BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【GL・百合】二次創作短編集 ( No.65 )
日時: 2014/07/13 18:00
名前: あるゴマ(あるま&ゴマ猫) (ID: Ba9T.ag9)

   『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』あやせ×桐乃 B3/3



   6

————結局、なぜこうなったかはわからないけど。

今私は桐乃と肩を並べて、数時間、その……い、いかがわしいゲームをやっている。

でも、桐乃の笑顔を見られるならこのくらい!!


「ふへへぇ〜、可愛いよぉ、あやかちゃん」

「桐乃、よだれ、よだれ」

私の親友は本当に大丈夫なんだろうか? 色々な意味で。

ハンカチでよだれを拭ってあげると、桐乃はいつもでは考えられないくらいのゆるみきった笑顔でこちらを向いた。

「……あや……?」

「うん? あやせだよ?」

桐乃の目の下、くまが凄い。

もしかしてあんまり寝てないのかな?

今日は少し目も虚ろだし……心配だなぁ。

「……あやかちゃーん!!」

「きゃあっ!!」

突然桐乃に抱きつかれ、勢いよく押し倒されてしまう。


戸惑っていると、桐乃が私の上に馬乗りになっていた。


——っつ!? わ、私、桐乃に押し倒されてる!?

「き、桐乃? どうしたの?」

「大丈夫。優しくするからね……」

優しくってなに!?

だ、ダメだけどダメじゃない!!

そのまま、頬を紅潮させた桐乃の荒い息づかいが迫ってくる。

やがて、ピタッと身体が磁石のようにくっついて、お互いの心臓の鼓動が聞こえる。

私の心臓はさっきからうるさいくらいに高鳴ってしまっていて、多分顔も恥ずかしいくらいに赤くなっているだろう。

「……あやかちゃん」

「……桐乃」

もう、なんかどうでも良いかも。

憧れていた桐乃となら、このまま。

お互いの唇まであと数センチ。目を閉じて、受け入れる準備をする。


————ガチャ


「おい、桐乃。勉強してんだから少しは静か……に」

「……あ、あ、あ、あ……」

「……お、お前ら、な、なにやってんの?」

「ヘンタイ!! セクハラ魔神!! 勝手に部屋に入ってこないで下さい!!」

「ちょ、バカ、辞書とか地味に殺傷力あるもん投げんな!! 落ち着け! あやせ!」

仰向けの状態から、お兄さんに向かって近くにある物を手当たり次第に投げつけていく。

こんな姿を見られたからには、お兄さんを生かしておくわけにはいきません!

「お、落ち着け! 俺は何も見てない! これは幻だ! 夢だ!!」

「いいから、おとなしく殺されなさい! 抵抗しなければ、楽に殺してあげます!」

「どっちにしても俺が死ぬ事に変わりねぇじゃねぇか!? って、あやせ! あぶねぇ!」

「へっ?」

あまりに激しく動いてたせいか、振動で近くにあった棚から段ボール箱が落下してきてしまっていた。

とっさに避けようとしたが、いまは桐乃に馬乗りにされている状態で……桐乃はというと、さっきから惚けたように目を閉じたまま動かない。

「桐乃っ!!」

なんとか体勢を変えて、桐乃をかばおうとしたが時すでに遅く。

「あ゛」

目の前で桐乃の頭に段ボール(なんだか、薄い本がいっぱい入っていた)が直撃した。



————



「……いたたた」

「だ、大丈夫? 桐乃?」

「自業自得だ。何日も寝ないでゲームやってるから」

お兄さんは、そう言って肩をすくめながらも、桐乃を見つめるその表情は優しかった。

どうやら桐乃が『冷たい』と感じていた原因は、あのゲームが理由だったらしい。

そのゲームのキャラクターが私に似ていたせいで興奮してしまったとか。

よくわからないけど、私が好き過ぎて興奮したとかではないみたいです。

丁寧に説明してくれた後、頭を下げてくるお兄さんは、なんだかんだ言っても優しい。

で、でも、理由があるなら早く言ってくれれば良かったんです。

そうしたら、あんな恥ずかしい姿を見せる事も、勘違いもしなくてよかったんですから。


「あやせ……ごめんね」

「……いいよ。でも、あまりゲームばかりしてちゃダメだよ?」

「うん。これからは気をつけるね」

そう言って二人でくすりと笑いあう。

これで一件落着……かな?



今回の事でわかった事がある。

とても、シンプルで、それでいていつまでも変わらない想い。


やっぱり私は——桐乃が大好きだ。


この太陽のような笑顔の側に、いつも、いつまでも、変わらずに居られる事を胸の中でそっと祈る。

願わくば、桐乃にとっても、私がそういうかけがえのない存在でありますように。


永遠なんて言葉は陳腐かもしれないけど————。


「あやせ?」

「桐乃、大好きだよ」


沈黙していて私を心配そうに見つめる桐乃に、聞こえないくらいのトーンで私はそう呟いた。

——その永遠が続きますようにと。



(おわり)