BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: デュラララ!! シズイザ小説!?【BL】 ( No.100 )
日時: 2016/01/16 10:00
名前: 夢埜 ◆okR9D5EASs (ID: hVBIzJAn)

最低で最悪な 二日目 Ⅳ

 部屋の中は想像していたよりもきれいに整理整頓されていて、なんだか落ち着かない気持ちになった。玄関までは来たことがあるが、部屋の中にまで入ったのは初めてだ。ノミ虫が生活しているせいか、この部屋の空気を吸っているだけでイライラと鼓動が早くなって行く気がする。
「さっきから思ってたんだけど」
 ドキリ、心臓がはねるのが分かった。なんとなく臨也と顔を合わせたくなくて、周りを見るふりをして、返事はしなかった。臨也はそんなことを気にしたそぶりも無く続ける。
「その耳さあ、帽子とかで隠そうとは思わなかったわけ?」
 答えない。しかし、ついそらしていた目を前に向けてしまい、こちらを見ていた臨也と目が合った。ドクン、と、また心臓が音を立てる。気がつくと、臨也の手がすぐそこにあった。心臓がうるさいほどに不快を訴えているのに、俺はその腕を払いのけることができなかった。
「……ひぁっっ……!?」
 臨也の手が耳に触れたとたん、変な感覚が身体をつきぬけて、今まで聞いたこともない声が口から漏れる。顔が急に熱くなると同時に呪縛から解き放たれたように、一気に、そして大きく跳びすさった。
「へぇ、ここ、弱いんだ?」
 臨也がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて近づく。俺はそこから目が離せずに、じりじりと後ずさることしかできなかった。しかし後ろをろくに見ていなかったせいで、ソファにぶつかってその上に倒れこんでしまっう。もちろんあの臨也がそれを逃すはずも無く、その場に追い込まれる。
「にゃに……する気だ」
 ようやっとしぼり出せた言葉はそんな気の抜けるようなもので、今の状態が悲しく思えた。だがこいつに弱みを見せるわけにはいかない。すでに手遅れのような気もしたが、それでも俺は目の前を強くにらみつけた。
「何って、言ったでしょ、遊んであげるって」
 それこそなんなのかよく分からなかったが、嫌な予感がして逃げようとする。だがあいにくとここはソファの上で、後ろは背もたれ、左右は肘掛、前は臨也と、逃げる場所などありはしなかった。いつぞやのように上へ逃げようにも、部屋から出ることはかなわないだろう。
「だめだよ、逃げたりしたら。おにごっこをするわけじゃないんだから」
 そう言った臨也は、やけに楽しそうだった。

Re: デュラララ!! シズイザ小説!?【BL】 ( No.101 )
日時: 2015/06/24 16:38
名前: 夢埜 ◆okR9D5EASs (ID: hVBIzJAn)

最低で最悪な 二日目 Ⅴ

 理性を取り戻したのはいつだったか分からない。体力を使い果たして眠ってしまったらしく、夕方に目を覚ました頃には身体がひどくだるかった。どうにも身体を動かす気になれず、その場に寝転んだままぼんやりと視線を宙に浮かせていた。
 ふと腕に重みを感じてそちらに視線を移すと、眠っている男の顔が映った。さらりとしたつやのある黒髪。まぶたのふちを飾る長いまつげ。すっと通った鼻筋。形の良い唇。シャープな線を描く細いあご。眉目秀麗とはこういうことか、と思わず納得してしまうような顔だった。
 しばらくの間その顔を眺め、やがてそれが自分の宿敵だということに気がつく。だが、だからといっていつものように怒りがわくわけでもなく、普段の他人を挑発するような笑みからは想像できない穏やかな笑顔を見つめ続けた。
(何で俺には、そんな顔をみせねぇんだよ)
 ただひとつ、理由の分からない苛立ちを抱いて。

Re: デュラララ!! シズイザ小説!?【BL】 ( No.102 )
日時: 2015/07/13 09:21
名前: 夢埜 ◆okR9D5EASs (ID: hVBIzJAn)

最低で最悪な 二日目 Ⅵ

 臨也が二人分の夕食を作り、それをあいつと二人で食った。もう時間が時間だし、せっかくだから食べていきなよ、とあいつが言った時、イラッとして殴り飛ばしてやりたくなったが、その手の上にすでに料理が乗っていることに気がつく。それを見て、食べ物に罪は無いと自分の中の怒りと暴力を必死に押さえ込み、おとなしくテーブルに着いた。
 夕食の時間は驚くほど普通に終わり、何事も無く無事に帰れるかと思ったときだった。
「シズちゃんさ、……今日、泊まってかない?」
「……は?」
「ほら、そんな格好じゃ帰るのも大変だろ? 明日もう一回来るよりも、そっちのほうが合理的だと思って」
 確かに臨也の言うとおりかもしれないが、正直あまり気が進まない。またあんなことをされたら、と思うと、少し怖く感じる。しかし……
 しばらく考えた後、答えるべく顔を上げた。するとこちらをじっと見つめていた臨也と目が合って、かっと顔が熱くなる。
「それなら……その、泊まってっても……いい、か?」
 しどろもどろになりながら言うと、臨也はにっこりと笑みを浮かべた。その顔は少し前に見たような嫌味の無い笑顔で、少しどきりとする。
「じゃあ、それで決まりね。あ、今日のうちにトムさんだっけ? その人に電話しておいたほうがいいよ。どうせ明日も行けないから。明日は電話のひとつもできないんじゃないかな」
 てきぱきと準備を始める臨也にあっけに取られながら、携帯電話を取り出す。なにか違和感を感じた気がしたが、それもあっという間に流れてしまった。