BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大好きなんだから! 〜5話〜 ( No.6 )
- 日時: 2014/04/28 16:29
- 名前: やぢゃ@受験やばい (ID: k9pS0/Ff)
「はやくして、とは言ったけど、激しくしてとは言ってなかった」
むくれた葵が、ベッドに寝転がりながら、呟く。隣には、ベッドに腰かける敦也。
「そんなこと言われてもなあ。葵が可愛かったからだし」
「そっくりそのまま返すよ」
だいぶ疲れ切ったようすだ。無理もない。
昨日はほとんど、寝ていないのだから。
ごろんと寝返りを打つだけで、腰が痛んだ。
「痛っ」
「そんなにか?」
「……兄さんは攻められたことがないから、分かんないんだ……」
ぼそぼそとグチをこぼしつつ、どさくさに紛れて、いつか思い知らせてやるみたいなことも言う。
敦也は何を言っているかはっきりは聞こえなかったが、葵の頭をぽんぽんと叩く。
「何さ」
頬をふくらませて幼児のように拗ねる葵。
やっぱり可愛い。
「僕、今日学校あるのに……」
「送ってってやろうか?」
「……どうせお姫さま抱っこで、とか言うんでしょ」
「よく分かったな」
そりゃあ、あんたが就職するまでは、毎晩一緒に『寝て』いた仲ですから。
この呟きは心のなかだけにとどめておき、「そりゃね」とだけ答える。
敦也はしばらく葵を見つめると、立ち上がった。
いきなり距離が遠くなり、葵はきょとんとする。
「え……?」
「着替えるだけだ」
にやっと笑う敦也を見て、軽かったが、騙されていたことに気づく。
くそ、恥ずかしい……。
赤面した葵に敦也は微笑み、発言通り着替えをはじめる。
葵は寝転がったまま仰向けになり、腕を天井へ伸ばす。
むかしとはだいぶ違い、骨張った、男っぽい手になってきている。
(僕もおとなになるんだよね)
まだ高校生なのに。
だが、そう思っているのは自分だけかもしれない。
逆に言えば、もう高校三年生なのだ。
高卒で就職するひともいる。それはつまり、ある意味「おとなになる」ということなのだろう。
「僕も……」
「葵は、変わらないからな」
こちらの心情を見透かしたわけではないだろうが。
着替えながら敦也が、呟くように言う。
「葵は、いつまでも葵だ」
言わんとしていることは、すぐに葵にも分かった。
顔をほころばせ、敦也の後ろ姿に手を伸ばし。
「うん、兄さん」
大きく、頷いた。
End