BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【GL・百合】二次創作短編集(最終更新2月23日) ( No.41 )
日時: 2014/03/18 18:57
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   『中二病でも恋がしたい!』丹生谷×凸守 1/2


___解説___
言わずと知れた大ヒット作品。
2012年10月にアニメ化。2013年9月に劇場版公開。2014年1月から二期が放送されている。
小鳥遊立花(たかなしりっか)が原作でのメインヒロインになるが、丹生谷森夏(にぶたにしんか)はそれの同級生。
丹生谷は昔「中二病だった」という黒歴史を持っている。モリサマーは中二病であった頃に語った名前。
凸守早苗(でこもりさなえ)は現役の中二病で、ネット上で出会った「本物のモリサマー」を尊敬しているが、目の前に居る丹生谷のことをモリサマーだとは認めず「ニセサマー」と呼び続けている。
丹生谷と凸守は、そんな、まあ、喧嘩ばっかしてる関係。



   ***



放課後——。高等部の昇降口にて。


「丹生谷さん、もうすぐ中間試験だけど、どう? 勉強してる?」

「うんん。ぜんぜん勉強してないよ〜」

モリサマーこと丹生谷森夏はうわついた声でクラスメイトの問いに答えた。

「え? 丹生谷さんもなの? よかったー。みんな一緒なんだ」

森夏は笑顔を絶やさず、身体をくねらせながら言う。

「そうだね〜。もし私だけ良い点が取れちゃっても、それはたまたまテストの山が当た」

「そこまで、デス!」


ズザザザッ。


森夏の足に衝撃が走ったかと思うと、視界が空転する。

中等部の三年にして現役の中二病である凸守早苗が、森夏の足にスライディングをかましたのだった。


「いつつ……痛いわねぇ! 何するのよ!」

尻もちをついた森夏が腰をさすりながら叫ぶ。

そこでは地面につきそうなほど長いツインテールのお下げ髪をした少女が敵意をむき出しにしながらこっちを見ていて、

「お前は現実に甘んじて、あんいつをむさぼっているデス!」

決めゼリフっぽくビシィっと言ってのけた。

昼下がりの学校は今日も平和で、どっかから吹奏楽部の練習音が聞こえていた。

「現実に甘んじてって……なんで私だけ責められなきゃいけないのよ!」

「黙れ。あまつさえモリサマーの名を語る腐れ一般人が。お前には天罰が必要デス!」

森夏はモリサマーの名が出てくると、そこで言い返すのをやめた。

一般人でけっこうじゃないか。
今の私はせっかくクラスの子とうまくやっていたのに。

こんなバカには付き合ってられない。

「じゃあ、帰ろっか」

森夏は立ち上がると、笑顔を取り戻してクラスメイトに歩み寄った。

「お友達、置いてっちゃっていいの?」

クラスメイトが、戦闘態勢の凸守に目を配る。

「いいのいいの。放っとけばそのうち飽きるから。帰ろ帰ろ」

ってか、友達じゃないし。私たち。


「無視するな、デス!」

今度は森夏の膝元がやたらスースーする。
下から上へ、空気が送り込まれているような感覚だった。

「きゃーッ! ちょっとぉ、何するのよ!」

気づくと、凸守のニョルニルハンマーが森夏のスカートを巻き上げていた。

「私がいったい何をしたっていうのよぉ!」

森夏は悲鳴をあげながらスカートをおさえる。

「他人をあざむき己をあざむき、なあなあで生きてる罪びとには天罰が必要デス!」

「くっ……いい加減にしろ、このバカ!」

森夏はニョルニルハンマーの先端をつかんで、思い切り引っ張る。

「いたたたた、痛い痛いですぅッ!」

長いお下げを引っ張られて凸守が片足でぴょんぴょん跳ねながらこっちに引き寄せられてくる。

さて今日もこのクソチューボーを物陰にでも連れ込んでボッコボコにしてやろうか。


と思ったのだが、凸守の目には、既に涙の跡が見てとれた。

近くで見るその顔から、凸守が何か訴えかけているのを森夏は感じ取った。


「ごめん。先に帰ってて」

森夏はクラスメイトにそう告げると、凸守を連れて去っていく。

クラスの中に、私の居場所は見つけられるのだろうかと、溜息を吐きながら。



——————



場所は変わって、ここは誰も居ない教室。

換気用の窓が開いているのか、静かな木造の校舎に、からっとした風が吹いていた。


「何があったの?」

教室の後ろの壁のところに凸守を立たせて、丹生谷は問いつめる。

「それは……デス」

凸守は口をもごもごさせながら、目をそらした。

「いいから。言ってみなさいって」

「マスターが……」

「小鳥遊さんが?」

「マスターが昨日も今日も、ダークフレイムマスターと仲良さそうに帰っていったデス」

マスターこと、邪王真眼こと小鳥遊立花。
ダークフレイムマスターこと、立花の彼氏こと富樫勇太。

この二人は最近になってますます良い感じだ。

凸守は立花をとてもしたっているため、勇太にやきもちを焼いているのだった。

「それは、あの二人は恋人同士なんだから、あんたが邪魔しちゃ悪いわよ」

「マスターは凸守と一緒に不可視境界線を探していたはずデス。いわばマスターは高貴なお方……。あの男は、マスターをもてあそんでいるだけデス!」

「ひとをそんなに悪く言うものじゃないわ」

丹生谷は優しく微笑むと、凸守の小さな身体をそっと抱きしめた。

「放せ……。放すデス」

何を言う。本当は寂しくて、かまって欲しくて私のもとへ来たくせに。

今だって、何があったのと聞けば、あなたはすぐに話してくれたじゃないか。

森夏はさらに力を込めて凸守を抱きしめる。

凸守の顔に、森夏の柔らかな双丘が密着した。

「どう。こうやって身体をくっつけ合っていると、安心するでしょ」

凸守は森夏の温もりに包まれ、すっかり抵抗する意志を失ったように、身体をだらけさせた。

「く……悔しい。お前はニセサマーなのに。不可視境界線の存在を否定するデスのに……」

「きっと小鳥遊さんはね、不可視境界線じゃない、こっち側の世界で素晴らしいものを見つけたのよ」

「そんなの、あるわけないデス」

「あるわ。教えてあげる」



   (つづく)