BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜4話〜 ( No.58 )
- 日時: 2015/09/06 22:38
- 名前: やぢゃ@ぽんたの飼い主 (ID: JuyJRz6j)
「お邪魔しまーっす……」
「ど、どうぞ……//」
あ。秋斗のにおいだ。
家に入ったとたん感じる、秋斗がいつも振りまいている、やわらかな、優しいにおい。柔軟剤なんだろうが。
それだけで幸せになれる。部活の疲れも、すっととれる。からだが軽くなるような感じだ。
一方の秋斗は緊張しているらしく、表情がかたい。
おまけに、自分の家だというのに、何度も段差で転びかけたり、ましてや、なにもないところでコケそうになったりと、尋常じゃない落ち着きのなさ。
さっきも言ったとおり、あたふたしてる秋斗も可愛いから、見ててにやけはするんだけど。
階段を上ってすぐの扉を秋斗が開き、光汰がじゃっかん躊躇いながら、部屋へと入る。
「お茶、入れて来るね。待ってて……」
「お、おう」
少なからず、こっちも緊張している。上ずった声で返すと、秋斗はロボットのようにかたい動きで、
階段を下り、一階まで降りていく。途中で悲鳴みたいな声が聞こえたのは、たぶん気のせいじゃない。
(どんだけ緊張してるんだ、あいつは……)
初めて秋斗を自分の家に招いたとき、そりゃあ緊張したさ。その後やることだって、お互いきっちりやるつもりだったわけだし。
でも、あんなにあたふたしたり、どたばたしたりはしなかった。……はず。
気持ちは分からなくもない。あいつ、小心者だしな、うん。
「にしても、ずいぶんとまとまった部屋だなあ……」
部屋の中央にある、白の丸い机。シーツに、しわひとつないベッド。綺麗に並べられた本棚。
他にも見たが、必要最低限のものしか置かないタイプなのか、特にこれと言ったものは出てこなかった。
整頓され、綺麗に片付いた部屋は、全体的に明るい色で、床はクリーム色のカーペット。
なんだか、ちょっとふわふわした雰囲気で……秋斗らしい。
んで。
やっぱり、こういうときは……。
「エロ本探しだろ」
声に出して言ってみると、なんとも阿呆らしい。彼女(いや、彼氏)の部屋に来てまっ先にやるのが、まずそれかよ。
よく漫画などにありがちな、ベッドの下という隠し場所は最後にとって置き、さまざまな箇所を散策する。
下の階から、かちゃかちゃと、氷やグラスの音が聞こえる。
それからいくらか探してみるも、どうやらなさそうだ。さすが秋斗。エロ本なぞ、まだ買っていないのか……。
ちゃんと成人してから、買うつもりだったんだな。えらい。
ひとりで腕を組み、あぐらをかいてうんうんと頷いていると、階段を上がってきた秋斗が、扉から顔をのぞかせた。
「こ、光汰?」
「お、悪いな、秋斗。サンキュ」
「ううん、いいの」
部屋のなかに入ってきた純粋少年・秋斗は、お盆のうえに飲み物を乗せていた。
彼は丸テーブルのところまで来ると、光汰の前に、アイスティーがとん、と置かれる。光汰と対面する位置に、自分用の緑茶を置き、腰かける。
「ありがとな」
アイスティーを手に取って、にっと笑ってそう言うと、秋斗は照れくさそうにしながらも、はにかんで。
「どういたしまして。大したことしてないけどね」
照れ隠しなのか、彼も緑茶をくちに含む。