BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 黒大←菅さんもやもや ( No.3 )
- 日時: 2014/07/12 18:07
- 名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)
なんとなく、薄々感づいてはいたのだ。
彼を見るお前の視線が、ほかの誰に対するとも違った色気の満ちたものだったから。
きっとお前は彼を選ぶのだろうと、そう覚悟してはいたつもりだったのだけど。
「やっぱつれぇなぁ」
誰もいない中庭に腰を下ろす。だらだらと暑い夏の空の下、園芸部が育てるオクラがそろそろ食べごろに見えた。
ひとつため息をついて、寝転がる。手を伸ばしても届かない雲と彼の姿が重なって、涙が浮かんだ。
嫌にポエミーな表現だけれど、なるほどしかし、感傷的な気分になると多少してき表現に身を投じたくなってしまうものなのだな。
くだらない考えと共に溢れそうになる涙を袖で強く拭うと、ひりひりして逆に泣きそうになった。
「まぁ、」
選ぶっていうか、もともと俺のことはそういう対象として見てなかったんだろうなぁ。
一方的で、その割脈ありげで、諦めにくい鬱陶しい恋だった。
めんどくさくてやめてしまいたくてでももうちょっとだけ、そう思えるようなめんどくさい恋だった。
甘酸っぱくて典型的で、少女漫画なら主人公なんじゃないかなんて思えるような、そんな恋だった。
あとはー、あぁもうネタ切れ。
「俺のが歴長いんだけどなぁ」
もちろん彼を好きになった歴が。
彼に好きになられた歴は依然として0年0ヶ月0日だけど。
ぽっと出のくせに、あのトサカ野郎。今度会ったら水でもぶっかけてしんなりさせてやろうか、なんて。想像してくすりと笑って、その後の彼の表情を想って溜息をついた。
オクラの葉をもそりもそりと這うイモムシに少しびっくりして、ごろんと右に一回転。陽にさらされた草がいい絨毯だ。
溜息がまたひとつ。見上げた太陽がようしゃなく照りつけて、干からびそうだ。
恋愛感情で、セックスとかキスとかしたいっていう意味で好きだって言った時の彼の顔は、きっと一生忘れられない。とても見ていられないほど歪で、哀しげだった。
特に言う決心が固まったとか、嫌われる覚悟ができたからとかそんな理由で言ったわけではなくて、なんとなくぽろりと、首をもたげたそれに感情を支配されて、そのままぼんやりと、ただぼんやりと話は終わっていた。
何を話したのか、鮮明には覚えていないのだけど。
あいつがよくて、俺がダメな理由がねぇべなんて身勝手なことを、いくつも何度も口にした。気がする。いや、した。
一つ一つの言葉を投げかける度に傷ついていくのが目に見えるようで、視線を地面に向けた。
やめてくれと、もういいだろと、彼の声はとてもじゃないけど弱々しくて、溢れだした醜い恋心を塞き止めるには全く足りなくて。気づけば目の前に、彼はいなかった。
こんなはずじゃなかったとつぶやく声は意外に冷静だった。膝をついて地面を強く打ち付けて、それでも心は冷えきったままで、熱くなった拳だけがいやに記憶に残った。
あーあ。
「明日からどうすんべ」
ぼんやり閉じたまぶたの隙間から、汗が一粒溢れた。