BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜10話〜 ( No.55 )
- 日時: 2015/08/01 18:06
- 名前: やぢゃ@ぽんたの飼い主 (ID: XM3a0L/1)
バレてる、んだろうか。
あんなふうに持ち出されるってことは。
いや、さすがにな。
あの鈍い葵に限って、そんなことあるもんか。賭けてもいい、あり得ないから。
あの鈍感ボーイ葵が、オレの気持ちに気づく日なんて、もう来ねえよ。
いまのあいつは、柴野にメロメロなんだからな。他なんて眼中にない。
恋した相手以外の人間は、どーでもいい存在だと、以前あいつも言ってた。
葵の目に、恋愛対象の人間は、どう映ってるんだろうか。
いかなる存在よりも視線を引き付け、
どんなものよりも、そいつのそばにいたいと、願うような。
そんな存在なのだろうか。
「少なくとも、オレはそうっすよ」
誰にとっても、同じとは限らない。
だが、少なくとも、オレにとっては。
誰よりも近くで、誰よりも長く、行動を共にしたいと。
そう、願う。
結局、そんなに長い間、電話はしなかった。
時間的には、だいたい二十分くらいだっただろう。
最初の十分ほどは、再婚の話。ほぼ葵の不安をこぼすだけの通話内容だったが、
ガイの明るい声と口調に、心なしか重荷がいくつかとれた気がした。
残りの十分ほどは、柴野についての相談。なにが好きなんだろうとか、
家族構成だとか、柴野のことを延々話続けた。
(やっぱガイに電話すると、なんかスカッとするっていうか、
すっきりした気分になれる)
二年四組十一番・柴野亮太。
成績優秀で、黒ぶちの眼鏡の奥で光る切れ長の目がクールな、男子。
身長は172センチと、そこそこある。
さすがに体重までは知らないけど、手足が細いから、筋肉も脂肪も、
そんなについていないように見える。
肌も色白で、インドアなんだろうなと思わせる。
背が高めの、ちょっと冷たい雰囲気のあるひとが、いまの葵にはドンピシャらしい。
(でも、なあ……)
柴野が同性愛者であるという話は、一度も耳にしたことがない。
いまのところ、柴野に普通に告っても、
引かれるか、断られるかの二択、という感じになりそうだ。
それが普通なんだろうけどな。
「もー……なんなのさあ……」
いまさら、同性愛者であることを呪うつもりはない。
だけど、
コンコン
「えっと……葵、くん?」
突然扉がノックされ、くぐもった声が聞こえる。
ハスキーな声は、母さんじゃない。
でも、再婚相手だと言ってたひとは、もっとおとなの男って感じの、
ベース級の低い声。
ってことは……。
(向こうの、息子さん……?)
えっと……敦也さん、といったっけ。
いったいなんの用だろう。
わざわざ、一階から2階にまで上がってきて。
なにか用があるなら、母さんが言いに来ればいいのに。
深く考えることもなく、葵はできるだけ明るく、返事をした。