BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜11話〜 ( No.56 )
- 日時: 2015/08/31 00:17
- 名前: やぢゃ@ぽんたの飼い主 (ID: JuyJRz6j)
「えと……どうしたんですか?」
扉の向こうにいた人物——敦也に、葵はおどろおどろ声をかける。
敦也は目を細め、にっこり微笑んで。
「蓮子さんが、ご飯だって」
「えっ、あ、はい」
たった、それだけのことなのに、わざわざ彼は、葵を呼びに来た……のだろうか。
こんなの、母さんがやればいいのに。
あ、いや。ほんとは僕が寝なきゃよかったんだけど。
軽く頭を横に振ってから、ちいさく頭を下げる。
「わざわざ、ありがとうございます」
ゆっくり頭を上げるとそこには、なぜか苦く微笑む、敦也の顔があった。
どうしたんだろう。
なにか、機に食わないことでも、したのだろうか。
「家族になるんだから、そんなに堅くならないでよ」
『家族』。
まるで心臓が、何トンもあるおもりで下に引っ張られたようだ。
ずっしり重く、胸が締め付けられ、息苦しくなる。
彼は、納得しているのだろうか。
自分を生んでくれた母親を裏切って、新しい母親をつくることを。
自分の母親を、捨てるような行為を。
妥協、しているのだろうか。
こちらを見つめる瞳は、冷静だ。
玄関のほうから声が聞こえたときも、とても穏やかで、あたたかかった。
顔を合わせて、ほんの数十分だったが、
会話をしたときも、落ち着いた印象を受けた。
冷静沈着で、物事を客観的に見ることができて、物分りがいい。
おとなにとって、都合のよいひと。
(僕には、そんなひとに見えた……)
「新しい父親をつくるのは、嫌かい?」
「っ……」
そうだ。あのときも言ってた。
葵が再婚に反対していることを、彼は知っている。
図星をつかれ、でもはっきりそうであるとも言えず、葵はきょろきょろと
視線をさまよわせる。
なんて言えばいいんだろう。彼は再婚に賛成なんだよね。
「なんて、訊かれても困るよね」
ちょっと明るい……わざと明るく出したような、そんな声。
場の雰囲気を和ませようとしているような。
敦也のほうに視線を向けると、彼は眉じりを下げて、困ったように笑っていた。
気を……遣わせてしまったかな。
「反対だっていうのは聞いてるし、別にその意見を咎めるつもりもない。
お父さん思いなんだね、きみは」
お父さん思い。
「…………あの、」
じゃあ、あなたは。
「敦也、さんは……、」
どうなんですか。
そんな言い方じゃあ、敦也さんは、まるで母親のこと、どうでもいいって……。
素直にそんなこと言えなくて、葵は途中まで言いかけて、口をつぐんでしまう。
こんなこと……出会ったばかりの葵が、言うべきではないのだ。きっと。
葵ではない誰か——たとえば、彼の父や彼の友だち——が言うべきなんだ。
こういうとき、図々しい真似はしないほうがいい。
右手をぐっと拳のかたちにして、床に視線を落とした。
————————————————————
なかなかテンポよく更新することができず、
読んでくださっている方には申し訳ない思いです。
もっと、さくさく更新できればよいのですが……。
時間を見つけて書いていきます……(´・ω・`;)