BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【GL・百合】二次創作短編集(最終更新5月27日) ( No.55 )
- 日時: 2014/06/03 22:12
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『咲-Saki-』咲×衣 B1/2
夜中、衣はひとりで目が覚めてしまった。
布団から身を起こすと、真っ暗な和室には静かな寝息しか聞こえない。
「うーん……喉が渇いたぞ。おい、透華」
すぐ隣の布団を見ると、
「すぅ……すぅ……ん〜、主役はわたくしですわ〜……すぅ……すぅ……」
透華が何やら寝言を言っていた。
まあ、言いたいやつには言わしておけばいいだろう。
「仕方ない。衣ひとりで飲物を買いに行くか」
純も、一も、智紀もぐっすり寝ている。ように見える。
衣は物音を立てないよう、そっと部屋を出た。
廊下の景色は昼間と変わらない、一色で塗り固めたように味気のない通路だった。
衣は記憶を頼りに、自販機コーナーを目指す。
するとボボボボボ——。
「な、なんか変な音がするのだ……」
それは真っ白な光を放つ自動販売機の稼動音だった。
昼間にジュースを買いに来た時も同じ音はしていたはずだが、夜中になって初めてそれは不気味な音に感じられた。
「ど、どうしよう……」
衣が廊下のド真中で動けなくなっていると、
「あれ? 天江……さん?」
頭上から、優しい声がする。
「き、清澄のふたり!」
そこに居たのは、原村和と宮永咲。
二人とも浴衣姿だった。
「こんな夜中に、どうしたのだ?」
「ええ。宮永さんと麻雀のシミュレーションをしていたんですけれど、だいぶ汗をかいてしまったので、これからお風呂に行くんです」
「麻雀でそんなに汗をかいたのか?」
「はい。最初は頭脳戦だけのつもりだったんですけど、ついエキサイトしてしまいました」
和が、横の咲に「ね?」なんて、仲よさそうに同意を求めている。
麻雀において、頭脳戦以外に何があるというのだろう。
この二人はつい今まで、汗をかくほど仲よく麻雀をしていたわけか。
衣はそれでつい、
「衣も今から風呂へ行こうと思ってたんだ!」
と発言していた。
大浴場は午前三時まで利用できると旅館のひとが言っていた。
服を脱いだ衣が、昨今では条例違反になってしまうほどのツルペタでほっそりした裸体でもって浴場に飛び出してみると——。
「うわぁ…………」
夜中の浴場はまるで貸し切り状態だった。
「これだけ広いのに誰も居ないなんて」
「解放感があって、素敵だね」
タオルで前を隠した和と咲が言った。
「なあ、泳いでも怒られないか?」
「え? そりゃ、まあ、誰も怒るひとなんて居ませんけど」
「それがなー、さっきは居たのだ。衣たちは夕飯前に入ったんだが、他の利用客も居るから大人しくしろって透華がうるさくてな」
衣はその時の気分を思い出し、イライラしながら腕を組んでは、「透華のやつも全く、衣の母親気取りでうるさいのだ」と不満をたれている。
それから、パチッと目を見開くと、視線より少し上の方——和の胸元をじーっと見つめた。
「ん〜……、透華よりノドカの方が、母親にふさわしいぞ」
和の豊満な胸に母性のようなものを感じ、衣はじっと見つめる。
「そ、そうでしょうか」
和も透華に見られる時ほど恥ずかしくはないらしく、衣と一緒になって自分の胸を見た。
「衣もそのうち大きくなりたいぞ」
くちびるをとがらせて衣は、調味料用の小皿をひっくり返したぐらいの膨らみしかない自分の胸に、両手の平をかぶせる。
「胸も、身長も、小学生の頃からほとんど変わってないのだ」
つかめるほどの肉もない自分の身体を頑張ってもみもみしている衣を見て、咲は、
「そのうち、大きくなるといいね」
と声をかけてあげた。
あと三年ほどで成人なのだが。
優しい言葉に、衣も「うん!」と笑顔になってしまう。
(つづく)