BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【BL】居候が無駄に可愛い件について。 ( No.12 )
- 日時: 2014/09/02 19:09
- 名前: 優斗 (ID: ???)
ふてぶてしく煙草をつける先輩。
そして、俺は今とても泣きたい気分だ。
「…どうした…」
「俺の弁当。見間違えじゃなければ…銀色の梅干しが入ってるんスけど…」
背中を擦られながら、俺はうつむき肩を落とす。
昨日は突然の申し入れに藤堂さんは驚きながらもいいと言ってくれた。その時、とても嬉しかった。
でも…あの人が何も出来ないなんて知らなかったからなんだろうな…それを今日、身に持って知る。
先輩…荒田先輩はヘビースモーカーでちょっと気が荒い。名前だけに。でも、優しいのでコンビニに寄ってくれる。ハンドルをきりながらふがふがと煙草う動かし俺の弁当を笑っている。
そりゃそうだろう。
トラックの窓から入る光りをキラキラと反射して輝くご飯の上の五百円玉。もし、親から貰ったお弁当を開けて五百円玉と白米だけだったら。そう思うとどこか悲しくなっては来ないだろうか。俺の場合は見ず知らずのおっさんだけど。
顔に似合わず可愛い顔文字とごめんね?と書かれたメモ。見れば見るほど腹が立ってくる。
「…はぁ…」
「いいじゃねーの。お茶目で。俺のオカンはあれだぞ?高校の時、俺が煙草吸ってんの知って煙草とエロ本の切り抜き。おかずでしょ?って馬鹿!」
…そんな笑い話。今の俺には効きませんよ。つーか、聞きません。聞こえませーん。
急ブレーキで止まるコンビニ。入店音と有線の音楽。そして冷え冷えのアイス売り場の前。先輩は早々と週刊誌のコーナーへ。俺は惣菜等のコーナーへ走る。
急ぐ俺を見てなのか、慌てておにぎりを並べ終わりにっこりと営業スマイルと「いらっしゃしませー」というマニュアル通りの接客をする女性。高い所に背が足りなくて困るお婆ちゃん。
「どうぞ。」
照れ笑いながらお婆ちゃんに筑前煮を取ってあげてお婆ちゃんは曲がった腰を更に曲げてお礼をいう。こういうちょっとしたいいことが地球温暖化を防ぐとかよりいいんじゃ無いのか?人間が冷たくなっていく一方だ。
ニヤニヤしながら週刊誌を片手に先輩は俺を見る。…なんだよ。やんのか。
とは言えないでさっきのお婆ちゃんと一緒の筑前煮。これ美味しいんだよな。冷たいけど、ご飯にのせると少しだけ暖かくなって…って、ご飯も冷たいのか。
冷たい筑前煮とチキン。それから、先輩の週刊誌。何故か俺が払わなくちゃいけないんだよ。コノヤロー。
「お前を運ぶ送料だ。」
「寄ってもらわなければ良かった…」
俺らの会話を聞き流し、手の上に小銭とレシートを置かれ少しイラッとする俺を店員は笑顔で見送った。
それから仕事は順調に終わり、家についた俺。
先輩は新しい煙草を咥えて手を振る。
合鍵を貰い中に入るけど…なんか慣れないな…
悪いことをしてるみたいな感覚に襲われるわ。
入ってすぐの扉には広い浴槽。その次のドアには食料庫。パスタやワイン、果物に缶詰。まあ色々と置いてある。その横にはトイレ。
螺旋階段を上り、藤堂さんの部屋。スーツとかネクタイ…あと、靴下。着るものが沢山と大きなフカフカのベッド。憧れるな。こんな部屋を持ってて。
そして昨日俺の部屋になった部屋。
ざっと十二畳ほど。ベッドと照明、貸して貰った携帯の充電器とまだ殺風景な部屋だ。
一昨日ほどにローンを払い終わったらしく。とてもいい家で羨ましいです。
「…さて。」
ブカブカのTシャツの上にエプロンを巻き、早速晩飯の準備に取りかかる。でも、何も冷蔵庫の中には入っていない。仕方なくパスタと少しあったソースでその夜は腹を膨らませた。
「…ただいま…」
「おかえりなさいー。」
出迎える俺に藤堂さんは目を伏せた。
「…どうしたんですか。」
「い、いや…下…履かないのか?」
…え?
何言い出すんですか…俺まで赤くなってしまったでしょうが!マンションの癖が抜けなくて!とは言えず。
「え、あ、その…」
「上にズボンあるから。それ履いてて。休みの日にでも買っておいでよ。」
助けてもらってばっかりだよ…
何か恩返しがしたいと…思ったのは今日だけじゃ無いはず。
テレビの音と俺の走る足音が重なり、藤堂さんのパスタを啜る音が消えた。