BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜8話〜 ( No.42 )
- 日時: 2014/12/23 14:51
- 名前: やぢゃ@受験やばい (ID: twjanxuI)
「へえ、スポーツもするんだ」
「まあ。広く浅くですけど」
照れたようすもなく、穏やかな笑みをたたえたまま、そう答える。
母が感心したように息をつくと、再婚相手——淳瀬さんが、いかつい顔をほころばせる。
このひと……笑うと優しそうなひとだな。
「葵くんは、何かやるのかい」
「……サッカーを、すこしだけ……」
ちいさな声で返事をすると、淳瀬さんがほお、と声を出す。
そんなふうに、感心されることでもないような……。
「敦也は、広く浅くと言うか、熱しやすく冷めやすいから、すこしやったら、すぐ別のものに興味がいってしまうんだ」
「そうなんだあ。意外ね、飽きっぽいなんて。しっかりしてるから、何ごともきっちりやらないと、気がすまないタイプかとばかり……。
あ、でも。決めつけちゃうから、親に『結婚できない』って言われるのかな」
「結婚するけどね」
ぼそりと、葵が悪態をつくようにぼやくと、母が軽く睨んできた。
なんだよ。
嫌なんだよ、僕は。
前々から言ってたじゃないか。再婚には、断固反対って。
父さんを裏切ってるみたいで、心苦しいし……。
膝のうえに乗っているこぶしを、ぎゅっと握りしめる。
「…………」
「どうしたの、葵くん?」
敦也、って言ってたっけ。
悪いひとなわけじゃないと思うし、実際、さっきから話してて、全然悪いひとじゃない。
だけどさ、それだけじゃ、駄目なんだよ。
そんなこと、分かってても、駄目なんだよ……。
「……ごめん、母さん」
「ちょ、葵っ?」
慌てて母さんが声をかけてきたけど、もう振り返る気になんて、なれなかった。
三人から目をそらし、椅子から立ち上がると、リビングから出て行く。
葵にだって、意見というものは、ある。
もちろん、母が葵を思って再婚してくれることは、頭では理解できている。
それだから、ガイに「嫌なら言ってあげる」と言われたときも、断った。
自室の戸を開け、それを閉めるのも忘れて、ベッドに顔をうずめる。
分かってる。
母さんの思いも、再婚相手の淳瀬さんのことも、その息子さんの、敦也さんのことも……。
みんな、良心で動いてるんだ。
母さんと結婚したいって、淳瀬さんの思いもあるかもしれない。
でも、きっと、僕さえいなければ、母さんもOKしなかった。
母さんだって……父さんが、大好きだった。
ほんとうに、愛してた。
「あー、もう……」
ぐしゃぐしゃと布団に顔をこすりつける。
ぐちゃぐちゃしたものが、胸のなかで好き勝手暴れまわる。
すごい、嫌な感じ。
布でふいてぬぐい取れるようなものなら……。
どれだけすぐ、気が楽になれただろう。
すごい、綺麗な子だった。
っていうか、めちゃくちゃ好み。
黒髪と、おおきくて、丸い黒目。
華奢なからだも、儚げでいい。ちっちゃいから、なおさらだ。何センチくらいだろ。160cmあるのかな。
なに考えてんだよとか思うけど、思っちゃうものは、しかたがない。男ってこんなもんだ。
だから、ちょっとさびしい。
悪い奴だって思われているわけじゃないんだろうけど……。
あんだけ分かりやすく拒否されると、傷つくなってほうが、無理あるわ。
彼が再婚反対だってことは、もう親父から聞いてたから、拒否されるとは思ってたけどな。
「ごめんね、葵ってば……」
「しかたない。あの歳でいきなり『再婚する』なんて打ち明けられる身になってみたら、たまったもんじゃないさ。ああなるのも、無理はない」
「いちばん、揺れ動かされやすい年頃ですしね」
そう言うと、葵くんのお母さん——蓮子さんは不安そうに、俺を見た。
「敦也くんも、そうだった?」
「あ、俺はだいじょうぶですよ。この年齢になったら、色々整理つけることに、慣れてきますから」
「そ、そう……」
「いちばんの問題は、葵くんってことだ」
親父の意見に、俺もうなずく。
まあ、あの葵くんをどう口説くかとか、ちょっと考えちゃってるんだけどさ。