BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【BL注意】ハイキュー!!リクエスト小説【R有り】 ( No.9 )
日時: 2014/06/08 03:37
名前: 悠那 (ID: PyqyMePO)

【大菅】『寂しい夜の副産物』


「…ねぇ大地、もう寝た?」

「いや、起きてるけど」

 東京遠征二日目の夜。ほとんどの部員は寝ているであろう時間に、突如菅原が澤村に声を掛けた。二人の布団は隣同士で、他に聞こえる音と言えば微かな寝息くらいなので、それが小さな声でも思った以上によく聞こえる。
 なにか用件があるのかと思って澤村は次の菅原の言葉を待ったが、どんなに耳を澄ましても菅原は黙ったままだった。不思議に思って隣を見ると、澤村のいる方とは反対側を向いた菅原の背中が見える。

「スガ?」

「…どうしよ、大地」

「なにが」

「眠れない」

 菅原は身体を反転させて澤村の方を見た。ぱっちりとした大きな目は日中となんら変わりがないため、恐らく本当に眠れないのだろう。
 一日目は疲れのせいか菅原に限らず全員がよく眠っていたが、二日目になると逆に落ち着かなくなってしまったのかも知れない。子供みたいなことを言いだす菅原を可愛く思ったのは事実だが、澤村はそれを気づかれないように落ち着いた声で答えた。

「横になってればいつか寝れるだろ」

「嫌だ」

「嫌ってお前な…」

 澤村は困ったように天井を見る。電気を消してからかなりの時間が経つため、とうに目は慣れていた。かく言う澤村自身も眠れなかったのだ。
 しかしあまり夜更かしをしてしまうと明日の練習に支障が出る。澤村は菅原を説得すべく、身体の向きを変えて菅原と向かい合った。

「あんまり遅くまで起きてると明日に響くぞ」

「えー、寝たくない……あ」

「どうした?」

 菅原はふとなにかを思いついたように声をあげた。澤村は声を低めてそんな菅原に問い掛ける。ここまで話し込んでも誰一人起きないのは、偏に部員達の眠りが深いせいだろう。
 がさごそと布団が擦れるような音がした。ふと見ると菅原が布団から抜け出している。
 澤村は自分の布団を半分めくって身体を起こした。菅原が部屋を出て行ってしまうのかと焦り、もう一度菅原の方を見る。

「おいスガ、どこ行く……え?」

 暖かい感触に澤村は思わず動揺した。何故か目の前に菅原がいるのだ。
 菅原は器用に身体をひねり、半分めくってあった澤村の布団に潜り込んだのである。

「こっちなら寝られるかも」

「違いはなんだよ、どっちも同じ布団だろ」

「大地がいるからあったかい」

 澤村はこの部屋が暗かったことに感謝した。きっと自分の顔は赤いだろうという確信があったからだ。その証拠に体温が急上昇したように身体が熱くなる。
 少し詰めて菅原の場所を作ってしまうあたり、澤村はやはり菅原に甘い。

「…入れてるか?」

「うん、ありがとな。…あのさ、」

「?」

 一瞬だけ考えこんだあと、菅原は底無しに明るく笑って見せた。

「ぎゅってしてよ」

「…え!?」

「しーっ」

 思わず大きくなった声を菅原が注意する。口の前に人差し指を立てて、どこか楽しそうにクスクスと笑いながら。
 慌てて澤村は口を噤んだが、その動揺は隠しきれそうもなかった。

「スガお前っ、寝ぼけてないよな?」

「眠くないって言ったじゃん。…駄目?」

 甘えを含んだその声に、菅原に甘い澤村が勝てる筈もなく。


(少しだけ。スガが寝るまでの少しだけ……──)






「…っていう夢を見た」

 澤村の言葉に東峰が爆笑する。此処は食堂で、これから朝食を食べるところだ。
 今朝澤村が起きてみると菅原は自分の布団で寝息を立てていて、あれが現実だとはどうしても思えなかった。

(夢だったのかな。スガ、可愛かったんだけど)

「あ、旭に大地!なに話してんの?」

 菅原が二人の方へと歩いてくる。まだ眠そうな表情だ。
 東峰はそんな菅原に今聞いたことを話そうと口を開いた。

「それがな……」

「うわ、言うな言うな言うなっ!」

「えー、旭だけずるい。どうしたんだよ」

(…やっぱスガはいつでも可愛いか)

「あのな、昨日の夜に…」

「よーし朝ご飯だ!さっさと食べて練習するぞ!」




 一瞬。ほんの一瞬だけ。
 菅原の目が、悪戯っ子のように光ったような気がした。