BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: プラスマイナスゼロ ( No.4 )
日時: 2014/02/22 04:02
名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)

第3話  兄弟愛


 沢凪家の家は普通の、というか一般よりやや大きめの一軒家だ。
 父親は一流企業の人事部長、母親は有名大学の教授という華々しい家庭に生まれた純也は、近頃息苦しさを感じていた。毎日毎日、言われるのは「成績はどうなんだ」「勉強についていけてるのか」ばっかりでうんざりする。ちなみに、結果はよろしくない。
 
 それに比べて兄の香哉は天才だった。何をやっても成功し、何をやってもその分野で右に出る者はいない。親はそんな香哉をひどく愛した。



——————純也は、そんな兄が嫌いだった。


「ストレスや疲労がたまってるんじゃないか、純也」
「るっせー、放っとけ」

 帰りは香哉の自転車に乗って(2人乗り)家についた。親は仕事で、夕飯の時間になっても戻ってこないことが多い。


「電話来た時は驚いたね。あの元気いっぱいな純也が倒れたって聞いて」
「ゴホッ、エホッ」

 
 午後4時。
 家についたときは純也の頭痛は悪化していた。ついには咳や目眩までして体調はかなりヤバい。
 とりあえず、自分の部屋で安静にしておこうとベッドで寝ているのだが、どういうわけか香哉まで部屋に来た。


「うちの友達に親が医者やってる奴がいるから、そこの病院に行こう。
タダで診てもらえるかもしれないよ」


「病院は行きたくない。ゴホッ、ホッ」

「どうしてだよ。薬もらわないと治らないよ?純也」
「薬なんてドラッグストアで———ダメだ。喋りたくない」


 冬の寒い気候にも関わらず寝汗をかいている。熱はさっき計ったところ38度5分あった。しかし、熱くはなく悪寒がする。
 目を開けているのもだるいのに、バカ兄貴と会話するのは無理だった。


「純也」
「う〜、うるさ……い」


 香哉はさっきまで座っていた勉強机の椅子から腰を上げた。
 
 そして体の右側を下に壁を向いて寝ている純也の背後へと回った。ベッドのふちに右膝を乗せ、右手を純也の頭の上あたりの位置に置いた。


 左手で毛布をめくり、上半身が出るようにする。
 


 また左手を純也の上着の下から滑りこませ——————


「くっ、ハァ…バカあに、き」

「感じてるの?かわいいね、こうしたら温まるんじゃないかな」


 胸の突起を指先でこねるようにいじる。
 人差し指と親指でつまみ、手の平を使って軽く刺激する。

「はぁっ、……っん」
「声、出しなよ」

「バカ、兄貴が。……死ね」
「嫌だよ〜、そんなこと言う奴は———」


 香哉は手の動きを止めた。そして純也の左耳を甘噛みする。


「やめっ———、」
「本当にかわいいな、純也は。けど熱もあることだし、今日はこの辺にしておくよ。何かあったら呼んでね」



 そう言って、香哉は部屋を出た。 
 残されたのは、はだけた服とヤラれた感触。香哉はいつからか自分の体を求めるようになってきた。



———あの野郎、いつか殺してやる。



 『ブラザー・コンプレックス』
 俗に言う過度の兄弟依存だ。自分は嫌いなのに、香哉は好きだと近づいてくる。彼には立派な彼女もいるというのに。
 親はこの実情を知らない。それをいいことにやっているのだから当然と言えばそうなる。


「風邪、早く治らないかな」


 一人っきりの暖房のきいた部屋で、純也は一筋の涙を流していた。


「クソ兄貴」