BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

大好きなんだから!  〜1話〜 ( No.25 )
日時: 2014/06/09 06:01
名前: やぢゃ@受験やばい (ID: k9pS0/Ff)

「やばい、やばいっ」


どたどたと音をたてながら階段を下りていくと、母がやや呆れ顔で、片手のフライパンを動かしていた。


「あんたも毎朝毎朝……飽きないわね」

「べ、べつに、やりたくてやってるわけじゃ……!」

「ほほう?」


母の横目が痛い。

仕方ないのだ。
昨日の夜目覚まし時計が電池切れ。
そもそも家の電池も切れている。

今朝は、頑張って目覚まし抜きで起きたのに。

……まあ、たしかに目覚ましがあっても、大半の場合は止めてから、またゴー・トゥー・ドリームということばかりだが。

椅子に座って、ぼんやりしながらも、制服のネクタイなどを整えていると。


「あ、ねえ、葵」

「ん?」

「言い忘れてたけどさ、再婚するから」

「そっか。
…………………………………………………………………………って、え?」


何でもないことのように言われ、一瞬聞き逃しかける。

さ、再婚?
あれだけ、葵が反対していたのに?

母に怒りをぶつけようとしたが。


「あんたが母子家庭で育ちなから、不自由させてきてるし。
ある程度自由になればと思ってね。
母子家庭の子供で、不幸にさせたくないしさ」 


葵を気遣って、なのか。

しかし、内心で葵は首を振る。

べつに、母子家庭と言われても構わない。

母はたしかにむちゃくちゃだったりするけれど、忙しいなか朝ご飯も弁当も夜ご飯も、きとんと作ってくれる。

それに、母子家庭だから不幸。
母子家庭だから不自由なんだなんて、欠片も思ったことはない。

母子家庭だから不幸なんて、そんなのただの偏見だ。

一番の理由は、やはり亡き父だった。

再婚して、普通に暮らせば、天国の父も安心するだろう。
そんな意見もあるけれど。


(僕には、父さんを裏切ってるようにしか思えない……)

「……え、葵?」

「! な、何?」


考えこんでしまい、母の言葉が耳に入っていなかった。
母はまた呆れたような表情になり、息をつく。

皿にスクランブルエッグをよそいながら。


「明日、再婚相手のひとが会いに来るか……あっ」


さいばしが、母の手から滑り落ちた。