BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 体温 ( No.7 )
日時: 2015/03/25 10:09
名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)

 『入学式』と書かれた大きな看板の隣でキャーキャーと写真を撮っている女子の横を足早に通って、校門をくぐり、すぐそこに置かれているクラス表の張り出しを見つけた。一学年六クラス、そのうち一つが芸術クラス、もう一つが体育系クラスらしい。おれは平凡な普通クラスなので、A〜D組の表を必死に目を凝らして見る。『近江』という苗字はなかなかに探しやすい。上の方をパッと見てなければ次のに視線を移せばいいのだ。これが真ん中の方の、タ行とかナ行だと面倒なのだろうなあ、と思う。現に隣で眼鏡の真面目そうな男が、「田中…田中…」と顔を近づけて探していた。
さて、あった。C組六番、近江将司。玄関前の受付でクラス番号名前を言わなければいけないらしいので、小さく口に出しながら受付の列に並ぶ。ざわざわと沢山のクラスと番号と名前を言う声が聞こえる中、列はどんどんと進み早くもおれの番だ。
「ええっと、クラス番号指名、どうぞ!」
新任なのかそういうキャラなのかわからないが、白いスーツを着た小柄で若いポニーテールの女性教師がおれの顔を見ながら緊張したように言ってきた。そんな彼女の緊張が伝わったのか、おれの鼓動も少しだけ早くなる。
「えー、一年C組近江将司です」
少し声が上ずった気がしたが、気にしない。
「あっ、C組なんですね。わたし、担任です! よろしくね」
はにかみながら微笑んで彼女は言った。はあ、どうも、と返しておれは玄関へと歩き出す。変に長話したら後がつっかえてしまいそうだ。
下駄箱はロッカー制で、暗証番号を決めて入力すればロックがかかるシステムになっているらしい。なんてハイテクな。下足ロッカーにラブレターが入っていて朝内履きが取れない! なんてシチュエーションはどこにも転がってなさそうだ。あって欲しいわけじゃないけど。しかもこの学校は内履きシューズじゃなくてスリッパだ。夏になったらみんな脱ぎ散らかしそうだなあ。
そんな変なことを考えながら、制服と一緒に届いていたスリッパを鞄の中から出して履く。履き慣れていなくて階段登ったら脱げそうだ。