BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

大好きなんだから!  〜2話〜 ( No.44 )
日時: 2014/07/05 16:32
名前: やぢゃ@受験やばい (ID: k9pS0/Ff)

「黄瀬くん」


何かをおさえるように声を震わせ、黒子が黄瀬を呼ぶ。

びくりと黄瀬の肩が跳ねるのと同時に、黒子がこちらに踏み出した。


「ずっと、待ってました」

「な、何でっすか……?」


何を訊いているんだろう。

これで、もし彼がほんとうに黒子だと分かってしまったら、どうする気だろう。

黒子はくすりと笑んだ。
嘲笑など、一切含まない。
ただ、愛しいものとしゃべり、思わず笑ってしまうような会話のなかでの、笑い方。


「分かっていて訊くなんて……黄瀬くん、そこまで馬鹿じゃないでしょう」


そう言いながら、おもむろにポケットに手を入れる。
何かをがさごそとあさる音と、黒子の歩く音だけが、体育館を満たす。


「黄瀬くんを……」


待って。


「僕の……」


止めて。

直感する。

言いたいことは分かったから、もうそれ以上言わないで。

声に出そうとしても、うまく声が出せない。

こちらの心中を知らぬ黒子は、にこりと微笑む。


「『僕のもの』にするんですよ?」


ポケットから、彼の手が引き抜かれる。

その手には、「キセキの世代」たちが体内から出した液体がこびりついた、折りたたみ式のナイフがあった。


「不用心にもほどがありました。僕だからって、油断したんですかね」


楽しい思い出を話すみたいに、くすくす言いながら。


「『簡単』でしたよ? みんな」

「……オレを黒子っちのものにするって、どういうことっすか……?」


やっと絞り出した声が問うた疑問も、訊きたかったものとは別のものが出てきた。
こんな質問、いちばんしてはいけなかった気がする。

薄い笑顔を浮かべる少年は、これまで感じたことのない恐怖を掻き立てさせた。


「分からないなら、『直接』教えてあげます」