BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 【百合】二次創作短編集(1206UP) ( No.21 )
- 日時: 2013/12/06 17:22
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『らき☆すた』かがみ×こなた
___解説___
2007年にアニメ化。美水かがみの4コマ漫画が原作。
S県の鷲宮(わしのみや)が舞台となっており、当時は(というか最近でも)地元で盛り上がっていたらしい。
ちなみに、この二次創作はこなたたちが高校二年生という設定で書かれている。
***
二学期最後の日——。
かがみは、こなた、つかさとの三人で大宮のアニメイトに来ていた。
こなたが冬コミのカタログを買うので、それの付き添いだった。
「最近のアニメイトは若い女の子が多いよね」
と、こなた。
「あんたもだろ。でもほんとに、学校帰りの中高生が多いな」
「昔みたいにオタクだからってバカにされることも少なくなったけど、おかげで18禁のスペースがしっかり分けられて、年齢確認なしじゃ買えなくなっちゃったよ」
「だから、お前はいったい何年生まれなんだ」
でも確かにオタク人口は確実に増え続けているわけで。
つかさもアニメイトに来ると自分の好きな物を買ったりする。
最近は『黒子のバスケ』にハマっているらしい。ちょっとポピュラー過ぎて、かえってこなたやかがみには分からないが。
「ひよりちゃんとも、黒子の話とかするんだけどね」
つかさが二人に言う。
「“ウケ”とか“セメ”って、なんなの?」
「えっと、それはその……」
無邪気に聞いてくるつかさに、二人は目を見合わせてだんまりした。
「ひよりちゃんはね、火神君がセメで青峰君がウケじゃないと納得いかないんだって。逆は許せないんだって。どういう意味なんだろう……」
つかさは「?」を頭上に浮かべたまま、アゴに指を当てている。
ひよりみたいに、腐った目で見る読者ではないらしい。
(女子高生の間でそういう話題が普通に出る世の中ってのも、問題かもな)
そう思うこなたとかがみの顔には、青い筋と冷汗が浮かんでいた。
「ところでかがみは何を買ったの?」
「な、なんでもいいでしょ」
かがみが手に持っていたものを、恥ずかしそうに隠す。
「電撃文庫? 何も隠すことないじゃん」
こなたは意外と小説だけは(例えラノベでも)読めない。かがみの買う物も、どんな内容か無関心だった。
それって実は女の子同士の恋愛を描くラノベだったのだが。
かがみは妙に共感できる部分があり、最近は百合ラノベにハマっているのだが、なんとなく、こなたに知られるのは恥ずかしかった。
さて買物も済んで、三人は外に出た。
「アニメイトの隣はメロンブックスだし、このあたりだけ中野や秋葉みたいになってるけど、エリアを一歩外れると大宮ってやっぱリア充ばかりだよね」
こなたが言う。
ほんの数メートルも歩けば高校生のカップルなんかが目につく。
十二月なので日は短く、空は既に暗い。
駅前に飾られた、赤や緑のイルミネーション。
そう、二学期最終日であると同時に今日はクリスマスイブなのだった。
「今年のクリスマスも、かがみフラグを立てられる男の子は居なかったんだね」
「フラグって言うな。でも結局、今年もこうして三人一緒だもんね。それも、大宮に冬コミのカタログ買いに来てるなんて……」
「わたしみたいなのといつも一緒だからだよ」
こなたはそう言うと、いつになく優しい目で「悪影響、与えてない?」と、かがみを見た。
「そんなのわたしの自己責任よ。こなたの方は、相変わらず男子とかには興味ないの?」
「んー、男子より今は冬コミが関心事なのだよ」
「……そっか」
かがみは安心した。
その気持ちが表情に出てしまったのだろう。こなたにすぐ見透かされてしまう。
「かがみがフリーで居る間、わたしもフリーだから大丈夫だよ〜」
「ちょっ、顔くっつけるなぁ」
ニヤニヤしながらこなたが頬ずりしてくる。
かがみが真っ赤になって照れると、今度は「いーこいーこ」と頭を撫でられてしまう。
こなたの頬は少しだけかがみより温かかった。
いつものこんな「からかい」が今日は嬉しくて。
「っ!」
かがみはこなたの頬にキスしていた。
「……お、お姉ちゃん?」
傍で見ていたつかさがとまどっている。
かがみもハッとなって、こなたから顔を離した。
「ち、違うの……今のは」
何も違わない。
頬ずりされた勢いで、こなたの頬にキスしてしまったのだ。
しかし自分のそんな衝動が、冷静になってみると死ぬほど恥ずかしい。
「やれやれ。クリスマスイブだから、かがみの中のウサギちゃんが寂し過ぎて顔を出しちゃったんだね」
「は、恥ずかしいからウサギだけはやめてくれ……」
「ウフフ。お姉ちゃんもこなちゃんも、いつも通りで良かった」
つかさが笑ってくれた。頬へのキスも、気にしていないみたいだ。
それは良かったけれど、本当は、冗談で流して欲しくなんかなかった。そう思うかがみだった。
鷲宮までの切符を買って、駅の改札を抜けた頃。
「ごめーん。ちょっとトイレ。おうちまで我慢できない……」
つかさが駅構内のトイレに入っていく。
かがみはさっきの照れ臭さがまだ残っていて、こなたと言葉も交わせずに居たが。
「かがみ」
「え?」
かがみが振り向くと、こなたは「分かってるよ」という顔をしていた。
「さっきのキス、本気だったでしょ」
「う……あれはその……」
「本当は、くちびるにしたいんじゃない?」
こなたが自分のくちびるに指を当てながら、上目づかいでこっちを見てくる。
「わたしのこと、好きって言ってくれたら、キスしてもいいよ?」
「な、なんでよ……わたしもこなたも、女じゃないの。いくらクリスマスに彼氏が居ないからって、そんなの……」
こなたは「ノンノン」と言って首を振る。
「ほら、今ならつかさも居ないから。それに、冬休みに入ったらすぐには会えなくなるかもよ?」
こなたの顔は笑っていなかった。そして、その目が言っていた。
——今だけは、ツンは許さないよ、と。
もう勘弁するしかない。
「そ、そうよ!」
かがみはぎゅっと目をつぶって、勇気を振りしぼった。
「わたしはこなたが大好きよ!」
最近、やっと分かってきたのだった。
自分みたいに、女の子が女の子を好きになるのは「百合」と呼ばれるらしい。
かがみはそれを知った時に、「自分だけじゃないんだ」と思った。
マンガやアニメからの影響なんて、大人からは悪く言われるだろうけれど、良い子で通ってきたかがみでも、これだけは譲れなかった。
「……よく言えたね。さ、おいでおいで」
こなたが両手を広げてウェルカムのポーズになる。
「いいの?」
「ぜんぜん。かがみさえ平気なら」
かがみはこなたの肩に手をかけると、少し背を低めて、そっと口づけした。
見慣れた顔だと思ったのに、これだけ近くで見てみると、こなたは本当に綺麗な顔をしていた。
こなたが可愛いって思うと、胸がドキドキして、その熱が身体の上へも下へも巡っていく。
幸せでいっぱいだ、と思った。
駅は人通りがあるけれど、クリスマスの夜だから、許される気がしてしまう。
「お待たせ〜。トイレちょっと混んでた。まだ電車来てないよねー?」
つかさが苦笑いしながら戻ってくる。
かがみは何事もなかったように、
「大丈夫。さ、帰るわよ」
先頭を歩いて駅のホームへと下りていく。
「冬休み中も、こなちゃんに会えるかな?」
つかさが言う。
「それなんだけどね、今かがみと話してたんだ。冬コミの買出し、手伝ってくれるってさ」
「っんなこと言ってないでしょ!」
かがみが振り返って怒鳴る。ツインテールのお下げがピンと跳ねた。
「あれー? いいのかな? かがみがわたしに何したか、つかさに言っちゃうよ?」
「な! 卑怯よそんなの!」
つかさが「えー? 何々?」と間に入ってくる。かがみは「何でもない何でもない!」と制止して。
「わ、分かったわよ! 付き合うから、わたしとあなただけの秘密にしといて!」
すっかりこなたに主導権をにぎられているかがみだった。