BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜5話〜 ( No.59 )
- 日時: 2015/09/07 18:03
- 名前: やぢゃ@ぽんたの飼い主 (ID: JuyJRz6j)
「んで、この後どうすっかね?」
なにげなく訊いてみたつもりだったのだが、秋斗はなぜか、びくっとおおきく肩を震わせる。そして、視線を床にすべらせ、くちを開こうとしない。
から、と氷が戯れる。
「あ、あのね……」
やけに重い声に、光汰は秋斗を振り返る。ずいぶんと真剣な表情で床を見つめ、正座した膝のうえでは、握りこぶしが強く、握られている。
なんだ……もしかして、やることやるつもりなのか? それなら、いま、発言するべきではなかったかも……。
「大したことじゃ、ないんだけど……っ」
がちがちにかたい声と動作で、秋斗は顔を上げる。不安げに揺れる瞳はまっすぐ、光汰を見つめていた。
「は? え、いま、なんて……?」
告白されたとき、まっ先にくちを突いて出たのは、自分でも呆れてしまうほど、間抜けな声。
そして、彼の意志を、思いの確認を要求することば。
まっ赤な顔でうつむき、消え入りそうなほどちいさな声で、彼はふたたび、溢れんばかりの気持ちを伝える。
「だから、その、す、すきって……付き合って欲しい、って……い、言いました……」
ちらりとこちらに視線を上げたのは、たしか、茶道部でお茶をたてていた子だ。
柔らかい物腰と、丁寧な言葉遣い……なにより、その愛くるしい姿に、すくなからず、惹かれていた。
もともと、女が好きになれなかったから、たまたま勘違いしただけなのかと、思わなくもなかったけれど。
間違いない。
いま、彼にすきと言われて、胸が高鳴った。
彼に付き合って欲しいと言われて、顔に熱が集まるのを感じた。
普通なら同性に告白されるのなんて、きっと、反吐が出るほど嫌なはずなのに。冗談だと思いたいななんて、笑い飛ばしたいなって、思うはずなのに。
まるで、ほんものの恋みたいに。
ことばには表しがたい、なんとも不思議な気分に。
(この子、本気か……?)
「ホモなの?」
「……へ?」
(あ……)
しまった、やらかした。
茶道部の彼は、きょとんとこちらを見つめたまま、かたまってしまった。
なにを訊いているんだ……ホモだから、『こっち側』のひとだから、男を好きになる体質だから、男に告ってるんだろうに……。
きっと、俺がホモだってこと、誰かから聞いてんだろう。うちの先輩とかから。
かたまったまま、動く気配がないので、光汰は慌てて。
「あ、いや、いまのは……」
「——つまり、女の子は好きになれないのか、ってことですか?」
「…………え?」
あれ? 意外に食いついてきてる?
こちらが半ば呆気にとられてしまったが、光汰は首を縦に振る。
「あ、ああ。そういうことだけど……」
光汰の答えに、彼はすこし考えたあと、はっきりと。
「それなら、ボク、べつにホモじゃないです」
「…………………………………………え」
いやいやいやいや。
ちょっと待て。
「だって、ボク、好きだった女の子が、いますから……」
どういう、ことだ……?
思わずまゆをひそめると、彼も、不思議そうに首をひねった。
「なんで、でしょうね……。でもボク、……加藤くんのことは、すきです」
「っ……!//」
不意打ちで、胸にぐっとくる、どストレートな告白。脳天を銃でぶち抜かれるよりも、威力があったかもしれない……。
照れたように、ちょっともじもじしながら言っているのも、なおいい。可愛い。
ホモじゃないのに、男がすき?
よりにもよって、男以外はすきになれない、いわゆるゲイの俺のことが?
それ、もしかして……。
「俺だけは、すきなの?」
無意識的にくちからこぼれた、つぶやきていどの、ちいさな声。言ってしまってから、慌ててくちをふさぐが、彼には聞こえていたらしい。
またもや不思議そうな行状を浮かべて、光汰を見つめたが、やがて。
「……そう、なのかもしれませんね……」
照れくさそうに、秋斗ははにかむ。