BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.1 )
日時: 2015/09/09 22:18
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

なぜだろう。
いくら考えてみてもわからない。
事実は小説より奇なりという言葉を以前聞いた事があるけれど、これほどまでに奇なのだろうか。
あの瞬間まで、確かに俺は女子が好きで同性を好きになることなど微塵もなかった。
そう、あいつ——清水天(しみずてん)に会うまでは。

日曜が終われば次の日から学校が始まる。
ああ、明日から学校か……また退屈な一週間が幕を開けるのか。
そんな気持ちで入った近所のコーヒーショップ。
別にコーヒーが飲みたいという訳でもなく、ただの暇つぶしだった。
なんとなく空いていた外の景色が見える窓側の席に座り、何も注文しないのは気が引けると頼んでいたコーヒーが来るのを待ちながら、ぼんやりと外を眺めていると、突然背後から誰かに肩を叩かれた。
誰だろうかと思って振り返ると、そこにはひとりの少年が立っていた。
外ハネのさらりとした茶髪に若干大き目の瞳、色白の肌に細い顎が男にしては少し女らしさを感じさせていた。背丈は平均より低く、どちらかというと小柄な部類に入るだろうか。

「隣、座ってもいいですか?」

「……ああ」

「どうも」

少年は短く返事をし、俺の真正面に位置する席に腰かけた。
俺が注文したコーヒーが届く。
接客係が踵を返そうとした時、彼はそれを呼び止め、「これと同じものをひとつ」と呟いた。
接客係が去った後、俺達ふたりは長い沈黙に包まれた。
初対面、それも男同士であるため、無言になるのも俺の経験からして当たり前なのだ。
それに、そう言ったことは今までの経験上何度もあった。
相席になったぐらいで話しかけるなんて、ウザい奴と思われるに決まっている。
だが——いつもならそう結論付け、無言に徹するはずなのだが、今回は違っていた。
話したい、この男と。
そんな気持ちが心の中に芽生えているのを自分自身でも感じ取ることができた。
それはなぜか。
理由は簡単だ。
俺の真正面に座る少年の声が、今までに感じたことのないほど美しい響きを持っていたからだ。高すぎず、低すぎずそれでいてどこか艶のある少年の声——文学的に表現できないのが残念に思われるほど、その一言一言が「もっと声を聞きたい!」という感情を湧き上がらせたのである。
赤の他人、それも初対面で同性の相手に対してそのような感情を抱くのはどうかとは思ったが、それでも相手の声を聞きたいという感情が収まることはなかった。
そして俺はついに、彼に自分から話しかけた。

「あの、どうしてこの席を選んだの? 他の席はたくさんあるのに」