BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【GL・百合】二次創作短編集(最終更新4月8日) ( No.83 )
日時: 2015/04/08 22:51
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   『あいまいみー』愛×ミイ 1


___【解説】___
ちょぼらうにょぽみによる4コマ漫画が原作。
2013年と2014年の二度、本編5分という形でアニメ化されている。
「漫研」の部室で、マンガ制作に励む愛を、ミイと麻衣が邪魔する……というのが初期によくあったシチュエーション。
芳文社系の美少女4コマにはない、シュールでバイオレンスな展開が唐突に来る感じが新鮮でありました。



   ***



この物語は、漫研に所属する女子高生たちが、天才漫画家と呼ばれるまでを描く、奇跡と感動の4コマを小説化したものである。






その日、漫研(倉持南高校の漫画研究部)の部室では——。

マンガ家を夢見る少女、蛯原愛がマンガの原稿作りに励んでいた。

そして愛のまわりを無数のシャボン玉が舞っていた。

シャボン玉を生産しているのは二人の少女だった。

さっきからシャボン液の入った小さなビンを片手に、ストローでふーふーとシャボン玉を生産し続けては、大きな声で笑っている。

近所の駄菓子屋で買い占めてきたというシャボン液は尽きることなく、空中を漂ってはパチパチと弾けて消え、部室内の床や壁、机をベトベトにしていた。

愛の頬に当たってはパチッと消え、ポニーテールのシュシュに触れてはまた消え——。

「よし、下書き完成! これで次はペン入れ作業に入れるわ」

愛が何度も線を入れ直した、複雑な構図の下書き。

その上にキラキラした球体がひとつ。

「あっ!」

原稿用紙の上でパチッと弾けたら、せっかく描いた男性キャラの顔が液体でにじんでしまった。

「なんてこと!」

慌ててティッシュを丸めて、ポンポンと叩いてみるが、にじみは広がるだけだった。

愛のお気に入りの男性キャラの顔が、溶かされたように醜いものになってしまった。

「ちょっと、ミイ! 麻衣!」

バンッ、と机を叩き、愛が二人の名を呼ぶ。


一人はミイ——ふわっとしたブロンドの癖毛から、ロングヘアーの子犬を思わせるようなかわいらしい雰囲気を放っているが、激しい気性を持つ危険人物である。

もう一人は麻衣——綺麗な顔をして、頭のネジが外れたような表情で相手を見ることから天真爛漫な印象を与えかねないが、信じればテロでも平気で起こすタイプである。

ミイに、麻衣。

同じ漫研の所属なのに、ちっともそれらしい活動をしないで、シャボン玉ばかり吹いている二人だった。

「シャボン玉なんてするなら外でやってよ!」

「は? 外でこんなことしてたら変態じゃねえか」

そう言ってミイが「やれやれ。愛のやつ、なに言っちゃってんだよな?」と麻衣に困った笑みを向けると、麻衣も「うんうん」とうなずく。

「分かったわ……中でしてもいいから」

愛が額に手を当てて、ハーッと溜め息まじりに言う。

「愛、『』の一字が抜けてるぞ」

「抜けてないわよ。とにかく、中でしてもいいから……原稿の邪魔しないで」

「そいつは無理な相談だ。私たちは、愛の原稿をできなくするのが目的なんだからな」

ミイが性の悪そうな表情で言う。

麻衣もすぐそれに続いた。

「愛ちゃん、私、気づいたの。授業よりも食事よりももっと大切なこと。私、愛ちゃんの足を引っぱるのが好きぃ〜って」

二人はニタァーッと笑って、愛と対峙し、肩を組む。


「ほんとに、どうしようもないクズね、あなたたち」

「バカ野郎! 世の中にはもっとすごいクズがいっぱい居るんだぞ! これぐらいのクズさ加減でこたえてどうする!」

「そうだよ! 愛ちゃんは世の中をなめてるよ!」

説教でもするかのように偉そうな二人。

愛は、痛みを恐怖によってこの二人を黙らせようかと思った。

しかし次の瞬間には怒りをおさえ、なだめるように言った。

「べつに、世の中をなめてるつもりはないわよ。でもね、マンガを描く楽しさって、今のあなたたちがしていることよりきっと楽しいはずよ? それこそ、授業よりも食事よりも楽しいって、私は思うわ」

お菓子を食べるのは同じくらい好きだけどね、という本音は置いといて。

愛が優しく言いさとすと、ミイと麻衣の表情が変わった。

「……ふーん、そうかも」

「じゃあ、たまにはちっと描いてみますか」

ミイと麻衣は大人しく席に着き、ペンを手にとった。



(つづく)