BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: プラスマイナスゼロ ( No.2 )
日時: 2014/02/22 16:22
名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)

第1章  嫌悪
 第1話  保健室


 足取りが重い———
 廊下を曲がって保険室までの距離が妙に長く感じる。壁に手を添えながら、ふらふらと揺れる体を支える。先ほどから体温も少し上がってる気がする。


 その少年、沢凪 純也(サワナギ ジュンヤ)は頭痛に苦戦していた。


「くっそー、マジ痛いわ」


 授業中に席を立ったものの、付き添いを連れてくるべきだったと後悔している。一人で階段を下り、廊下を歩くのは思うより困難だった。あまりの痛さに視界がぼやけてきた。危機感を覚える。



———うわっ!


 ついには転んでしまう始末。
 立ち上がろうと床に手をついて気付いた———力が入らない。頭を殴られたような感覚に陥り、体を起こす気力がもてないのだ。純也を助ける者など今この時間いない。


 俺、何か病気かも。不治の病だったらどうしよう……。



 しかし実感が持てない。なぜなら彼は中学校3年生の今日まで1日も体調不良で休んだことがないからだ。健康には一番の自信を置いている。それなのに———

 廊下でうつ伏せに倒れる純也。だんだん意識が遠のいてきた。



「はあ、眠い……」



 保険室まであと数十メートル。授業終わりまであと27分。他の生徒からこの状態を見つけられるまで、それだけの時間辛抱しなければならないのかと思うとため息が漏れた。1月、冬のこの時期に廊下で一人。



 
やがて、瞳を閉じ、純也は睡魔に襲われた。







 目が覚めた時にはどういうわけか自分は保健室のベッドの上にいた。記憶が掴めない。誰か運んでくれたのだろうが、気付かなかった。
 頭痛は治まりはしないものの、先ほどよりも和らいでいたのがせめてもの救いだろう。薬でも飲まされたのだろうか。
 とりあえず、起き上がって仕切りのカーテンをスライドさせた。


「あら、起きたの」軽快な声が聞こえた。

「あの、……俺いつ」


「偶然ね、見つけてくれた生徒がいたの。感謝しなくちゃだめよ。
熱は38度あったから、親に今日は早退って伝えといたから」


 熱……言われるまで気づかなかった。確かに体が熱い。早退は嫌だが、仕方ないだろう。
 純也と会話している養護教諭の増野 あかりは生徒から絶大の人気を誇る美人先生だ。胸が大きい分、つい目がそちらに向いてしまう。

 ふと、隣のベッドも仕切りがされていることに気付いた。


「そこで今寝てる子なの」
「え?」

「あなたを見つけてくれた子。廊下からここまで運んできてね」
「一人で、ですか?」

「ええ。引きずって運んできたけど」


「はい!?」


 見てみると自分の制服が埃を帯びていた。ズボン、学ランが汚れている。最悪だ。


「誰ですか ソイツ」
「だからベッドで寝てる子って……ちょっとまさか」


 純也は隣の仕切りを思いっきりスライドさせた。確かにベッドで寝ている奴がいる。しかも男子。毛布を肩までかぶっている。


「てめえ」


 毛布を引っぺがし、男子の胸ぐらをつかみ上げた。本人はまだ寝てるのか気付いてない。一言文句を言わなければ気が済まない。



「やめなさいよ。恩人なんだから」
「普通引きずります?制服もこんな汚しやがって!」


「気をつけないとその子———」


 増野をよそに純也の掴む手に力が入る。
 すると、その男子の体がピクっと動いた。視線を戻すと、目を覚ましたそいつと目があった。やっと起きたか、と怒鳴ろうとした時だ。


「ひゃっ!!!」


 その男子が女々しい悲鳴を上げたのだった。