BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ゆり二次・創作短編集【GL・百合】 ( No.87 )
- 日時: 2015/04/12 20:14
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『あいまいみー』愛×ミイ5
外は既に夕暮れ時だった。
愛は校舎と校舎の間の広場に居た。
木陰のベンチに、ひとりさびしそうに座っている。
今日、初めて漫研の部室に居るのがイヤになった。
いつものことながら、ミイはひどいこと言ってくるし、バイオレンスだし……。
何より、ミイのついた嘘に動揺してしまって、恥ずかしかった。
でも胸はドキドキしていた。
だからこそ、あんなやつを好きになってしまった自分が、わけ分かんないと思ってイライラした。
下校する生徒たちが目の前を通っていく。
愛は、女子の制服がそばを通るたびに、うつむいていた顔を上げた。
瞬間——愛の頬にパチパチと泡の球体が当たって弾ける。
夕焼けの中に、いくつものシャボン玉が風に流れ、きらめいていた。
「ミイ……」
愛は、すぐ横に居る相手の名をつぶやいた。
「こうひゃをれてすぐらから……」
ミイがシャボン玉用のストローをくわえたまま言う。
——校舎を出てすぐだから、あっという間に見つかったよ。
そうなのだ。愛が今いるのは、とても見つかりやすい場所だった。
愛は何も答えなかった。ミイが何を喋っているのかは分かるけど、無視した。
「はっきはうほふいてろめん」
ミイがストローをくわえたまま、もごもごと何か言っている。
「もう、行儀が悪いからそれやめなさい!」
愛がバシッ! と指二本でミイのくわえているストローを外した。
シャボンの洗剤なのかミイの唾液なのか分からない雫が飛び散る。
「……さっきは嘘ついてごめん。愛」
ミイは叱られた子供のように小さくなって言った。
「原稿の邪魔しないようにするからさ。部室に戻ってきてくれよ」
「ミイ……」
「原稿やってる愛が居なくて、私とミイだけ残ってたらさ、なんかもう『漫研』じゃないじゃん。そんなの」
確かに、普段の部室の風景から愛を取り除いたら、二人の女子がわけ分かんないことやって盛り上がってるだけで、なんの部活か分からない。
愛はしおらしくなるミイを見て思わず笑みが浮かびそうだったが、あえて怒った表情を保ったまま言う。
「全くよ。ひとをふたなりだとか、自分は女だと思い込んでるだけだとか言ってさ。……確認しないと信じられないなら、してみればいいじゃない」
「え?」
ミイはおどろきのあまり、瞠目して、口が“ヘの字”みたいになってしまう。
顔を赤くして「いいのか?」と聞くミイに、愛は「うん」とうなずいて下を向いたまま、顔を上げない。
ミイはそっとベンチに腰かけた。
愛のスカートの裾から伸びる、黒ストッキングに包まれた太ももへ手を置く。
愛はビクッと肩をこわばらせた。
この先に待っている展開への恐怖心をあらわすように、小さな拳はぎゅっとにぎられて、スカートの真中部分に置かれている。まるで、ミイの侵入を拒むように。
「愛が女の子だっていうのは、これで分かるよ」
ミイの手が伸びてきた。
その手が、愛のやわらかくて繊細な部分に重ねられる。
愛は一瞬、胸をしめつけられるようなショックを受けたあと、ミイの体温を感じ、意識の全部が、神経の全部がそこへと集中した。
そう。ミイと重ね合わせた、自分のてのひらへと。
「こうしてみるだけでも分かるよ。愛が、か弱い女の子だってこと」
てのひらの指と指の間に、ミイの指がすき間なく入ってくる。
ミイの性格をあらわすような、ちょっと汗ばんだてのひら。
「なによ、手をつないだくらいで……」
愛は熱くなった頭でどうにか答えると、ミイの手をにぎり返す。
やわらかな手応えがある度に、危なっかしい種類のドキドキで胸が高鳴る。
「じゃあ、こっち向いて」
愛が「え?」と振り向くと、ミイの顔が近くにある。いつも以上に、これ以上なく近くにある。
「っ…………」
ミイにくちびるを重ねられていた。
自分が何をされているかは瞬時に分かったが、愛はミイがするままに任せた。
そうしてから自分の力で顔を離す。
「なにするのよ」
「いや、『つい』ね」
「もう、『つい』でしちゃダメよ、こんなこと」
「だってさー、つい盛り上がっちゃうんだもん」
ミイが「ほらね」と、勝手に納得して、また愛に顔を近づけてくる。
愛は拒むことなく、再び口をふさがれた。
(つづく)