BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 黒大 なんかよくわからんくなった ( No.16 )
- 日時: 2014/07/13 00:31
- 名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)
遠距離恋愛というのは案外面倒なものだ。
学校が違えば休みも合わないわ、遠ければ遠いほど行き来に金はかかる。まぁたまに会えた時の感動といえば一塩ではあるのだが、俺としては毎日会いたいくらいなのに、これはどうにももどかしくてしょうがない。
と、いうことなので。
「ルームシェアをしよう」
「急にどうしたよ澤村サン」
ほぐしていたサンマを口元に運びながら、首を傾げる。妙に幼いその行動に不覚にもちょっとときめいたのは秘密だ。
話を聞いていなかったのかと文句が溢れそうになったが、そうだった先程までのはただの脳内会議だった。
半分齧り付いたカツをご飯の上にそっと載せて、口の中のキャベツを飲み込む。ゴホンとひとつ咳払いをしてから、口を開いた。
「まあつまりだな、この月一で会えるかどうか怪しい関係性がもどかしいんだよ」
「なるほど、澤村サンは俺のことが大好きだから毎日でも会いたいと」
「....まぁそう取ってもらっても構わないが」
「やべぇ、熱烈ラブコールに俺の心臓が早鐘を鳴らしてるぜ澤村サンってばこの男前」
「やかましい。するのかしないのか、どっちなんだ」
「する」
「そうか」
返事については予想通りなので特に驚くこともなければ問題もない。
まぁ他になにかあるとすれば、東京の大学に合格できるのかという点くらいだが、そこは努力次第でどうとでもなるだろう。
話がまとまったことを確認すると、残りのカツを一気に掻きこんで、シメに味噌汁をごくり。よし、ご馳走様でした。
目の前のとさか頭はまだサンマをつついている。俺が先に食べ終わるのもいつものことなので、店員に食器を下げてもらってデザートでも頼むことにした。
黒蜜わらび餅with抹茶アイス。
「そっかそっかぁー澤村サンはそんなに俺のことが好きだったんですね?」
「おいおい俺の愛情を疑ってたのか?好きでもないやつに処女寄越すほど奇特なやつじゃないつもりだけどな」
「いやいやぁ、今日の澤村サンはいつになく素直でいいね。相変わらず刺々しいけど」
ニヤニヤと目を細める姿に腹は立つものの、やはり顔が整っているせいかなんとも言えない気持ちになる。正直こいつの好きなところの八割は顔と体型だ。
....嘘、本当は六割くらい。いや、うん、五割くらいでないこともないが今はまぁ置いといてもいいだろう。
さて、と黒尾が箸を置いたところに、失礼しますとおしとやかな声。見れば和服美人が輝かしいわらび餅を運んで来てくれていた。ただの定食屋の割にレベルが高い。それと胸がでかい。
「こら澤村サン、おっぱいばっか見てるやらしい目はこいつですか」
「うるさい、男が巨乳好きで何が悪い。あ、すいませんありがとうございます」
「普通の男なら問題ないが、仮にも恋人の、しかも男の前でだぞ?流石に黒尾さんショックだぜ」
「女々しいな。いつでも俺のことが一番好きなんだろってくらいの気持ちでいろよ。事実そうなんだから」
「もうダメイケメン過ぎてどっちが上か分からなくなる好き」とかどうとか呟く黒尾はほっといて、わらび餅を一口。くどみのない甘さが中々に高評価だ。うん、満足。
瞬く間に胃の中へと消え去った餅を横目に、ごちそうさまでしたとあいさつをして。
未だに悶える黒尾を引きずって会計を済ませた。金に関してはしっかり黒尾の財布から抜き取っておく。デザートの分はおごりで。
文句を言うなやかましい。
暖簾をくぐるとむわっと生ぬるい風。うぇーと少し項垂れたトサカ頭を引っペがして、携帯端末から地図を開いた。
「よし行くぞ、次は不動産屋だ」
「えー家でゆっくりしようぜあとエロいコトしようぜ」
「後でな」
「よし早く行こう、さっさと全てを済ませよう」
早足に見せかけながらも俺に歩幅を合わせ、尚且つ道路側を歩く彼に苦笑した。あぁこんなところが嫌いになれないんだよなぁ、なんて。
早く行くぜと呼ぶ声に返事をして、携帯をしまってあいた右手で彼の左手を握る。うへへと笑って見せると、珍しく顔を真っ赤にしたあいつは俺の手を強く握った。
いざゆかん、我らが楽園へ!