BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

大好きなんだから!  〜1話〜 ( No.48 )
日時: 2014/09/13 15:50
名前: やぢゃ@受験やばい (ID: Z6QTFmvl)

リアルの後輩・空鴉(ハンドルネーム)リク
    氷室×紫原




電話を閉じ、氷室はひとつため息をつく。

絶対におかしい。

最近、同居している敦の態度が、分かりやすくよそよそしい。
氷室がかける電話に、あまり応答しなくなった。
なのに、彼は何度も誰かと連絡をとっているように、せわしない。

仕事が忙しいからかと思ったが、一週間の休みを得るなど、そうでもなさそうなのが現状である。

話そうにも、向こうが避けていて話しかけられもしない。
メールを打っても一切返事なし。


(潮時、ってやつかもな)


同居しはじめたとき、氷室のほうから告白して、関係ははじまった。
敦が処女喪失したのは、告白して二週間後のこと。ちなみに、このとき童貞喪失したのは氷室だ(当然だが)。

付き合いはじめたのが、新居に入ったばかりの頃だったから……三月末か。

もうすぐ、七ヶ月経つ。

これまでになかった虚無感にも似た感覚が、氷室を襲っている。


(まあ、OKした敦も、『おれ、ゲイじゃないはずなんだけどねえ』とか言ってたしな)


告ったあとに。
告っといてそれかよ、とちょっと思ったが。

ゲイじゃないということは、女も好きになれる可能性があると言うこと。

そういうこと、なのかもしれない。

当たり前と言えば、当たり前の話だ。

子孫を残すため、本能的に男女は惹かれ合い、愛を育んで、子もまた愛して。

それが普通。
同性を好きになるほうが、むしろ異常なのだ。

アメリカにいた頃だったか。

あるひとりの少年にしか好意を抱けないことで、氷室自身もゲイであることに、気づかされた。
そのときのお相手は、想像にお任せするが。

あれから何ヵ月間は、かなり悩んだ。


(結局、アレックスに『気にすんな。ひとはひと、自分は自分だろ?』って言われて、片付いたんだっけか)


思い出してみると、自分もかなり単純思考だったなと思う。

でも、やっぱりアレックスのおかげで、かなり気持ちは軽くなった。

その後は、同性しか好きになれない自分を受け入れられた。
それに、氷室の初恋相手が、小学校がおなじである少女に恋心を抱いていると知ったとき、もうそのひとは諦めがついた。

まあ、その少女が転校したことで、その恋も終わったが。

いまも、そういう状況なのかもしれない。


(……とにかく、帰るか)


もうすぐ、十一月。

氷室は、自身の『大切なこと』を忘れていることには、まったく気づいていなかった。