BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.2 )
日時: 2015/09/09 22:20
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

なぜ、いきなりあんなことを言ったのであろうか。
本当ならば、もっと別の話題があったはずだ。
例えば、彼が読んでいるライトノベルと思しき本の話題などだ。
だが、俺は読書を苦手としており、本を読んでいるという印象だけで測るならば、彼は本が嫌いではないはずで、少なくとも俺よりはたくさんの本を読んできているだろう。
そんな相手に対し、自分の得意としない話題で話かけるとその内ボロが出てきてしまい、話が長続きしなくなるだろうと考えたからだ。
それで話題を何にしようかと考えた挙句、彼がどうして俺の席に座ったかと訊ねることにした。
何しろ周りにもたくさん席は空いている。それならば、他の席に座ってもおかしくはない。だが、彼は俺の座っているこの席に腰かけた。
無論、理由などとくにないと答えるに決まっているはずだが、苦手なジャンルの話を続けたり無言になったりするのよりは、はるかにマシな選択だと言える。
コーヒーを一口飲む。
考え込んでいる間にコーヒーは少し冷めておりぬるくなっていたが、そんな些細なことなど今の俺にはどうでもいいことであった。相手の目を見つめ、聞こえるように、けれど大きすぎない声で俺は訊ねた。

「あの、どうしてこの席を選んだの? 他の席はたくさんあるのに」

「景色が見たいからですよ」

「でも、俺からしたら景色よりライトノベルって感じに見えるけど、本当にそれだけが理由なのかな?」

「……」

「もしかして、俺、怒らせること言ったかな……?」

「別に」

彼はぶっきらぼうと思えるほど短い言葉で返し、再び本のページに目を走らせる。
本を読んでいる彼の姿はなんというか、穏やかな文学少年と言った雰囲気をもたらす。だが、先ほどの「別に」の一言で、どうやら彼は俺が思っているほど穏やかな性格ではなく、むしろ冷めた性格なのではないかという印象に変わってしまった。
彼に気づかれないように小さくため息をつく。
聞き惚れるような声であったとしても、所詮は男。
男である彼に変な感情を少しでも抱いた俺がバカだったのだ。
そう自己分析をして、席を立とうとしたその時だった。
中腰になりかけた俺に、彼がこんなことを言った。

「コーヒーの代金、僕が払いますよ」

「えっ……!?」