BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

大好きなんだから!  〜3話〜 ( No.12 )
日時: 2014/04/29 15:36
名前: やぢゃ@受験やばい (ID: k9pS0/Ff)

『あっ、はいっ』?


念のためにノックして返ってきた答えが、あの東から発せられたものか?

まさか、あのとき塗った傷薬に、母が何か変なものでも調合したか?
それとも、とうとう東が素直で純粋な男の子になることを決意したか?
はたまた、反射的に出たものか?

ノックした当の本人——雄斗は、手をドアノブにかけた体勢のまま、完全に硬直していた。

あんな素直な返事、彼はしたことがあったのだろうか。

もしかしたら、扉の向こうのベッドで、しまったと呟いたり、苦虫を噛みつぶしたような顔をしているかもしれない。

そう考えたら、急に開けたくなった。


「入るぞ」


一声だけかけて扉を開くと、そこには東がいた。

ただし、先程どうなっているかという例の、後者——苦虫を噛みつぶしたような、最悪と言った顔をしていた。

やはり、本心ではなく、反射的に出たものだったか。


「なっ、てめっ……!」


東は雄斗を視認すると、はっとした。

雄斗は学年のなかでも、かなり有名な方である。
生徒会長候補といわれるだけあり、先生からも度々、東は比べられていた。

その際、たまたま通りかかった雄斗が呼び止められ、東と面と向かって話したこともある。


「具合はどうだ」


なんてことなくスルーすると、東は不意を突かれたような表情になる。


「え……いや、だいぶいいけど……。つ−か、お前がオレを?」

「ああ。路地裏で寝て風邪引かれたら、見かけた俺に罪悪感が沸く」


「何だ、そういうことかよ」みたいな顔で、東がため息をつく。
素直に自分が心配されているのは、あまり得意ではないのだろう。対処にも困るだろうし。

というふうに、雄斗がわざわざ気遣ったわけではない。
ただ単に、雄斗自身も、素直に「助けたかった」と言うのが気恥ずかしかっただけだ。

片手に持っていた盆を机に置き、粉薬と水を手渡す。


「飲め」

「……おう」


世話を焼かれるのも慣れないのか、頬をすこし染めながら、粉薬と水を豪快にくちに含む。

苦かったのか、東は若干むせた。


「……自業自得というのを、知ってるか」

「っるせえ!// ちょっと苦かっただけだっつーの!//」


大したことではないが、完全に赤くなっている。


——可愛いな。


不意に、思ってしまった。