BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

二次創作短編集(1125UP) ( No.18 )
日時: 2013/11/25 18:13
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   『キルミーベイベー』やすな×ソーニャ


___解説___
2012年アニメ化。カヅホによる4コマ漫画が原作。
ソーニャは女子高生だが殺し屋。クールボイスの金髪ツインテール。
やすなは普通の女子高生のようだが、頑丈で不死身。茶色のセミロング。
原作はソーニャのバイオレンスなツッコミと、なんとなく昭和風のモチーフが特徴かと思われる。



   ***



ある冬の放課後——。


ソーニャは学校の正門前でやすなを待っていた。

腕を組み、つま先で地面をトントンと叩いてみる。

まだか、と思って校舎の方を見るがやすなの姿はない。

冬の風が膝をなでた。

「っくちゅん!」

くしゃみを一発。

実は午後から風邪気味だった。

先に帰ってもいいのだが、あと少し待てばやすなが来るかと思うと、帰るに帰れない。


「ソーニャちゃ〜ん、ごめ〜ん。先生の話しが長引いちゃって〜」

息を切らしながら、やすなが来た。職員室に呼び出されていたのだった。

「遅い! っくちょん!」

一喝すると同時に、またくしゃみ。鼻水がブワッと飛び出た。

「大丈夫? 待たせてごめんね。さ、帰ろう」

二人は並んで門を抜けた。


ガサッ——。植木が揺れ、顔が一つ出てきた。

「折部やすな……」

ひとり呟いたのは、ショートカット風にそろえられた赤髪から一本だけ長いお下げが腰まで伸びた女の子。名前はない。

今日も終日やすなをつけまわしておいて、気づかれることなく、声もかけられず、一日が終わってしまったのだった。



「家に薬がなかった……薬局行かないと」

帰り道——ソーニャはさっきより顔も赤くなって、辛そうだ。

「ソーニャちゃん、うちに良く効く薬があるよ。家も近いし、寄ってったら?」

「いいよ。自分で買うから」

「無理しなくていいんだよー。それに、甘いシロップ入りのお薬だから、ソーニャちゃんでも飲めるよ」

「っそうじゃなくてだな!」

突如、どこからかサッカーボールが飛んできた。近所に公園があったのだ。

「ソーニャちゃん、頭上! ボール!」

「え?」

バシーン! ボールがソーニャの脳天にヒットした。

やすなでさえとっくに気づいていたのに、まさか的中するとは。

「うぅ……」

かがみ込んでソーニャは、頭をすりすりする。

「大丈夫? よっぽど調子が悪いの? いつもなら、たかがサッカーボールを迎撃するのにも全力でカッコつけるソーニャちゃんなのに」

「あのなぁ……」

怒る力もないソーニャだった。


場所は変わって、やすなの家——。

やすなの部屋には、コタツに、みかんもある。

ソーニャはコタツに入り、背中を丸めて、アゴをテーブルの上に置いてリラックスした表情になる。
コタツの中、太ももの間に両手を挿み温める。

「おかゆ、できたよー。お薬を飲むんじゃ、何か胃に入れなきゃね」

やすながおかゆを作ってくれた。一人分の小さな土鍋に、おかゆが煮え立っている。

「お前、意外と料理できるんだな」

「そうだよー。味も良いと思うから、食べてみて」

頬の紅潮したソーニャが、鼻水をすすってから、レンゲを手に取る。

ぐつぐつ煮え立つおかゆをすくって。
チロリ——。ピンクの舌先でそっと触れてみる。

ソーニャは「熱っ」というように顔をしかめた。
そして今度は、ふーふーと、息を吹きかける。

ふー、ふー、ふー、ふー……。

それをニコニコしながらやすなが見ていた。


「……なんだよ?」

「えへへへ。ソーニャちゃん、猫舌なんだね」

「うるさい! 食べるとこジロジロ見るな!」

「はいはい、分かりましたー。わたしはミカン食べよ」

やすなはテーブルの上のミカンを手に取るが、

「あっ、落っことしちゃったー」

わざとっぽく落としたミカンは、コロコロ……転がっていき。

「ミカンがコタツの中に入っちゃった。どこだー、ミカン」

やすなは布団をめくって、コタツに顔をつっこむ。

「コタツの中、ソーニャちゃんの匂いがする」

「何してんだ! ひぅっ……」

怒る間もなく、ソーニャの太ももにやすなの手が置かれる。

「お前……どこ触ってるんだよぉ……!」

コタツの中でやすなが脚に絡みついてくる。そのウネウネした動きに、ソーニャは腰が抜けそうになった。

「ぷはぁっ」

やすなが顔を出した。ソーニャの脚の間から、もぐら叩きのように。

「フンヌゥッ!」

すかさず、ソーニャの打ち下ろしのパンチ。しかし。


パシッ——。やすなはその拳を受け止めた。


「ダメだよソーニャちゃん。弱ってるんだから」

「は、放せ」

ソーニャがやすなに押さえつけられ、二人の身体が重なった。

コタツにくるまって、やすなとじーっと目を合わせる。

「ソーニャちゃん、本当は抵抗しようと思えばできるんでしょ? さっきから腕に全然力が入ってないよ?」

「…………」

ソーニャは口をつぐんで睨みつけていたが、囁くように、

「……今日は風邪だから、お前に勝てん」

「そうなの……」

やすなはソーニャの肩に手を置くと、ゆっくり顔を近づけた。

ソーニャのくちびるの位置を目で確認してから、そこへ自分のを重ねる。

ソーニャは目も閉じず、されるままにしていた。


「……覚えてろよ。風邪が治ったら、仕返しするからな」

「分かった。じゃあ今日だけね」

「んんッ……」

再びやすなに口をふさがれた。
押し倒されてソーニャの目には、天井の木目が映っていた。



翌朝——。

「んー? そこの二人は今日、欠席かね」

担任の先生がやすなとソーニャの出席欄に「×」をつけた。


二人とも風邪で寝ていたのだった。