BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

短く長い記憶の中で ( No.20 )
日時: 2014/03/10 19:15
名前: 久留巳 (ID: bIbZMEkj)

捩野様リクエスト、『鬼白シリアス甘』!
相変わらずの低クオ( *`ω´)←
また中途半端なところから…。
えーいダメ元だ、投下!←





全てはこの言葉から始まった。

「大変です!
鬼灯様が出張に行っている間に、白澤様が神獣の生き血を取ろうとした何者かに襲われたようです!」

慌てた様子の獄卒が喋っている言葉が、頭の中で反響する。


あいつは神獣だ。
記憶喪失なんて一時的なものだろう。

そう考えていた自分が、バカだった。




目を覚ました白澤は、一言目にこう言った。

「おはよう。君の名は?」



___冗談でも抜かしているのだろうか。


しかし、それが冗談でないことは表情ですぐにわかった。

固まった私の代わりに、桃太郎が声をかける。


「白澤様!
鬼灯様ですよ!覚えてないんですか!?」
「…鬼灯…?
覚えておくよ。これからよろしく」

そう言って白澤は、また眠りについた。


……いつもこいつの記憶にすら残っていたくないと感じていたのに、いざ忘れられると虚しいものだ。



いつの間にか私は、極楽満月には通わなくなっていた。
日に日に身近な人物の事まで忘れていく白澤は、見ていてもつまらない。


…そう思うことにして。




そんなある日、桃太郎から電話が入った。

「白澤様、もう俺の事も覚えてないみたいです」

そんな一言から始まった電話の内容は、もう一度だけでいい、白澤に会いに行ってやってくれないか、というものだった。


「一番最初に忘れた奴が行ったとしても、何の効果もありませんよ」

どうせあいつにとって私などその程度の存在なのだから。


「でも…。

俺、今日白澤様の部屋を掃除しに行ったんです。
そしたら、朝起きて最初に目に止まるところに鬼灯様の写真が置いてあって。その隣に『絶対覚える。大切な人』ってメモがあって、だから…」

桃太郎が続きを言う前に、私は駆け出していた。




ベッドで寝ている白澤に、小さく声をかける、

「白澤さん」


何度も呼びかけた。

何度も、何度も。


もう50回は呼んだだろうか。
呼びかけに応じるように、白澤は目を覚ました。


「白澤さん、覚えていますか」

覚えてなどいないとわかっているのに、ほんの少しの期待を込めて、そう質問してみた。


「ほ、ずき、」

赤子が喋っているような、不安定で今にも消えてしまいそうな声。

その声は、私の脳内にしっかりと刻みつけられた。




___こいつをこんなにした奴を殺してやりたい。

本気でそう思った。

そして、こいつをこんなになるまで放っておいた自分のことも。


何故、守ってやれなかったんだろうか。
何故、こいつともっと喋ってやれなかったのか。


何故、何故、何故。


「鬼灯」

こいつはこんなに透明な瞳で私を見つめているというのに。


「もう」

勝手に体が動いた。


「もう、貴方を離しはしませんから」


勝手に動き出した自分の体は、無意識にこいつを包み込んでいた。





(___大嫌いなあいつの悪口が聞けない毎日は、こんなにも面白くないものだったのか)



END…?

あれ?
シリアス→甘のはずがただのよくわかんねえシリアスに。
まあいいか。←良くねえよ
捩野様、どうでしょう…?