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BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.25 )
- 日時: 2015/03/24 07:57
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
どうすればいいだろう。
俺は清水に言葉をかけたいと思ったが、何と言っていいのかわからない。それに俺は出ベソではないため、心の底から彼の気持ちを理解することができないのだ。雪に触れたことがない人間が雪の冷たさや感触を分からないように、俺も彼の悲しみを共有することができないのだ。下手に言葉をかけると、かえって逆効果になるのがオチだろう。
かと言って何もしないで棒立ちになっているというのも、己の無力さを痛感するようで耐えられない。今の俺にできることがあるとすれば、たったひとつしかない。
彼の腰に手を回し、優しく抱擁した。
「清水、悔しいけど俺はお前じゃないから、どうして悲しむのか完全には理解できない」
「……」
「だけど、これだけは言える。お前が出ベソであろうとなかろうと、決して嫌ったりしない」
「……そうっすか……」
しゃっくりをあげながらも、彼は小さくそう呟き、そっと俺を抱きしめ返した。声はいつもと違って枯れていたけれど、その言葉の中にいつもの生意気さがあった。よかった。少しでも彼の心を温めることができて。そしてしばらくの間、俺と清水は抱き合って涙を流し続けた。
普段はクールに振る舞って感情を見せることが少ないけれど、彼も人間で、時には誰かに甘えたいときもある。そんなとき、俺が彼の傍にいて優しく抱きしめたら、彼は安心するだろうか。頭ひとつ分ほど違う後輩の頭を引き寄せ、柔らかくサラサラした髪を撫でながらそんなことを考えた。
けれどこのとき、少しずつ進展してしてきている俺と清水の関係に最大の危機が訪れることになるとは、俺はもちろんのこと、清水でさえも予想していなかったに違いない。
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