BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜2話〜 ( No.49 )
- 日時: 2014/09/13 16:11
- 名前: やぢゃ@受験やばい (ID: Z6QTFmvl)
(やっぱり駄目、か……)
本日十回目となる電話をかけたが、敦は応答しなかった。留守電機能もオフにしているらしい。
本日何回目か分からないため息を漏らして、家に向かって歩みはじめる。
きっと、ゲイでもホモでもない敦が、女に目覚めたらこんな感じかなと、予想はしていた。
いつか、来ることだと思っていたし。
だが、実際に現実になると、息苦しささえ覚えた。
火神の——初恋のときほど、ではないけど。
自然に、目線が下がっていってしまう。
火神のときは、普通に話せた。
でも、こちらは好きだったのに、彼の想いびとが自分でなかったことが、切なかった。
今回は違う。
食事以外でほとんど顔を合わせなくなり、素っ気なくなったその態度が。
たまらなく辛かった。
ちらっと腕時計を確認すると、もう数分で日付が変わる。
あと数分で——10月最後の日となり。
敦と付き合って、七ヶ月経つ。
かたちだけでも、「敦と付き合っている」ということが、細く残った、希望の糸みたいなものを、補強してくれてきた。
それだけが、救いとも言える。
「ちょっと、それはやく片付けてよ〜」
「しかたないだろ、スペースがいま……そっちはどうだ?」
「だいじょうぶだぜ、ゴリラ」
「酷っ」
「事実アルよ、もみあげ」
「おまえら……」
「うるさいんだけど〜。帰ってきちゃうじゃん。とりあえず、あの靴片付けてよね」
「おまえは……会社で敬語の使い方は学ばんかったんか」
「ん〜? どーだろねえ」
「……………………」
「っし。できた。ゴリラは靴頼む。おれらはこっちを……」
「そうアルね」
「うん〜」
「おまえら! おい!」
帰ってくると、やはり、家は静まり返っていた。
廊下の先にあるリビングは、漏れる明かりなどまったくない。
もう日付も変わったし、寝ていても当然、か。
(……ん?)
ふとして、玄関の床を見る。
敦は、普段のようすからは想像できないくらい、綺麗好きな面を持つ。
彼の自室が綺麗で整頓されているのはもちろん、リビング、キッチン、風呂場——あらゆるところが、入念に掃除されている。
(ただし、敦専用のお菓子箱だけはべつ)
その敦が特に気にするのが、玄関の泥や砂の汚れ。
それなのに、床には、泥や砂が、あちこちに散乱している。
(変だな。敦なら、たとえ眠くても、やりそうなものだが……)
首を傾げながら、靴からスリッパに履き替える。
自室にかばんだけ置き、リビングに向かった。
途中、敦の部屋の前をとおったが、もう眠っているのか、なかは静かだ。
ネクタイを緩めながら、リビングに入ったとき。
いきなりついた明かり、そして、なにかが爆発するような音が、氷室の感覚を満たした。