BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 体温 ( No.6 )
- 日時: 2015/03/22 09:01
- 名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
◆ 第一話 其の男 ◇
来る四月五日。
波木高校の入学式である。何日か前からクラス発表はされていたし、見にいく時間は沢山あったが見には行かなかった。入学式に学校に行って確認するんだから事前に見る必要はない、二度手間だ。
そう言ったら、おれが現在住まわせてもらっているこの家の人間、柊桜夜さんに苦笑されてしまった。
鳥居の近くで、地面に舞い散った桜の花びらを箒で掃いている彼を見つける。どうも、行ってきます、と挨拶すると彼は手を止めて
「ああ、おはようございます。ご入学おめでとう。制服、似合ってますね」
にっこりと笑った後、おれの頭を撫でてくる。
うーん、もう昔会った小学生の頃じゃないんだから、頭撫で撫ではやめてほしいところだ…。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
それからぱたぱたと手を振っておれのことを見送ってくれる。おれはぺこりと頭を下げて鳥居をくぐる。この辺りは神社の力が強いのか、幽霊の影は見当たらない。中学まで住んでいた実家の辺りは、勾玉を持っているからこそはっきりと姿は見えなかったものの、幽霊らしき黒い影がうじゃうじゃと漂っていたので、とても晴れ晴れとした気分で生活できている。小さい頃は幽霊を人間と認識していたために怖いと思ったことはなかったが、そいつらが幽霊だという現実を突き付けられたあの時から、少しだけ幽霊という存在が怖いと感じるようになった。恥ずかしながらホラー番組を見てガセだなと思いながらも少し怖くなってしまうことはある。畳のシーンなどで髪の長い女がじわじわとこちらに向かってくるシーンなんか見たときは、正直一人で眠れないくらい怖かった。
そんな思い出を頭の片隅から引っ張り出していたら、もう学校に辿り着いてしまった。本当に近いが坂や階段があるのが疲れる。三年も通えば慣れると思うけど。