BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: ハイキューBL ( No.109 )
- 日時: 2014/08/09 19:51
- 名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)
まさか黒尾編だけ前後編になろうとは。
なんか急展開ですが面倒なんです。黒尾編っぽいものになります。
結局混乱したまま、言葉の意味を噛み砕いて飲み込むだけで精一杯だった俺に彼は、
「返事は急がないから。急に変な話してごめんな」
と不器用に笑って、ちょうど到着した影山と日向に挨拶していた。
影山にでさえ「何かあったんスか」と尋ねられるほど、あいつの演技は下手くそだったらしいけれど。いい気味だ。
それから、努めて何事もなかったかのように一日を終えた俺は、とてつもない疲労感を抱えながら帰宅した。
生ぬるい風を頬に流しながら足を動かすも、登校時にはあれほど軽かったペダルがやけに重くて、あーとかうーとか唸りながら家までたどり着く。
それというのも、あんなに唐突に、雑把に告白しておいて、当のあいつはそれほど気に止めていないのかそれとも強がっているのか。まったくいつもと変わりない様子で俺と接してきた。
こちらとしてはどうしたものかわからなかったから、ありがたいといえばありがたいのだけど、しかしそれはそれでどうにもやりづらい。
振り回されているようでなんだか癪だった。それに疲れた。
いつもよりも適当に自転車を停めて、鍵を抜き取る。
ジャージやらシューズやらで、重量感のあるスポーツバッグを右肩にかけて、玄関へとつながるドアを押しあけた。
「ただいま」
「おかえり大地。随分とお疲れじゃない」
「あぁまぁ、色々あって....」
「ふぅん」
興味がないなら聞かないでくれ。
わざわざ玄関まで歩み寄って出迎えてくれた母に帰りを告げて、適当に靴を脱ぎ散らかした。
吐き出しかけた悪態は喉の奥に突っ込んで、先導してリビングのドアを開けた母親の後ろに続く。
そのまま重ったるい荷物を置いて、最近買い換えた白いソファーに腰掛けた。
あー、疲れた。
「あぁそうそう大地」
「ん?」
「お友達、来てるわよ」
がちゃり。
控えめな音と共に、つい先程俺が潜ってきたドアから、誰かが。
「おっ、大地サン。おかえり」
誰かが。
「えっ、誰」
ぺしゃんこに頭を濡らした、見知らぬやつが侵入してきた。
「ったくよぉ、オトモダチに向かって『誰だ』なんて聞くかよフツー。黒尾サン泣いちゃう」
「いやわかんねーってこんな髪ぺったんこになってたら」
あとお前は友達だったのか。
もくもくとコロッケをつまみながら、現音駒主将と舌戦もとい会話を繰り広げていく。
髪が濡れているのはシャワーを借りたためらしい。俺の帰りが遅いから先に浴びさせてもらったんだとかなんとか。
机に肩肘つきながら、正面でニヤニヤと見つめてくるもんだから、居心地が悪いことこの上ない。
拒否の言葉を投げかけたところで、のらりくらりとそれこそしなやかにかわされるのはわかりきっているから、別の疑問を口にすることにした。
「なんで、ここにいる?」
「いやぁ、俺らんとこ、体育館の改装やらなんやらで明日まで休みなんだわ。んで、金も有り余ってたからこれは泊まりに行くしかねぇなと」
「まずそういう時は連絡をしろ。それから、俺は明日も普通に部活だ」
「すまんすまん、アンタを驚かせたくてな。それと、明日の部活には俺も見学さして貰えないか掛け合うつもりだから大丈夫」
これだけ突発的に衝動的に気まぐれに動いているくせに、へらへらと自信ありげに返してくるものだから、こいつはやりにくい。
本当ならば面倒くさくてしょうがないから追い出してしまいたいところなのだけど、俺の良心がそれに踏み切らせない。
あぁくそ。
「布団敷くの、手伝えよ」
「えーいっしょのベットじゃねぇのー?」
「やかましい。追い出すぞ」
おーこわ、なんてゆらゆら笑う姿でさえ様になるのは、こいつの整った容姿のせいなのだろう。イケメンめ。
悪態は心の中に、ああいいやこいつに隠すこともない。心の中に押し留めることなく、するりと喉から滑り出した。
ありがとよって返されてから、あぁこれじゃあただの褒め言葉じゃないかとようやく気付く。結構混乱しているようだ。こんな事態に置かれて、冷静でいられるのもおかしいと思うけれど。
中途半端に前編終わりです。四千文字じゃ足りないよぉ....