BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ○奇病シリーズ〜立花仙蔵 篇〜 ( No.7 )
- 日時: 2015/03/04 17:16
- 名前: ナノハ ◆6lxp.HdbLA (ID: wQq6g6Zh)
※.少々特殊設定有り。乱ちゃん不在。なんかの捏造。グロテスクまでとはいかないですがモドキ。伊作視点(ちょくちょく変わるかもしれない)。伊作テラ酷ス。伊作・仙様好きな方スミマセン_(._.)_
仙乱←伊作な感じです
カオス文
———
「まだ治らないのかい、その左目」
「ああ。日が経つ程症状が酷くなっていく」
ほら、と弱々しい声と共に差し出された左腕には刺の生えた蔓が絡まっている。
蔓は左腕に生えているのではなく、左目から生えた蔓が成長し過ぎてしまい腕に絡まってしまっただけなのだ。
嗚呼、何て醜い顔なんだい仙蔵。左目に紫の椿を咲かせた人間なんて最早人間ではない、化物だ。
同室の文次郎も、長次も、留三郎も、小平太も、何故誰も気味悪がらないのかと不思議に思う。他の六年や先生方はましてや異端だと非難するのに。
「本日の定食に珍しく魚が入って無かったが」
「授業の終わる前、食堂のおばちゃんの代理で山田先生が、食糧庫に山賊が入って魚をまるごと盗られてしまったから本日の定食は魚抜きだって言ってたじゃないか。聞いてなかったのかい」
「途中気分が優れなくなったのでな。保健室で休養を摂らせて貰った」
「道理で午後の実技の授業で仙蔵の名前が呼ばれないと思ったよ」
流石天才様は何をやっても許されるんだな。
少しでも魚を食べないだけでこんなにも酷くなるのか。と僕は皮肉と疑問に思った。
仙蔵が奇病と呼ばれる難病に掛かってからヤケに魚を食べたがるようになった。
左目に妖しく咲く椿。それは仙蔵の命を糧に、日に日により美しく色濃く成長していく。花弁の数が日数を表している。
治療法は一つ。どの種類でもいい、魚を食べると花が散り元通りの目に戻るとアイツは言っていた。どうやら魚が奇病を治す妙薬らしいが、あくまで発症を〝抑える〟、つまり花の成長を一時的に止めるだけで次の朝になればまた元通りに咲いているのだから。
毎日魚を食べても無駄だというのに。いい加減諦めればいいものを。
なんなら僕が一瞬で治してあげようか?奇病とやらが無くなる代わりにそのご自慢の綺麗な顔が誰もが見たら瞬時に吐き気を催す程ぐちゃぐちゃになるけれど。
「このまま治らずに私が死んだら、乱太郎は悲しんでくれるだろうか」
「さあ。その時にならないと分からないよ」
「そうか」
「大丈夫だよ。乱太郎は優しい子だもの、きっと泣いてくれるさ」
「だといいのだがな。もし私が死ぬ時は此の瞳をあの子にあげようと思う。死んだ私の代わりとして大事にしてもらうよう渡そうと思う。積もりに積もった恋慕の言乃葉も添えてな」
「なんなら僕が仙蔵の代わりに乱太郎に手渡してあげようか?」
「いや、私直々で手渡すさ。その方が乱太郎に私の気持ちが伝わり易い
だろう」
させない。させるものか。
どちらにせよ乱太郎に手渡してしまえば、一生あの子は仙蔵以外の人間を見なくなる。仙蔵を想い続ける。
そうなる前に僕が千切って散らして踏ん付けてその忌々しい香りすら残らぬよう跡形無く灼いてしまえばいい。
仙蔵。お前が死んでも僕が最期まで、ううん、未来永劫乱太郎を愛してあげる。仙蔵だけじゃない、留三郎や小平太、文次郎に長次、他の事を考えられない位どろどろに甘やかしてあげるし、仙蔵の代わりに乱太郎から愛されてあげるから。
散々乱太郎と愛し愛されてきたんだから、もう心残りは無いよね?安心して逝っていいよ。
ああ、どうせ死ぬのなら遠回しなやり方で殺してあげないとね。仙蔵が僕特性の睡眠薬で眠って貰っている間に
最期に乱太郎の姿を見る事のないよう両目を刳り貫き、
乱太郎に助けを求められぬよう愛を囁けぬよう喉を焼く薬を流し込み、
乱太郎に近付けぬよう両足を切断し、
乱太郎の温もりごと抱き締めれぬよう両腕を切り落とし、
嗚呼、きっと乱太郎への恋慕から乱太郎を一目見る事無くじわじわと死んで逝く絶望に変わった時の仙蔵の顔は、椅子はおろか机さえ引っ繰り返る滑稽さだろうね…!
「伊作?」
不思議そうに此方を見詰める仙蔵。
今僕が考えている事を知ったら一体どんな反応するだろうね?
卑怯者と言って僕を軽蔑するか、それとも、乱太郎を頼むと言って僕に乱太郎を託すのか、間違いなく後者は有り得ない。
友人だと思われてもこっちは一度も仙蔵の事を友人だと思った事はない。ましてや仲間でもないんだから。
仙蔵と云う男は、武家出身故か品行方正で、容姿端麗・頭脳どちらも恵まれた正に〈高嶺の花〉と云っていい程の完璧さを持ち合わせている。
文次郎達は勿論、教師達からも一目置かれ、お昼どきや放課後になればくノ一達が仙蔵が教室から退室するのを見計らっては黄色い声をあげ贈り物や恋文を押し付け群がるのはしょっちゅうの事で、だがそれは仙蔵の〝裏の顔〟を知らないからそんな真似が出来る。無駄だというのに。
見ちゃったんだよ。皆の目の届かない場所から仙蔵がまるで塵芥を見る様な眼差しで山田先生達の事を鬱陶しそうに見据えていたのを。
見ちゃったんだよ。〝直ぐに群がる品性の欠けた女狐なぞ御里が知れる…二度と会いたくないし、声も聞きたくもない。一瞬たりとも目線を合わせてみろ、不快感で全身粟立つわ〟ってブツブツ不満を呟きながら、折角の贈り物を焼却炉の中に躊躇なく放り込んでいたのを。
奴は自分より劣る者を貶しめ相手そのものの価値や能力の可能性を粗探しする。僕も一年の際に仙蔵に粗探しされた被害者だ。
——そもそも何故お前みたいなやわな人間が目指そうとする。六年に昇格すれば実習は更に過酷になるんだ。悪い事は言わん、命を落とす前に早く此処(学園)から去ったらどうだ?——って鼻で笑いながら。
どんなに頑張っても忍術の基礎すらロクに覚えられなかった僕の気も知らないで。
当然僕以外にも被害者はいた。そいつ等も僕と同じ仙蔵の言動でプライドをヘシ折られ忍の志を消沈した挙句ほぼ全てが退学していった。4学年まで耐え忍んでいた者もいたけれど、結局5年生に上がる前に辞めちゃった。そして今現在の六年に上がった時には僕と小平太と文次郎と留三郎と長次と、それから仙蔵の六人だけになってしまった。
此処まで耐えてきた僕は本当に凄いと自分で言うのも何だが感心してしまった。今更ながらだけれど、次々と辞めていった者達が少し気の毒に思えてきた。そんな安っぽい憐れみとか、偽善に聞こえてしまうだろうけど、心の底からちゃんと思ってるさ。
当時の僕は、今と比較して有り得ない位弱虫で泣き虫で武器一つまともに扱えなかったのに、退学しようとしなかった事が今思えば奇跡だったかもしれない。今の学年に上がると仙蔵の粗探しはすっかり止んだ。今は、「伊作、一緒に図書室に行かないか」、「相談に乗って欲しい事があるのだが」って友達同然に普通に話しかけられている。今更話し掛けるな。気持ち悪い。
今思えば、もしあの時退学していたら薬の知識は今より浅かったかもしれないし、保健委員会で知り合った一年は組の生徒『猪名寺乱太郎』と出会えなかったかもしれない。僕が愛する乱太郎は仙蔵には無いものを持ってる。不運な性質な僕が些細な事に失敗すると気遣いの言葉を掛けてくれる。笑ったりはするけれどそれは乱太郎自身も失敗を分かち合っているからだ。
駄目な僕を乱太郎は仙蔵の様に嘲笑ったり否定したりしないで、寧ろ全てを受け入れてくれる優しい子。そんな幼子に僕は恋をしたんだ。
仙蔵は高慢な反面、自分が美しいと思ったモノや欲しいモノを一度狙ったら蛇の如く執念深く求め続け、しかし手に入ればそれきりだ。結局彼の性格は表面も裏面も身勝手・自己満足に変わりはない。
今回彼が目を付けた僕の乱太郎もその内に含まれており、今現在は何をしたのか難なく手懐けてしまった。
お前はそんなに僕から大事なモノを奪いたいのか。やっと手に入れた幸せをまるで自分が得たかの様に見せつけるな。返せ、乱太郎を返せ。
下級生に興味を一切示さない仙蔵が何故そこまで乱太郎を溺愛するようになったのか。乱太郎の優しい性に絆されてしまったか、はたまた僕が乱太郎に恋心を抱いているのを承知で乱太郎に近付いたのか。
だがどうだっていいさ。今までの恨みを自らの手で晴らす事が出来るんだから。仙蔵が乱太郎に近付く理由なんて知ったことではない。
ありがとう、五年まで散々僕の事を貶め虐めてくれて。
ありがとう、お前が奇病に掛かってくれて。
ありがとう、お前が僕に仕返しの機会を与えてくれて。
ありがとう、僕に乱太郎の恋人になる特権を譲ってくれて。
有難う。本当に有難う。仙蔵には本当に感謝してるよ。
ああ、友人でも仲間でも何でもないとは言ったけど撤回するよ。
〝今だけ〟は、ね。
「んー?なんだい、仙蔵」
「さっきから入口に佇んだままだぞ、入るなら入ったらどうだ。それに途中から呆けているが具合でも悪いのか?」
「そんな事ないよ。保健委員長たるもの病に侵されるなかれってね」
「まるで文次郎の様な言い草だな」
「いやだなぁ。あんな暑苦しくギンギン喚いてる自称〈忍術学園一忍者〉のあいつと一緒にしないで欲しいな」
「別に不快にさせるつもりはなかったのだが」
「そう?それより、顔色が優れていないな。少し横になったらどうだい?」
「色々とすまんな」
「謝らないで。同じ学年の誼じゃないか。それより苦しいだろ?今鎮痛剤を持って来るから」
「頼む」
馬鹿な仙蔵。あっさり僕の云う事聞いちゃって。今から僕がお前を殺そうとするのに、殺気すら見抜けないなんて。見抜けなくても警戒はしておいた方がいいのに。まぁ、「頼む」と言った時点で後の祭だけどね。
あの時の、忍は喩え同士であろうとも常に警戒しろって偉そうに大口を叩いていた威勢は何処へいったのさ。
僕が薬を探している間は精々遺言なり考えておきなよ。そう制限時間は長くは与えてやれないけれど。
医務室の隅に置かれた箪笥の一番右下の引き出しを開ければ直ぐに自作の薬が見つかった。二つある内の蒼の小瓶を手に取り仙蔵の許へ向かう。
さぁ、いよいよ死の覚悟は出来たかな?
「お待たせ。さ、飲みなよ」
仙蔵は黙って頷き、蓋の開いた『鎮痛剤』、否——『睡眠薬』を受け取り一気に飲み干した。
僕の調合する薬の効き目は恐ろしく早い。だから仙蔵が意識を手放すのもそう時間は掛からなかった。
「さて、と」
咄嗟に懐から取り出した苦無を片手に仙蔵の胸辺りで跨いで左目に咲く椿の根元に先端を宛てがった。
さあ、誰も居ないうちにさっさとこの高慢ちきを始末しなければ。
目が覚めた時のお前の姿が楽しみだよ。
——サ ヨ ウ ナ ラ セ ン ゾ ウ
処理が終わったら乱太郎と団子を食べに行こうか。
———
きっと一年の時に色々事情があったんだよ:(;゛゜'ω゜'):
診断元:奇病にかかったー
お題:立花仙蔵
診断結果:立花仙蔵は左目から紫色の花が咲く病気です。進行するととても惚れっぽくなります。魚の涙が薬になります。