BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

大好きなんだから!  〜9話〜 ( No.54 )
日時: 2015/07/30 13:11
名前: やぢゃ@ぽんたの飼い主 (ID: EabzOxcq)

「ん……?」


重たいまぶたをゆっくり開ける。
どうやら、眠ってしまっていたらしい。窓から差し込む光は、銀色とも形容できるほど綺麗な……、

ってえ??


(ちょ、え、え!?)


いったい、いま何時だ!?

慌てて起き上がり、枕元の携帯を確認する。


『19:14』

(えええええぇ……嘘だろ……)


思った以上に寝てしまったことに、気持ちが急降下していく。
まあ当然のことながら、課題だってあるし、明日の予習とか、今日の復習もしておきたかった。

…………でも、ね。

ふいに、下の階から楽しそうな笑い声が聞こえる。
きっと、盛り上がっているのだろう。

葵抜きで。


(僕なんていなくても……)


いいのかな、なんて。

あの三人だけで、十分家族らしいし。
ちょっとよそよそしさはあるけど、向こうの息子さんと母さんも、仲いいしさ。

僕は……いらないかな、なんて。

ふと、携帯に目を戻すと、メールを着信していることを知らせるランプが、ちかちかとまたたいている。


「ガイ、かな……」


寝転がったまま携帯を立ち上げ、メールボックスを確認すると、やはりあったのは、ガイからのメール。


『差出人:町田 ガイ
 subject:
 本文:
  どんな感じっすか?
  電話してもいい?』

(で、電話……?)


送られてきたのは、4時になる数分前。
ガイの方が、もう電話を受けることができない状態かも知れないけど……。

葵はガイの連絡先を開き、軽く深呼吸をする。

ガイに電話することなんて、何度もあったけど、今回は、内容の重みが違う。
まあ、意味合いとしては、なんら変わりないけれど……。

ガイに悩みごとを話すと、それだけで心の重荷が、いくらか軽くなったような気がしてくるから。
ガイにはことあるごとに電話し、悩み(というか半分愚痴)を聞いてもらっていた。
ときには、アドバイスも貰って。

出てくれないであろうと思いながら、ガイの携帯に発信してみる。

コール音が一回響いたら。


『もしもし、葵?』

「ぷっ」


まさか、出た。たった、ワンコールで。
もう三時間も経っているのに。

吹き出したのが聞こえたのだろう、ふてくされたような声が、電話越しに聞こえる。


『なんで笑うんすか……』

「ごめん、ごめん。
いや、まさか出ると思わなかったから」


こちらのセリフに、今度はさっきとは打って変わって、自慢げな声で。


『風呂のなかにまで携帯持ち込んで、葵全力待機だったんすよ!
まさに! 全裸待機!!』

「ぷっ……、あほかっ」


やっぱりだ。
なんだかガイと話してると、落ち着いてくる。

口元に笑みをとりもどし、葵はガイとの会話を続ける。


「ふふ……。
なんか、ありがとね。いつもいつも」

「気にしないでほしいっす!
だって友だちなんすから! 普通っす」


普通の友だちって、
ここまでしてくれる子ばっかりじゃないと思うけどな……。

葵はちょっと話題を逸らし、もうひとつの悩みを打ち明ける。
すぐに家庭内の話を持ち出すのは、葵には無理だった。


「…………柴野しばのくん、分かる?」

『4組の柴野亮太りょうたっすよね、
葵がいま現在、恋しちゃってる』

「そうそう……って、え!?」


あれ、バレてる!?

驚く葵のことを、電話越しにガイが笑っている。


『そりゃバレるっすよー。葵分かりやすすぎなんすよ!』

「え、う、いや、でも……!」

『廊下ですれ違うとき、ちょっともじもじしてて、
見えなくなったら切なげなため息漏らして……。
恋だって一発で分かったっす!』


そ、そんなに分かりやすかったのかな……。
ていうか、そんなに分かりやすい反応してたっけ? いや、
すれ違うときにちょっともじもじはしてたかもだけど、た、ため息って……。


『それに気づいたのが、三週間前っすかねー』

「嘘!?」


それ、好きになったばっかりのとき……!
即行で、バレてる……。


『その後も何度か、こりゃ恋してるな、って行動が続いてね……。
気づいて三日で確信したっす』

「……ねえ、ガイ。聞きたいんだけどさ……」

『? なんすか?』

「もしかして、僕ってすごく分かりやすい……?」

『うん!』


元気いっぱいの、うん……。
そうか、そうなのか。

じゃあもっと気をつけないとな、じゃないと本人にもバレるな。

ガイの返答にがっくりとうなだれていると、電話越しに、
ガイが笑う声がした。


「ちょ、なにさっ」

『いや、無自覚であんだけ分かりやすい行動とってるなんて、
思わなかったから……、くくっ……』

「わ、笑うなよっ」

『ごめんごめ……ぶはっ』


恥ずかしい……。
なにも、そんなに笑うことないのに……!

ふてくされて黙っていると、ひーひー言っていたガイが
落ち着きを取り戻し、「あー、笑った……」と一言漏らすと。


『それより。再婚の話はどうなんすか?』


真剣味のある声で、静かに問いかける。


(え……)


ガイにしては珍しく、一気に本題に踏み込んできたな……。
いつもはこういう家庭内の話、僕が言い出すまで、待ってくれるのに。

気にしてくれてる、のかな……。


『それが気になってメールしたんすよ』


いじけた子どものような声で、ガイは話をするよう急かす。

そんなに、気にかけてくれていたのか……?

これだけ言っているのに、話をしないのも、
なんたか悪い気がしてくる。
僕は、再婚相手と、そのひとの子について話そうと、口を開いた。




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お久しぶりです。

更新サボっててすみません……。

なかなか、バンバン更新するってのは難しくなっていますが、
ちょくちょく、マイペースに更新することにさせて頂きます。

相変わらず駄文ですが、もし読んでくださっている方がいるなら、
どうぞこれからもよろしくおねがいいたします。