BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【GL・百合】二次創作短編集『ヤマノススメ』 ( No.37 )
- 日時: 2014/02/23 19:17
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『ヤマノススメ』あおい×ひなた 1/2
___解説___
2013年、1話5分としてアニメ化。
舞台は埼玉県の飯能(はんのう)市。
インドアで友達の居なかった主人公が、山登りの楽しさを知って成長していく、という話。
なんかどっかで見たことあるキャラデザだけど(しかも阿澄佳奈さん出てる)これはこれでイイと思う、ひOまり好きのあるまでした。
***
その日、あおい、ひなた、ここなの三人は、ひなた父の車で埼玉県のある山に来ていた。
河原でのバーベキューの後、釣りに夢中なひなた父を置いて三人は山を登った。
「あおいー、ちょっとペース速いよ。ここなが疲れちゃってる」
「ご、ごめんなさい……少し休ませてください」
山の空気を吸いながら一時間も歩いただろうか。
初めは並んで歩いていたのが、今では先頭をあおい、少し離れてひなた、だいぶ離れてここなという風に、差が広がってしまっている。
「ごめん二人とも。でももうすぐ頂上みたいだよ」
あおいが指で差した先には「OO山、山頂」の立て看板が。
その山のてっぺんは公園のような広場になっていた。
きれいに芝生が敷かれ、ベンチ、水飲み場、時計塔がある。
盛り上がった丘の上には展望台があり、そこから地上の町並みが一望できそうだった。
ここなは景色を楽しむ余裕もなくベンチに座って一休みする。
「展望台に上ってみようよ」
あおいはひなたを誘った。
「うん。でもこれって……」
ひなたはちゅうちょした。
展望台はけっこうな高さで、そこへ着くまでの階段も急だった。
ひなたは幅の狭い階段の手すりに手をかけたまま、痛くなるくらい首を上げて展望台のてっぺんを見上げて不安になった。
しかし、あおいは軽い足取りでどんどん先へ上って行ってしまう。
それを見てひなたも階段をゆっくり上った。
展望台はテラスのようになっていて、十人くらいが横に並べるようなスペースだった。
少し錆びた手すりに両手を置いて、二人は山頂からの景色を眺めた。
地上ではあんなに高かったビルさえ、ここから見ると小さな作り物だった。
「良い風……」
あおいのショート気味の髪を風が揺らした。
鉄材でできた展望台が、カタカタ音を鳴らす。
「あおい、もうすっかり高い所も平気だね」
さっきからあおいの横顔ばかり見ていたひなたが、手すりに肘をかけて言う。
「あ、そういえばそうだ……」
あおいは言われてやっと自分の変化に気づいた。
あおいは小学生の頃、ジャングルジムから落ちて骨を折った。
それで高所恐怖症になって、インドアな一人遊びばかりするようになり、友達もできなかった。
しかし高校入学をきっかけにひなたと再会して、ひなたの強引なペースに振り回されているうちに、いつの間にか山が好きになって、高い所も平気になっていた。
小さい頃に仲が良かったとはいえ、クラスでも浮いているあおいに、ひなたがしつこいくらい接してくれたのは、なんでなんだろう。
実際、中学が別々だっただけで、あおいはひなたのことすら忘れていたくらいなのに。
「ひなた。その……ありがとう」
「え?」
「わたしが、もし変われたんだとしたら。前より良くなれたんだとしたら、それはひなたのおかげって思えるから。だから……ありがとう」
山からの景色に心も開けたあおいは、素直に、こんなことが言えていた。
しかしひなたは、いつもの分かっているような分かっていないような無邪気な表情で、
「わたしってさー、ついお節介ばかり焼いちゃうんだよ」
その言葉に、今度はあおいが「え?」とだけ言って止まった。
「高校に入ったばかりの頃、あおいったら一人ぼっちでさ。誰が見ても心配になるよ、あれじゃ」
遠くの空を見ていたひなたが、あおいの方を向いた。
「わたし、あおいにさんざん『そんなんじゃモテないよ』って言ったけど、あれ撤回するよ。あおい、わたしやここな以外のひととも話せるようになってきてるし、仲の良い男の子だって、できちゃうんじゃん」
「そんな……」
あおいの中で、ひなたの言葉が反響した。
あおいの優しさは、ただのお節介?
わたしを見て心配になるのは、誰でも一緒?
それよりも「仲の良い男の子」ってなに?
わたし、そんなの欲しいように見えるの?
あおいの心はだんだんと曇ってきて、てっぺんからの眺めも、寂しいものに思えてきてしまう。
(つづく)