

というわけではないけれど、深く頭を下げる。それを、

「ここはもういいから、カヨちゃん。ウミちゃんの方を手伝ってあげて」

ミナリンスキーがとめた。

そして私は気付く。

周りの視線もあるし、店員に頭を下げられたところで、お客さんも困ってしまう。

ここはさらっと謝って流すくらいがちょうどよかったんだ。

そしてその「周りの視線」の中に、凛ちゃんとにこ先輩が居た。


見られた……最悪。


にこ先輩はただ冷静にこの状況を見ているだけだったけれど、凛ちゃんは心配そうに私の方を見ていた。


いいわけしたくてもする時間がない。ミナリンスキーがテキパキとレジの処理をして、私は追い出されるようにホールの方へ行く。

なんていう失態……。



(つづく)