BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ゆり二次・創作短編集【GL・百合】(1026更新) ( No.96 )
日時: 2015/10/26 22:27
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: dY22Nade)

   『ドキドキ!プリキュア』レジーナ×マナ(まこぴー?)1


___【解説】___
2013年2月から一年間放送された、プリキュアシリーズの第10弾。
今回登場するプリキュアは、キュアハート(相田マナ)、キュアダイヤモンド(菱川立花)、キュアソード(剣崎真琴)の3人。
レジーナはプリキュアと対立する邪悪な組織「ジコチュー」の側に属するが、ジコチューの野望には興味がなく、マナと友達で居たいだけ。
作中に登場する「まこぴー」とは剣崎真琴のことで、人気アイドル。
しかしレジーナは、まこぴーや立花とはあまり仲が好くない。



   ***



日曜日の晴れた日のこと——。

とある巨大なイベントホールの周辺には、既に多くのひとが集まっていた。

今日は人気アイドルの剣崎真琴、つまり「まこぴー」のコンサートの日なのだった。

ファンだと一目で分かるような、ハッピを着ていたり、Tシャツを着ていたりする集団。

やや興奮気味に、なんとなくそわそわしながら、開場の時刻を待つひとたち。


その中に、ちょっとだけ異彩を放つ女の子が居た。


ブロンドのロングヘアーに、青い瞳。そして赤色のリボンカチューシャ。

そんな明るい色彩とは対照的に、上下でつながった服は黒やグレイの印象だけれど、ティアードスカートに付いたフリルは綺麗な赤だった。

その子の関心は今日ここに集まったひとたちとは違うようで、彼女は人ごみを小走りにかき分けては、大人と大人の間から、ひょっこりと姿を現す。そして、


「マナ、見つけた!」


探していた相手をやっと見つけることができて、嬉々として言った。

「……? レジーナ? どうしてここに?」

声をかけられた相手——相田マナが、彼女の名前を呼ぶ。

レジーナは「にししし」といたずらっぽく笑い、問いには答えなかった。

どうしてここに居るのかって。

それはただ、マナに会いたかったからだ。

相田マナ——癖のある襟足にサイドポニーが特徴のこの女の子は、普段は中学校の生徒会長なんかをしているが、プリキュアである。キュアハートである。

レジーナ側からすれば本来は敵対関係なのだが、そんなことはレジーナには興味がなかった。

「今日は何して遊んでるの?」

レジーナが聞いた。

それに答えたのは、マナの隣に立つ人物だった。

「見て分かるでしょ。まこぴーのコンサートを観に来たのよ」

キリッとした顔立ちの、青いロングヘアーの女の子が言った。

菱川六花——マナとは幼なじみで、同じ中学校の優等生らしい。いざという時はプリキュアになる。キュアダイヤモンドである。

今日もマナと一緒だ。

レジーナは六花を半ば無視するようにマナを見つめ直して言う。

「私も行きたい。まぴこのコンサート」

「まこぴーよ。名前、覚えなさいよね」

六花は訂正してから、不機嫌そうに説明する。

「急に言われたって、チケットがないと入れないでしょ。今日はまこぴーが三枚だけ確保してくれたの。それだって珍しいことなのよ」

話しによれば、コンサートのチケットはレアだから、いくらマナたちが友達でも、そう簡単には手に入らないものらしい。

ところで三枚あるチケットは、マナと、六花と、そしてもう一人。

四葉ありすの物なのだが、そのありすがまだ来ていない。

「あたしもチケット欲しいなー……」

レジーナは姿勢を低くして、怪しげに目を光らせる。

ジーッと、六花の方を見つめる。

まこぴーのコンサートのチケットは、いわば、マナと一緒に居られるチケットだ。

「あたしもまぴーこのコンサート行きたい」

「まこぴーだってば!」

六花がなぜか顔を赤くする。

「力づくで奪ってもいいんだよ?」

「ダメよ」

ここでマナが仲裁に入った。レジーナを見て、言う。

「レジーナ、今日は残念だけど無理だよ」

「え?」

「また今度、一緒に遊ぼう」

マナはいつだって遊んであげられるつもりだから、その言い方はとても優しい。

でも一日だって我慢したくないレジーナは、本当に残念そうな顔をする。

「だってあたしたち……友だちじゃん」

「うん」

マナは当然のようにうなずいてから、

「ありす、まこぴー、六花も友だちだよ」

幸せそうな顔をして、そう言った。

レジーナの姿勢が急に凍りつき、悲しい表情に変わる。

ショックだった。

レジーナの友だちは、マナだけ。

だからマナの友だちも自分だけかと思っていた。

マナにとっては他の三人も友だち。

ありす、まこぴー、六花。

自分もこの子たちと同列でしかないのだろうか。


少しの間、周囲のざわめきさえも遮断されていた気がするが、六花の言葉にレジーナは呼び戻された。

「分かったのなら、おとなしく帰りなさいよ」

返ってきたのはどんな言葉でもなく、むせび泣くような声だけだった。

「うぅ……ぐすっ……だってマナ……マナ……あたし……ぐすっ」

レジーナが下を向いたまま、泣きそうになっている。

これには六花もさすがにうろたえた。

マナと目を合わせ、どうしたものかと困った顔をする。


その時——マナのポケットの中で着信音が鳴った。


「もしもし。ありす? どこに居るの?」

マナは通話口に耳を当てたまま周囲を見回すが。

聞かされた事実は、ありすの用事が長引いてしまい、どうしても来られなくなったこと。

「んー……」

マナは電話を切って、長い息をつく。

そして、ありすに同情すればいいのか、レジーナを喜ばせるべきなのか分からず、

「チケット、一枚余ったみたい」

なんとも複雑な表情で、そう言った。



(つづく)