BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ゆり二次・創作短編集【GL・百合】(最終更新4月10日) ( No.85 )
- 日時: 2015/04/10 22:24
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『あいまいみー』愛×ミイ 3
「ふー……ふー……ふー……」
熱弁をふるうのに疲れ、息を切らす麻衣。
自分を作中の悪党どもにシンクロさせているのか、ド派手な花火のあとでその表情は満足気だった。
「こうして警察官となった私は、西警察署に赴任したその初日で、見事に惨殺されてしまいました。……ところが」
麻衣が再び語り始める。
「この都市では、『犯罪撲滅プロジェクト』と称して、知能をもった警察型サイボーグの開発が、秘密裏に進められていました。
その知能とは人工知能ではなく、死んだ人間のものを使うのです。人間の知能から『疑う』機能だけを取り除き、正義のために働くサイボーグにするのです。
高度な人工知能の開発で何度も失敗と実験を重ねるのに比べ、はるかに低コストで済むのが画期的な点でした。
このプロジェクトでは、人間の知能を提供してくれる殉職者の出現を待望していたのです」
絵の中には実験室みたいなところで、白衣姿の科学者らしき人物が映っている。
科学者の手により、クールバックの中でドライアイスとともに保存されていた麻衣の頭部が丁寧に取り出され、やたら無骨な鉄のカタマリと組み合わされる。
胴体部分は打ち込んだネジまで見えているような、とにかく大きな鉄板であり、足はアスファルトもゆがみそうなガタガタのキャタピラ。
手は、左がきれいな素手で、右手は麻衣のサイズに合わせた丸っこくてちょっとかわいいデザインのバズーカ砲のようになっていた。
そして頭部は生きていた時の麻衣のまま。
ただし左目にだけ、エネミーの情報を表示するためのレンズが——耳にかける形で装着されている。
「こうして私はサイボーグになったの。念願のサイボーグに!」
24時間眠らない警察官。
どんな危険な現場にも単独で飛び込んでいける警察官。
それがサイボーグコップ・マイだった。
「麻衣、あなたがサイボーグになりたいなんて聞いたことなかったわよ」
愛が心配そうな顔で麻衣に言う。
「親からもらった大切な身体をサイボーグにするなんて感心しないわ。カッコイイっていうのだけが理由なら、考え直して」
「うんん。カッコイイだけが理由じゃないよ」
「え?」
麻衣はバズーカ砲のついた右手を、胸の位置まで上げる。
先端の穴から、ドリルのようにキュルキュルと音を立てて出てきたのは——。
マンガで使われる鋼鉄素材のペンだった。
ペンを手で持つのではなく、サイボーグとして自分の身体の一部にしてしまうことで、思いのままに線が引けるそうだ。
「これで画力も上がったんだよ」
「犠牲にしたものが大き過ぎるわよ」
「うんん。いいのこれで。念願の『お絵描きサイボーグ』だよ!」
「あなたの『念願』はこれで何個目なのよ……。とにかく!」
愛が本気の表情で、麻衣の両肩に手をかける。
「初めのうちは超人的な力で街の犯罪者とかを蹴ちらして快感かもしれないけど。不死身の肉体で楽しいかもしれないけど。そんなのすぐ飽きて、虚しくなってしまうわ。それに何より、あなた、こんな身体じゃまともな恋をすることもできないわよ。だってサイボーグは人間じゃないんだもの」
「人間じゃないって、ひどいこと言うなよ」
ミイが間に入って、愛を責めるように指さす。
「でも……麻衣のお腹から下なんて、キャタピラよ?」
「そんなもん、恋人もサイボーグなら問題ないわけさ」
「やっぱまともな恋できないじゃないの」
「いいんだよ、こんな不具者も同然なやつは、サイボーグのオスでも相手にしときゃ!」
「なんで私に反論する形で前に出てきたのに私よりひどいこと言ってるのよ。……麻衣、結局のところ、ほんとの『念願』はどれだったの? 画力が欲しかったの? 警察官になりたかったの? それともサイボーグ?」
「それはもちろん画力だよ。そのために警察官になって、サイボーグになって、画力も上がったんだよ」
「だからその過程で犠牲にしたものが大き過ぎるわよ」
そう言う愛の脳裏に、先ほどの、麻衣が悪党どもからハチの巣にされている絵がフラッシュバックする。
小さい子供が見たら、トラウマになったかもしれない。
でも、ここまで強烈に印象づけるってことは、麻衣の絵は上手なのかもしれない。
普通に練習していればかなりのレベルに達するのでは……。
「じゃあ次は私のマンガを披露する番だな!」
ミイが大きな声で言った。
(つづく)