BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Reゆり二次・創作短編集【GL・百合】(最終更新10月27日 ( No.98 )
- 日時: 2015/10/27 23:23
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: dY22Nade)
『ドキドキ!プリキュア』レジーナ×マナ(まこぴー?)2
レジーナたちは既に席に着いていた。
見上げれば果てしなく高い天井があるし、目の前には下りの階段状に並んだ座席と、まこぴーが立つことになっている舞台がある。
その舞台がレジーナの思っていた以上に遠くて、ここから見たら、人間なんか小指みたいな大きさだ。
「まこぴーって、フェアだから」
マナが苦笑いする。
つまり、たとえ友だちでも席順は他のお客さんと公平に決めたものらしい。
「いつも近くで見ているまこぴーを、どうしてわざわざ遠くで見るんだろう」
レジーナが頬杖をついてごねた。
「でもステージに立ってる時のまこぴー、すっごくカッコいいんだよ」
「そうなのかなー」
レジーナは納得し切れないけれど、マナが言うからきっとそうなんだろうと思うことにする。
席に座ってすることもないので、これまでに見てきたものを思い出してみた。
会場を取り巻くたくさんのファン。今回のライヴのタイトルがでっかく書かれた巨大な看板。物販の行列に、誰か偉いひとから贈られてきたらしい、祝いの花。
世の中には、こうやって多くのひとの目を引きつけるひとも居るんだ。
まあ、自分はマナさえ隣に居れば楽しいけれど。
そのマナの視線は、買ってきたばかりの公式パンフレットに注がれている。
パンフの中のまこぴーは、普段は見られないような表情で、ポーズで映っていて、キラキラ輝いてさえ見える。
自分がもし人気アイドルならマナは見てくれるだろうか。
もしそうなったら自分はマナのためだけに歌いたい。
他のお客さんなんてデブオタや良い歳したおっさんばかりだもの。面白くないわ。
レジーナが心の中で毒づくと、
「どしてこんな後ろの席なんだぁァァァァァッ!」
真後ろから男の太い声が轟いて、レジーナはビクッとする。
その大声がただのパフォーマンスではない、ただならぬ雰囲気を放っていたので、周りの視線が集まった。
係員がなだめにかかるのも聞かず、男は「同じCD何枚も買ったのに」とか「何回も応募したのに」とか叫んでいた。
「オレはもっとまこぴーの近くに行きたいんだーーーーーーッ!」
叫ぶ男の胸から、どす黒い色をしたハートマークが飛び出すのがレジーナには見えた。
おそらくジコチューの誰かがあの男をそそのかしたのだろう。
この後すぐ、あの男は「怪物ジコチュー」に変身し、プリキュアとの戦いになるはずだ。
真っ黒な煙が一気にあたりを包み込み、何もかもが見えなくなる。
レジーナの身体が浮き上がるように軽くなったかと思うと、次の瞬間には全く違った世界にワープさせられていた。
煙がなくなり、視界が晴れた。
見るとそこには、サイリウムが擬人化した姿の怪物ジコチューが居た。
さっきの男のワガママな感情が、こうして怪物の姿として現れたのだ。
今いる場所もジコチューの心を反映させた世界で、見えない天井や壁には、雑誌の表紙を飾ったようなまこぴーの写真や、ポスター、CDジャケットなどがベタベタと貼りつけられている。
そして既に変身した姿のキュアハートとキュアダイヤモンドが、戦意を込めた顔つきで、怪物ジコチューと対峙していた。
体長五メートルはあるサイリウム形ジコチューが、威嚇するようにピカピカ光った。
「なんでもっと良い席じゃないんだァァァァァァッ!」
大声で勝手なことをわめきながら、プリキュアに向かって拳を打ち下ろす。
プリキュアが跳躍してかわすと、轟音と共に地面に穴が空いた。
「気持ちは分かるけど、抽選なんだから我慢しなさいよ!」
宙を舞いながらダイヤモンドが叫んだ。
ジコチューは聞いているんだか、いないんだか、また勝手なことを主張する。
「まこぴーがオレを見れないじゃないか。まこぴーにオレの声が届かないジャナイカッ!」
「そっちなのッ?」
(つづく)