BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: プラスマイナスゼロ ( No.5 )
- 日時: 2014/02/22 13:39
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
第4話 幼馴染
次の日、純也の熱はあっさりと下がっていた。
兄や両親は(一応)心配してくれたが、受験生なため登校せざるを得ない。というか、皆勤賞を狙っている。
クラスに入ると、一番に声をかけてきてくれた人物がいた。
「おはよ。大丈夫だったか?」
「ああ、熱下がったし、頭痛も……大丈夫、多分」
曖昧な返しだったが、彼は「そう」と言って微笑んだ。純粋で幼げな笑顔。自分より少し背が低いが、顔は悪くない。いや、むしろ良い。小顔で、細い目にやや高い鼻。ジャニーズ系の顔立ちだ。髪は茶髪で短めだ。
彼の名前は白石 翔太(シライシ ショウタ)。小学生からの純也との付き合いだ。
こうしていつも自分のことを気にかけてくれている。大の仲良しだ。
「お兄さん来たんだって?」
「来たよ、クソ兄貴。親が仕事で迎え来れないからって、はぁ…」
「元気だしなよ」
「うっせー。兄貴の話は———」
「ごめんごめん、もうしないよ。純也、嫌いだもんね。お兄さんのこと」
相談や悩みごとは、いつも翔太に付き合ってもらっている。
気性が荒く、バカな純也と一緒にいる友達は多くはないが、中でも翔太は心を開ける存在だ。とても頼りになる。
そう言えば———
「昨日、保健室に変な奴いた」
「変な奴?」
触るだけで震えて、声聞いただけで震えて、逃げて。臆病な性格。
「対人恐怖症って言ってたな」
しまった、思わず漏れた。増野に言いふらさないように言われたのだが。
「悪い、今の俺が言ったって……」
「分かった、内緒にする。それで?」
「何かすげえ怯えててさ……。
それより、俺が廊下で倒れてたら引きずって保健室まで運んだんだぜ!」
「ハハハ、面白いじゃん」
「ガツンと文句言おうとしたらいきなり悲鳴上げて」
「女子?」
「男子だった」
「名前は?」
訊き忘れていた。
保健室にいたということは、体調でも崩したのだろうか。今度会ったら名前を訊いておこう。まだ感謝の言葉も伝えてない。引きずられたのは許せないが、一応というか、とりあえず。
「もしかして、保健室登校の人かな」
「は?何それ」
「授業には出たくないけど、出席はしないといけないじゃん。
そんな人は、保健室まで行けば、出席したことになるんだ。だからそこで」
「出席日数かせぐために、か。でも、そうとは言い切れないだろ」
「対人恐怖症なんでしょ、その子。だったら不登校になってもおかしくないじゃん」
「なるほど」
確かに、あの性格で日常を難なく過ごすのは無理だろう。
保健室登校———ということは、いつでも会えるのだろうか。いつでもはさすがに無理として、早いうちに礼を言っておきたい。
「ねえ、純也。今日いい?」
「え、」
こちらを見つめる翔太の瞳。
それに目がってしまえば、なぜか胸が痛い。耳が熱くなるのを感じる。
そうじゃない。決して翔太はそんな意味で言ったんじゃない。勉強ができない自分のために、家庭教師を買って出てくれているのだ。
変な気を起こしているのは——————自分だけ。
「いいよ。学校終わってすぐでいいか」
「もちろん」
沢凪 純也は、幼馴染に恋をしていた。