BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

大好きなんだから!  〜2話〜 ( No.26 )
日時: 2014/06/09 12:10
名前: やぢゃ@受験やばい (ID: k9pS0/Ff)

「おは……何か機嫌悪いっすね」


背後から友人のガイに声をかけられるものの、かなりのしかめっ面で振り返ってしまったのか、彼は笑顔を引きつらせた。


「あ、ごめん。……いや、そういうわけじゃないんだけどさ……」

「おおかた予想はつくっすよ?」


並んで歩きながら、ちょっと得意げに彼は言う。

そりゃあ、そうだろう。ガイには学校生活から私生活のことまで、おかまいなしに愚痴りまくっている。

母が再婚しようとしているというのも、その愚痴のひとつだった。


「葵の母さんが、再婚とうとう決めちゃったパターンっしょ?」


「……………………うん」


今朝のことを思い出しながら頷くと。


「えっ、まじっすか?」


言った本人が、呆れるくらい驚いていた。


「冗談のつもりだったんすけど……」

「僕も冗談だったら、すごく嬉しいんだけど」


げんなりしながらぼやくと、ガイは苦笑する。


「葵、ほんとに父さん思いっすね。会ったことないんすよね?」


ガイのことばに、葵は考える。

彼の言うとおり、葵はほとんど父の顔を覚えていない。

カメラでいくつか、父が生きている頃の記録もあった。
しかし、父が撮影係、彼自身が映っているものは、ひとつもなかった。

写真から何まで、ほとんど顔が入ったものがない。

唯一、葵が生まれた頃の写真だけが、父の顔を見ることができるものだ。

父は、葵がまだ四つのときに、亡くなってしまったから。


「そんな父親でも、やっぱり父親っすか」

「うん、すごく僕のこと、よくしてくれたって、母さんも言ってたし」


父のことを話す母の顔は、はやり嬉しそうだった。

葵が転んだらすぐに駆け寄り、過保護だと言いたくなるほど、葵を可愛がっていた。
葵の行動にいつも目を向け、よいことをしたらたっぷり褒め、悪いことをしたらしっかりしかった。

このうえない父だと母は言っていたし、葵も思う。

だから。


「……だから、再婚なんて、したくない」

「まあ、それが一般論なのかも、しれないっすね」


頭の後ろで手を組みながら、ガイはぼやいた。